なぜ300億円以上の天体望遠鏡を宇宙に置くのか
私たちが夜空を見上げて星を観察する時に「地面」に置いてレンズをのぞく機器は天体望遠鏡ですが、一方で「宇宙」に置く天体望遠鏡が「宇宙望遠鏡」です。2019年にNASAは地球から150万km以上離れた宇宙のラグランジュ点に、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を設置するためにロケットを宇宙に打ち上げる予定です。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は退役予定のハッブル宇宙望遠鏡の後継機として設計されました。退役するハッブル宇宙望遠鏡の開発予定コストは当初3億ドル(約338億円)で、任務を引き継ぐジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡も「高価な運用費用」を予定しています。なぜ高い費用をかけてまで天体望遠鏡をロケットで宇宙に打ち上げるのか、なぜ地上に設置しないのかを解説している動画が公開されています。
Why Do We Put Telescopes in Space? - YouTube
以下の画像は宇宙に設置した天体望遠鏡、ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた銀河や星々です。
この宝石のように輝いている星々も……
この渦を描いている銀河も、すべて宇宙からハッブル宇宙望遠鏡が捉えたもので、これら撮影された写真は天文学の分野に大きな変化をもたらすほど革新的なものでした
例えば、私たちが同じように地上から天体望遠鏡を使って星を見ようとすると、レンズに映った星はぼやけてしまいます。
こんな風にぼやけてしまう一番の原因は、私たちが何気なく共にしている空気、つまり大気が原因です。
地上から宇宙を観測しようとすると、大気に含まれる雲や煙、霧などが光をブロックしてしまいます。
たとえ、空がきれいに晴れ渡っていたとしても……
空気そのものがほとんどの光の波長をブロックしてしまうため、地上から観測できるのは私たちの目で見える光(可視光)や赤外線の一部、そして電磁波などです。
また、昼間は大気に含まれる空気の分子が可視光を乱反射し、星からの光をかき消してしまいます。
さらに、夜であっても月の光や人間が出した光が空気の分子で反射され、遠く離れた星や非常に暗い星、銀河などからの光をぼんやりとさせてしまいます。
他にも、大気自体がモザイクのようになって邪魔をします。
大気は気流や熱の影響で常に動いており、星から出る光を曲げてしまいます。
つまり、太陽が昇っている時には日光や雲……
夜は月の光と人工の光と、地上の天体望遠鏡は常に障害物にさらされるので、大気がない宇宙に天体望遠鏡を設置するというわけです。
宇宙に天体望遠鏡を置くことには別のメリットもあります。その一つが、24時間いつでも観測を行うことが可能という点。
また、地球から距離を置くことで、地球が熱として発する赤外線による影響を避け、望遠鏡本体の温度を低く下げることができます。
そうすることで、赤外線光を使った観測の精度を上げることが可能になるというわけです。例えば、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は地球から150万km以上離れた場所に設置される予定です。
一方で、宇宙望遠鏡には宇宙に設置することで生まれる問題があります。それはロケットで宇宙まで打ち上げるのでロケットに入るサイズに限られ、また運用費用が高価になってしまう事です。
2019年の打ち上げが予定されているジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、データセンターなども含めた10年間の運営費が88億3500万ドル(約1兆円18億円)になると試算されています。
By NASA's James Webb Space Telescope
ロケットに乗せなければならないのでメンテナンスにも、人員の輸送にも高価な費用がかかります。
過去に何度か行われたハッブル宇宙望遠鏡への修理・改修の場合は、米国議会の議題になるぐらいの多額の費用をかけてスペースシャトルが行いました。
By loomingy1
しかし、宇宙に天体望遠鏡を置くと、このように銀河や星々から出る多くの光を不可視光も含めてクリアに観察ができるのです。
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