新型コロナワクチンの接種により獲得した免疫は数年にわたり持続する可能性があるという研究
猛威を振るう新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンが開発され、世界中でその接種が行われています。しかし、ワクチンを接種しても新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)への免疫がどれほど続くのかということははっきりとは分かっていません。今回アメリカ国立衛生研究所の協力の下行われた研究で、「mRNAワクチンを接種した場合、免疫応答は数年以上続く可能性がある」という可能性が示されました。
SARS-CoV-2 mRNA vaccines induce persistent human germinal centre responses | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-021-03738-2
mRNA Vaccines May Pack More Persistent Punch Against COVID-19 Than Thought – NIH Director's Blog
https://directorsblog.nih.gov/2021/07/13/mrna-vaccines-could-pack-more-persistent-punch-against-covid-19-than-thought/
モデルナやファイザーなどのCOVID-19ワクチンには、ウイルスのタンパク質を作る元になる遺伝情報の一部を注射することで、そのタンパク質に対する抗体を作り、ウイルスに対する免疫を獲得させるmRNAワクチンが使われています。ファイザーとモデルナの両ワクチンについては、2回目の投与から6カ月が経過しても有効だとする研究結果が示されていました。
抗体のみに着目して行われた以前の研究では、「抗体は数週間から数カ月で失われてしまう可能性があるため、免疫は長続きしない可能性がある」との結果が示されていましたが、2021年5月、ラホヤ免疫学研究所のジェニファー・ダン氏らが、抗体の迅速な産生に関わる免疫細胞である「メモリーB細胞」に着目した研究を発表。この研究では実際にSARS-CoV-2に感染した人々に対し血液検査を実施した結果、感染者はSARS-CoV-2への感染から8カ月経過した時点でも免疫に関わる細胞を保持し続けていたことが明らかになり、「抗体を作る免疫細胞が長期間保持されるため、免疫を長期間保つことができる可能性がある」という結果が示されました。
新型コロナウイルスに対する免疫は8カ月以上持続することを示す研究報告が続々と発表される - GIGAZINE
ワシントン大学のジャクソン・ターナー氏らはダン氏らの研究を受け、SARS-CoV-2の感染者ではなくCOVID-19ワクチンの接種者を対象に研究を実施。ファイザーのワクチンを2回接種した実験参加者らのリンパ節の主要な免疫細胞を観察しました。ワクチンの初回接種から3、4、5、7、15週間後にリンパ節の生検を行った結果、リンパ節でメモリーB細胞などの産生につながる活発な反応が15週間後まで継続して行われ、鈍化する兆候も見られなかったとのこと。ターナー氏らは「ワクチンの接種による免疫応答は非常に頑強かつ持続的で、この反応は何年も続く可能性がある」と述べました。
NIHのフランシス・コリンズ氏は「ターナー氏らの研究は『リンパ節でどんな反応が起きているのか』『B細胞に指令を出すT細胞はどのような働きをするのか』など、新たな問題を提起するものだが、ワクチンの効果が長続きするという希望に満ちた研究の1つだ」と述べました。
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