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終息しない新型コロナウイルスのパンデミックに対し社会はどう変わっていくのか?


新型コロナウイルスワクチン接種の遅れや変異株の出現などにより、アメリカでは「ワクチン接種による集団免疫の達成は厳しい」という見方が強まっており、公衆衛生対策の方針の見直しが進んでいます。アメリカの月刊誌・The Atlanticが、根絶が非現実的なものとなりつつある新型コロナウイルスと、どのように共存していくことになるのかを論じました。

How We Live With the Coronavirus Forever - The Atlantic
https://www.theatlantic.com/science/archive/2021/08/how-we-live-coronavirus-forever/619783/

1980年、イギリスの病院に務める医師らが15人のボランティアにコロナウイルスを感染させる小規模な研究を行いました。実験には、風邪の原因ウイルスの1つとして知られるヒトコロナウイルス229Eが用いられました。


鼻にヒトコロナウイルス229Eを接種されたボランティア15人のうち、感染したのは10人だけで、そのうち風邪の症状を呈したのは8人でした。そして、翌年1人を除く14人に対して同じ実験を行ったところ、風邪の症状が出た人はいなかったものの、6人が再感染しました。このことから、実験を行った医師らは「コロナウイルスへの免疫はすぐに低下するもので、再感染も珍しくない」と結論づけました。

コロナウイルスが脅威とみなされていなかった当時、この実験はほとんど耳目を集めませんでしたが、2020年初頭から、5番目のヒトコロナウイルスである新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が世界的なパンデミックを引き起こしています。専門家によると、最も楽観的なシナリオでは、新型コロナウイルスも将来的にはヒトコロナウイルス229Eのように、「繰り返し風邪のような症状を起こすが取り立てて特徴のない感染症ウイルスになる」と見られているとのこと。つまり、撲滅はできないものの生活を脅かすような存在ではなくなるということです。


St. Jude Children's Research Hospitalの感染症研究者であるリチャード・ウェビー氏は、The Atlanticの取材に対し「新型コロナウイルスは、私たちが付き合っていかなければならないものです。医療全体に影響が及ばない限り、共存は可能でしょう」と話しました。

とはいえ、新型コロナウイルスがどのような経緯をたどって身近なものになるのかは、まだはっきりしていません。というのも、今後新型コロナウイルスのパンデミックがどのように落ち着くかは、人々の行動に大きな影響を受けるからです。そのため、The Atlanticは「新型コロナウイルスが身近なものになるからといって、予防措置をやめるべきではありません。今のうち流行曲線を平坦化しておけば医療機関の負担も減り、ワクチン未接種の人にワクチンを接種する時間を稼げます」と指摘しました。


パンデミックの行方は、ウイルスがどのように変異するかにも影響を受けます。多くの人が感染を経験したり、ワクチンを接種したりして免疫を獲得すると、インフルエンザウイルスと同様に新型コロナウイルスも免疫を回避するよう変異していきます。一方、新型コロナウイルスに対する抗体は時間とともに減少しますが、B細胞やT細胞といった人体の免疫システムはウイルスを記憶し続けており、重症化や死亡に対する予防効果は長期にわたって持続します。そのため、「多くの人がある程度の免疫を獲得し、新型コロナウイルスの脅威度が低くなれば、人々は新型コロナウイルスを当たり前の物だと考えるようになる」と指摘する専門家もいます。

こうした点から、The Atlanticは「インフルエンザの場合は、社会的な許容度が固まっています。新型コロナウイルスに対する許容度はまだ決まっていませんが、デルタ変異株の広がりを見る限り、感染リスクが小さくなることはあってもゼロになることはないでしょう。従って、新型コロナウイルスのパンデミックは今後、新型コロナウイルスと共存するための新しい許容度を模索する流れになると考えられます。しばらくは違和感をおぼえるかもしれませんが、そのうちこれが普通になっていくのではないでしょうか」と結論づけました。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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