サイエンス

国際宇宙ステーションの空気漏れで宇宙飛行士5人が一時退避、老朽化が進む中でいつまで使い続けられるのか?


老朽化が進む国際宇宙ステーション(ISS)では、空気漏れへの対応をめぐって宇宙飛行士5人が一時退避する事態が発生しました。イギリスのノーサンブリア大学で宇宙法と政策を専門とするクリストファー・ニューマン氏は、この空気漏れをきっかけに「ISSをいつまで使い続けるのか」「後継施設を誰が担うのか」という問題を論じています。

Cracks in the International Space Station are causing air leaks – how much longer can it remain habitable?
https://theconversation.com/cracks-in-the-international-space-station-are-causing-air-leaks-how-much-longer-can-it-remain-habitable-286060

空気漏れが起きているのは、ISSの古い区画であるロシア側のズヴェズダ・サービス・モジュールにある「PrK」と呼ばれる移送トンネルです。PrKは宇宙船のドッキングポートへつながる小さな通路で、構造部分に生じた細かな亀裂から空気が漏れているとのこと。恒久的な修理方法はなく、これまではシーラント(補修剤)で亀裂をふさいで対処してきました。


PrKの空気漏れは2019年9月から確認されています。

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ロシアの宇宙機関であるロスコスモスはPrKの空気漏れについて「ゆっくりとした漏れであり危険はない」と考えている一方で、NASAは「安全上のリスクが高まっている問題」だと見ており、2024年にはISS諮問委員会のボブ・カバナ氏が「NASAはPrKの構造的完全性と壊滅的な故障の可能性について懸念を表明しています」と述べました。

2026年6月初旬には新たな亀裂が現れ、空気の漏れ率が上昇しました。テクノロジー系メディアのArs Technicaによると、ロスコスモスは最初に「ドリルを使って船体を修理する」という案を出しましたが、NASAが難色を示したため、次に「ロシアの宇宙飛行士がのこぎりを使い、PrK移送トンネル内で荷重を支えるブラケットを取り除く」という案を提示したとのことです。

ロスコスモスからの2つ目の修理案を受け、NASAは作業中の事故に備えるため、ISSに滞在していた5人の宇宙飛行士に対してSpaceXの有人宇宙船「Crew Dragon」へ退避してISSから離脱する準備をするよう命じました。しかしその後ロスコスモスがこの修理案も取り下げたため、NASAは約1時間半後に退避命令を解除し、乗組員は通常の作業に戻っています。ニューマン氏によると、ロスコスモスはこの出来事の後「PrK移送トンネルをISSの他の区画から切り離す」とNASAに伝えたとのことです。

そもそも、ISSは永遠に使う前提で作られた施設ではなく、低軌道の有人拠点を民間企業の宇宙ステーションへ引き継ぎ、NASAはそこへ宇宙飛行士を送る予定でした。

その民間宇宙ステーション候補の一つがVastの「Haven-1」です。Haven-1の居住空間はISSの約8分の1で最長1カ月程度の短期滞在向けに作られており、空気や電力の供給をドッキング中のSpaceXのカプセルに大きく依存します。ニューマン氏は「Haven-1はISSと同等の代替施設ではなく試験台」だと説明しています。


ニューマン氏によると、ISSを完全に置き換える可能性がある宇宙ステーションはさらに先の段階にあるとのこと。Vastのモジュール式宇宙ステーション「Haven-2」は、2028年に最初のモジュールを打ち上げ、ISSが退役する予定の2032年に完成することを目標としています。Axiom SpaceStarlab Spaceも大型の軌道上拠点を計画していますが、いずれも開発中で、Axiomは資金面の問題にも直面しているとのこと。

こうした開発の遅れを受けてアメリカの議員らはISSの寿命を延ばす方向へ動いており、NASAは当初ISSを2030年まで運用する予定でしたが、ニューマン氏の記事公開時点では退役を2032年まで遅らせる法案が承認待ちになっています。

ISSは退役後そのまま宇宙に残すのではなく、制御しながら大気圏に再突入させて廃棄する計画であるため、NASAはISSの軌道を下げる専用の宇宙船をSpaceXに発注しています。改造されたSpaceX Dragonで重さ420トンのISSを大気圏へ向けて誘導する計画で、その費用は約8億4000万ドル(約1200億円)に上るとのこと。


ISSを落下させる場所として想定されているのは、太平洋上で陸地から最も遠い地点とされる「ポイント・ネモ」周辺です。人が住む地域から遠い場所を狙うことで、破片が人口密集地に落下するリスクを下げる狙いがあります。ただし、ISSは重さ420トンの巨大な構造物であり、大気圏で完全に燃え尽きるとは限りません。ニューマン氏によると、小型のファミリーカーほどの大きさの破片が地表に到達する可能性もあるとのことです。

ニューマン氏は「ISSの空気漏れは、宇宙ステーションを長く使うには打ち上げ後の点検や修理が欠かせないことを示している」と指摘。ISSの寿命を延ばせば当面の時間は稼げますが、退役時に破片が被害を出した場合の責任や、後継施設を誰が作り誰が保守費用まで負担するのかという課題は残ります。

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in サイエンス,   乗り物, Posted by log1b_ok

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