サイエンス

新型コロナ患者の血液サンプルから患者の死亡リスクを予測できるという研究


新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染者は、無症状から死亡にいたる人まで、さまざまな免疫応答を示します。フレッドハッチンソンがん研究センターのジフーン・リー氏らは免疫応答時の代謝物質を分析することで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)発症後の重症化率や死亡リスクを予測できる可能性があることを示しました。

Integrated analysis of plasma and single immune cells uncovers metabolic changes in individuals with COVID-19 | Nature Biotechnology
https://www.nature.com/articles/s41587-021-01020-4


Metabolic changes in plasma and immune cells associated with COVID-19 severity, can predict patient survival -- ScienceDaily
https://www.sciencedaily.com/releases/2021/09/210906111320.htm

既存の研究では、人によって異なる免疫応答が新型コロナウイルス感染者の病状の経過に大きく影響することが示されています。しかし、これまでの研究では代謝物質の測定値とCOVID-19の症状間での関連付けは行われたものの、免疫において重要な役割を果たすと考えられている免疫応答時の代謝変動についての視点が欠けていたとのこと。そこで、リー氏らは新型コロナウイルス感染者の血液中の代謝物質と重症度の関連付けを行うことを試みました。


リー氏らは、COVID-19を発症した直後、あるいは発症後数日が経過した198人の患者から合計374個の血液サンプルを収集し、遺伝子の発現量を解析するRNAシーケンスと呼ばれる手法で個々の血液サンプルを分析しました。そして、サンプルから得られた血漿(けっしょう)代謝物と患者の疾患の進行度を関連付けた結果、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質に由来すると考えられるマンノースの量が重症度と強く相関しており、マンノースの増加がウイルス量の上昇あるいは免疫系を構成するタンパク質の発生経路の活性化を示している可能性があることが分かりました。

また、この他にもグルコースやキヌレニンなどの代謝物も重症度の変化と相関することが判明。さらに、重症度と代謝物の量に負の相関があることや、主要な免疫細胞ごとに異なる代謝物が発生することから、血漿代謝物を分析することで患者の重症度を区別できることなども明らかになりました。リー氏は上記の発見から、「免疫応答時の代謝変動から重症度や死亡リスクを予測できる」と結論づけています。


共同研究者のジム・ヒース氏は「この研究はCOVID-19に対するより効果的な治療法を開発するための重要な洞察を示しました。この研究で示されたデータが多くの患者に役立つことを望んでいます」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1p_kr

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