「ため息」は注意力にどのような影響を与えるのか?

疲れたり退屈したりしている時に出る「ため息」は、呼吸だけでなく注意力も立て直す可能性があると考えられています。アイルランドのトリニティ・カレッジ・ダブリンの研究チームが、ため息の前後で呼吸・瞳孔・注意力がどのように変化するのかを分析した結果を報告しています。
Sighs Shape Respiratory Variability and Pupil Dynamics and Adapt to Sustained Attention Demands - Andrews - 2026 - Psychophysiology - Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/psyp.70245
Scientists reveal what is actually happening to your body when you let out a random sigh
https://www.psypost.org/scientists-reveal-what-is-actually-happening-to-your-body-when-you-let-out-a-random-sigh/

人間の呼吸は速さや深さが常に一定というわけではなく、運動量や感情、覚醒状態などに合わせて自然に変化します。こうした呼吸のばらつきは身体を状況の変化に適応させる一方で、規則性のないばらつきが蓄積すると時折生じる深い呼吸が呼吸パターンを調整すると考えられています。今回の研究でいう「ため息」は落胆した時の呼気に限らず、普段より大きく息を吸う自然に生じる深い呼吸を指します。
トリニティ・カレッジ・ダブリンのラルフ・W・G・アンドリュース氏らは別の研究で得た2つの持続的注意課題のデータを使い、ため息が呼吸だけでなく覚醒状態や注意力もリセットするのかを調べました。
まず1つ目の課題は72人が参加した視覚課題で、画面に表示された円環状の模様を見続け、模様のコントラストが低下したらマウスをクリックするという内容でした。課題は8分間のブロックが8回繰り返され、途中には直前までの注意状態を尋ねる質問が表示されました。
以下は視覚課題の流れを示した図で、図中の「65%」「35%」は模様のコントラストを示しています。模様のコントラストは1.6秒かけて65%から35%へ低下し、途中で表示される質問画面では直前までの注意状態を「課題に集中していた」「無意識に注意がそれていた」「意図的に課題から注意を外していた」の3つから選択します。

2つ目の聴覚課題の分析対象は57人で、21分間にわたって高音と低音の繰り返しを聞き、音が切り替わるタイミングに合わせてマウスをクリックするというものでした。参加者は元の実験で無作為に2つのグループへ割り当てられており、今回の分析対象のうち32人には呼吸方法を指示せず、残りの25人には高音の間に息を吸って低音の間に吐くよう指示しました。高音と低音の周期は一定ではなく、0.15Hzから0.1Hzへ徐々に遅くなった後、0.15Hzへ戻るという形です。
研究チームは両課題において、参加者の胸の下部に取り付けたベルトで呼吸を測定し、吸気の深さが各参加者の平均の2倍以上になった呼吸を「ため息」と判定。同時に瞳孔径もカメラで記録し、ため息の前後で呼吸や課題への反応がどう変わるかを調べるとともに、ため息と通常の呼吸に伴う瞳孔の変化を比較しました。
その結果、視覚課題の参加者と、聴覚課題で呼吸方法を指示されなかったグループでは、課題が進むにつれてため息の頻度が高くなり、呼吸の速さと深さの全体的なばらつきも大きくなりました。また、ため息の直後には呼吸の速さと深さのばらつきが小さくなり、呼吸の深さの変化はより規則的になったとのことです。一方、呼吸の速さの規則性は視覚課題のグループでは低下し、聴覚課題のグループでは有意な変化がなかったため、研究チームは「ため息が状況に応じて呼吸パターンを調整している」と考えています。

さらに、聴覚課題で呼吸方法を指示されなかったグループのため息は1分当たり平均0.45回だったのに対し、呼吸を音のリズムに合わせるよう指示されたグループでは平均0.17回でした。呼吸を音のリズムに合わせるよう指示されたグループでは、ため息の前後で呼吸のばらつきに有意な変化がみられなかったとのことです。
ため息に伴う変化は瞳孔の大きさにもみられました。視覚課題の参加者はため息の間に瞳孔が次第に拡大し、聴覚課題で呼吸方法を指示されなかったグループでは、吸気の開始後に瞳孔が大きく拡大してから縮小しました。瞳孔径は覚醒水準に関わるノルアドレナリン系の活動の間接的な指標として使われるため、研究チームはため息が生理的な覚醒の変化にも関わっている可能性があるとみています。ただし、ため息と通常の呼吸に伴う瞳孔変化の差は統計補正後に有意でなくなっていたため、研究チームは瞳孔に関する結果を「探索的な証拠」と位置づけています。
また、ため息の前後における課題への反応時間やそのばらつきに有意差はなかったとのこと。視覚課題で尋ねた「課題に集中していたか、課題と関係のないことを考えていたか」という回答もため息の前後で変化しませんでした。今回の条件ではため息に伴う身体的な変化はみられたものの、客観的な課題成績や主観的な集中度の改善は確認されませんでした。
今回の実験で使用した課題は単調で難易度が低く参加者の成績も安定していたため、「ため息による注意力の変化が小さすぎて検出できなかった可能性がある」と研究チームは述べています。また、呼吸の深さだけでため息を判定したため、あくびをため息と判定した可能性もあるとのこと。研究チームは、より難しい課題や覚醒水準が高い状況では異なる結果が得られる可能性があると指摘し、ため息が注意力に及ぼす影響を今後さらに調べる必要があるとしています。
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in サイエンス, Posted by log1b_ok
You can read the machine translated English article How does sighing affect attention?….







