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「古いiPhoneで国や地域の設定を『フランス』にすると動作が速くなる」というウワサは本当なのか?


「古いiPhoneの国や地域の設定を『フランス』に変えたところ、iPhoneの動作が速くなった」とインターネットユーザーが発信して話題を呼んでいます。「自分のiPhoneでも動作が高速になった」「iPadでも効果があった」といった反応が寄せられる中、中国のテクノロジー系メディア・快科技がそのウワサが本当かどうかを検証しました。

iPhone只要改个地区就会变快!这是什么操作-苹果,iPhone手机 ——快科技(驱动之家旗下媒体)--科技改变未来
https://news.mydrivers.com/1/778/778351.htm

Old iPhones become faster if you change the region to France -
https://www.gizchina.com/2021/08/23/old-iphones-become-faster-if-you-change-the-region-to-france/

Don't set your old & slow iPhone region to France — do this instead | AppleInsider
https://appleinsider.com/articles/21/08/25/dont-set-your-old-iphones-region-to-france----do-this-instead

快科技の編集者である世超氏は2021年8月23日、SNS上で「iPhoneのリージョンをフランスにするとiPhoneの動作が速くなった」という投稿を見かけました。この投稿についてインターネットでは、「かつてAppleが古いiPhoneの性能を意図的に落としていた問題が関係しているのではないか」と指摘されているとのこと。


2017年、「Appleが古いiPhoneの性能を意図的に落としている」ことを示す証拠が明らかとなりました。この指摘についてAppleが、「バッテリーの劣化したiPhoneで予期せぬシャットダウンが起きるのを防ぐため、iPhoneのピーク性能を落していた」と事実を認めるとすぐさま集団訴訟に発展しました。

古いiPhoneの性能を意図的に落としたと認めたAppleが早くも集団訴訟に直面 - GIGAZINE


その後、Appleはバッテリー交換費用の値引きやそれ以前にバッテリーを交換した一部ユーザーへの返金といった対応に追われ、集団訴訟は最終的に「該当するiPhone 6シリーズもしくはiPhone 7シリーズを所有していたユーザーに対し、1人当たり25ドル(約2700円)の和解金を支払う」ことで決着しました。

また、フランスの競争・消費・詐欺防止総局は、Appleが消費者に事実を公表していなかった点が「誤解を招く商業慣行である」という調査結果をパリ検察庁に提出。これを受けてフランスはAppleに総額2500万ユーロ(約30億円)の罰金支払いを命じており、Appleも罰金の支払いに応じています。

Appleが30億円の罰金を「iPhoneのピーク性能を落としていた件」でフランスに支払う羽目に - GIGAZINE


インターネット上では、「一連の出来事からAppleはフランスでバッテリー劣化に伴う意図的な性能の低下が実行できないため、中国などで使用された古いiPhoneのリージョンをフランスに変更すると、動作が速くなるのではないか」と推測されています。そこで世超氏は複数のiPhoneを使い、本当にリージョン変更で動作が速くなるのかどうかを検証しました。

まず、「iPhone 12」のリージョンを中国に設定した状態で、ベンチマークアプリであるAnTuTu Benchmarkでテストした結果がこれ。


リージョンをフランスに変更した後にテストしても、スコアの変動は誤差として無視できる程度でした。


iPhone 12でリージョン変更による動作の高速化が確認できなかったのは、バッテリー状態が100%であったため、バッテリー劣化に伴う性能の低下が起きていなかった可能性があります。次に世超氏は、バッテリー状態が81%まで劣化したiPhone 7を使って、再びリージョン変更前後でベンチマークを測定しました。


リージョンが中国の状態では、「286632」というスコアになりました。


リージョンをフランスに変更した後に測定すると、スコアは「298321」。確かにリージョン変更前後で違いは出ているものの、「高速化した」とはっきり言えるほどの改善ではありません。実際に世超氏がアプリケーションの起動速度などを調べてみても、リージョン変更で明らかな改善は体感できなかったとのこと。


実際にはそれほど変化がないのにもかかわらず、多くのインターネットユーザーが「リージョンをフランスに変えると動作が速くなった」と報告する理由について、世超氏は「リージョン変更に伴って多くのバックグラウンドプロセスが終了したため、動作が速くなったように感じたのではないか」と推測しています。この場合、リージョンをフランスに変えて速度の改善を感じたとしても、使用を続けていくうちに実行中のバックグラウンドプロセスが増えれば、また元の状態に戻ってしまいます。

テクノロジー系メディアのAppleInsiderは、「iPhoneのリージョンをフランスに変えると動作が速くなる」という主張はナンセンスだと指摘し、フランスだけでAppleがiOSに変更を加えることは考えにくいとしています。また、リージョンを変更するとデフォルトの言語や天気予報に加え、App StoreやNetflixアカウントなどにも影響が出るとのこと。映画・本・音楽といったメディアの権利関係は国ごとに違うため、リージョンを変えるとこれまで楽しめていたメディアが利用できなくなったり、サブスクリプションプランの再契約が必要になったりする場合があるそうです。

どうしてもバッテリーの劣化に伴うピーク性能の低下を防ぎたいユーザーに対し、AppleInsiderは設定画面の「バッテリー」から「ピークパフォーマンス性能」を開いて、パフォーマンス管理機能を無効にすることを推奨しています。具体的な変更方法は、以下の記事を読むとわかります。

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また、バッテリーの劣化に伴うピーク性能の低下は不意のシャットダウンを防ぐための機能であるため、単純に劣化したiPhoneのバッテリーを交換することでも回避可能です。

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in モバイル,   ソフトウェア, Posted by log1h_ik

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