サイエンス

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影した深宇宙の絶景写真が大量公開、ついに初期イベント5天体の写真が出揃う


NASAが超高性能宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」で撮影した深宇宙の4つの天体写真を公開しました。撮影された天体は「イータカリーナ星雲」「南のリング星雲」「ステファンの五つ子銀河」「WASP-96 b」で、一足先に公開されていた「SMACS 0723」の写真と合わせてジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の初期撮影イベントの写真がすべて出そろいました。

First Images from the James Webb Space Telescope | NASA
https://www.nasa.gov/webbfirstimages

NASA Reveals Webb Telescope’s First Images of Unseen Universe | NASA
https://www.nasa.gov/press-release/nasa-reveals-webb-telescope-s-first-images-of-unseen-universe

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡はハッブル宇宙望遠鏡の後継機として1兆円規模の費用を投じて開発された宇宙望遠鏡です。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の打ち上げは2021年12月に実施され、その後は隕石の衝突といったアクシデントを乗り越えながら各種機器のナノメートル単位での調整作業が進められて、2022年7月11日にはメインセンサー「Near Infrared Camera (NIRCam)」や「Mid-Infrared Instrument (MIRI)」を用いて撮影した銀河団「SMACS 0723」の写真が公開されました。

ついにジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影した最初のカラー写真が公開、何千もの銀河が写り込む驚異の性能 - GIGAZINE


そして、2022年7月13日には「SMACS 0723」以外の初期撮影イベントのターゲット「イータカリーナ星雲」「南のリング星雲」「ステファンの五つ子銀河」「WASP-96 b」のカラー写真も公開されました。なお、以下の4枚の写真をクリックすると、NASAが公開している高解像度版を閲覧できます。

◆イータカリーナ星雲
以下が、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡によって撮影された「イータカリーナ星雲」の写真です。撮影された場所は「イータカリーナ星雲」の星形成領域「NGC 3324」で、写真下部に写っている茶色いモヤモヤは星雲から流れ出ている高温のチリやガスとのこと。「NGC 3324」には形成過程にある星々が大量に存在していますが、これまでの観測手段では急速に変化する形成中の星を観測することは困難でした。しかし、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は極めて高い感度・分解能・イメージング性能を備えているため、形成過程にある星が茶色いモヤモヤの中に「赤い点」として写っています。NASAは「これまで、天文学者は形成過程にある若い星のデータを得ることが困難でした。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を用いることで、形成過程にある星に関する完全なデータを得られるようになります」と述べています。


◆南のリング星雲
以下は、地球から約2500光年離れた「南のリング星雲」の写真で、左側がNIRCamによって撮影された写真、右側がMIRIで撮影された写真です。NIRCamとMIRIは異なる波長の光を可視化できるため、両者が撮影する写真には見た目の違いが生じます。「南のリング星雲」を撮影した写真の中央部分に着目すると、NIRCamで撮影した写真(左)には明るい星が1つ写っていますが、MIRIで撮影した写真(右)では色の異なる2つの星が写っています。NASAによると、2つの星のうち暗い方の星は終末期に達しており、周囲にガスやチリを放出しているとのこと。また、明るい方の星も将来的にガスやチリを放出し始めると考えられています。なお、写真の周辺部分に写っている赤や白の点々は星ではなく銀河とのことです。


◆ステファンの五つ子銀河
「ステファンの五つ子銀河」は銀河同士が非常に近接していることで知られており、特に上段の「NGC 7319」と中段右側「NGC 7318A」「NGC 7318B」と下段の「NGC 7317」は物理的に結び付いていることが知られています。写真をみると中段左側の銀河「NGC 7320」もかなり密接した位置にあるように見えますが、「NGC 7320」は地球から見て手前側に位置しており、その他の銀河とは距離が離れています。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡によって撮影された「ステファンの五つ子銀河」の写真は約1000個の画像ファイルによって構成されており、総ピクセル数は1億5000万ピクセルを超えるとのことです。


◆WASP-96 b
「WASP-96 b」は地球から1500光年離れた位置に存在する天体で、公転周期の短さや付近の光源の少なさから「大気の状態を観測するのに最適なターゲット」とされています。NASAはジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡に搭載された分光観測センサー「Near-Infrared Imager and Slitless Spectrograph(NIRISS)」を用いて「WASP-96 b」の大気を観測し、大気中に存在する水の詳細データを得ることに成功しました。NIRISSはこれまでに用いられてきた分光観測機器より広い範囲の波長を観測可能で、非常にわずかな明るさの違いを検出できるとのこと。このため、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による「WASP-96 b」の観測データは既存観測データよりも詳細に大気の特徴を捉えています。


ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡プロゲクトのシニアプロジェクトサイエンティストであるジョン・マザー氏は「(ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の)設備は完璧に動作し、自然は驚くほどの美しさに満ちあふれていました。この観測を可能にした世界中のチームに感謝します」と述べています。

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in サイエンス, Posted by log1o_hf

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