NASAの「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」の打ち上げ日が2021年12月18日に決定
by NASA's James Webb Space Telescope
NASAが中心となって開発を行う赤外線観測用宇宙望遠鏡のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が、2021年12月18日(土)に打ち上げられることが発表されました。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡はハッブル宇宙望遠鏡の後継機であり、宇宙の謎を解き明かす手がかりを観測することが期待されています。
NASA Readies James Webb Space Telescope for December Launch | NASA
https://www.nasa.gov/press-release/nasa-readies-james-webb-space-telescope-for-december-launch
ESA - Targeted launch date for Webb: 18 December 2021
https://www.esa.int/Science_Exploration/Space_Science/Webb/Targeted_launch_date_for_Webb_18_December_2021
The James Webb telescope has a bona fide launch date | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2021/09/the-james-webb-telescope-has-a-bona-fide-launch-date/
地上に設置した天体望遠鏡で宇宙を観測しようとする場合、昼間は太陽の光によって観測することができず、夜でも地球の大気や人工的な光などによって観測精度が落ちてしまいます。そのため、望遠鏡自体を宇宙に打ち上げる宇宙望遠鏡は天文観測にとって重要な設備となっています。
宇宙望遠鏡の打ち上げには多額のコストや技術的な困難があるため、そう簡単に打ち上げることはできません。1990年に打ち上げられたハッブル宇宙望遠鏡は何度も故障と復活を繰り返しており、その後継機とされているジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の打ち上げが望まれていました。しかし、無数の技術的課題によってジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の開発は遅れ、開発コストは当初の想定から数倍以上に膨れ上がり、2020年の時点で88億ドル(約9700億円)に達しているとのこと。
以下の記事を見ると、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の開発風景や各セグメント、宇宙空間での展開予想図などを確認できます。
ハッブルの後継となる巨大宇宙望遠鏡「Webb」の開発風景が高画質写真&ムービーで公開される - GIGAZINE
by NASA's James Webb Space Telescope
何度も打ち上げ延期が繰り返されてきたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡ですが、2021年8月にNASAは地上でのテストを完了し、発射地点に輸送する準備を整えました。そして9月8日、ついにNASAや欧州宇宙機関(ESA)が「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を2021年12月18日に打ち上げる」と発表しました。
打ち上げが行われるのはフランス領ギアナにあるギアナ宇宙センターであり、使い捨てロケットのアリアン5を使用します。ESAは宇宙望遠鏡の打ち上げを行うのと引き換えに、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を使用した観測時間の一部を利用できるとのこと。記事作成時点では、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡はカリフォルニア州レドンドビーチにあるノースロップ・グラマンの施設にありますが、9月末までにギアナへ輸送される予定です。
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は展開すると縦21.2m、横14.2m、高さ8mほどの大きさですが、アリアン5の中に格納される時は高さ10.66m、幅4.5mほどの大きさに折り畳んだ状態となります。
打ち上げられたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、地球を周回するハッブル宇宙望遠鏡とは違い、地球から見て太陽の反対側150万kmにあるラグランジュ点(L2)に設置されます。この位置は、地球と太陽が望遠鏡の視界内に占める相対的な位置が一定となるため、頻繁に調整しなくても遮光板で不要な光を遮ることができるとのこと。
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は最先端のカメラや分光器を搭載し、ハッブル宇宙望遠鏡よりも長い波長の赤外線を使い、100倍の感度で宇宙を観測することが可能です。そのため、太陽系外惑星の大気組成や、ビッグバンから間もない時期に誕生した初期の銀河を観測することが期待されています。
ESAの宇宙輸送ディレクターであるダニエル・ノイエンシュバンダー氏は、「ウェッブ(ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡)がこのミッションに特別に適合したアリアン5ロケットで打ち上げられることを、ESAは誇りに思っています」「私たちは全てのパートナーと共に、この一世一代のミッションの成功に全力で取り組んでいます」とコメントしています。
また、NASAでジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡プログラムのディレクターを務めるグレゴリー・L・ロビンソン氏は、「ウェッブは忍耐力の天恵を示す模範となるミッションです。私は、この信じられないほどの努力を可能にした献身的なチームと世界的なパートナーシップに感動しています」「宇宙望遠鏡とロケットの打ち上げ準備が整った今、私は偉大なる1日とこれから始まる素晴らしい科学研究を楽しみにしています」と述べました。
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