肥満の原因となる遺伝子が作物の成長を促進するという研究結果、米の収穫量は3倍に
近年、新型コロナウイルスの感染拡大や気候変動などの影響で食糧不足に苦しむ国や地域が急増しており、食糧不足への対策として作物の品種改良や微生物の活用といった研究開発が行われています。そんな中、中国の研究チームが人間の肥満の原因となる遺伝子を作物に組み込むことで、作物の成長を促進することに成功しました。
RNA demethylation increases the yield and biomass of rice and potato plants in field trials | Nature Biotechnology
https://www.nature.com/articles/s41587-021-00982-9
Researchers Transfer a Human Protein Into Plants to Supersize Them | Innovation | Smithsonian Magazine
https://www.smithsonianmag.com/innovation/researchers-transfer-human-protein-plants-supersize-them-180978443/
今回研究チームが用いた遺伝子はFTO遺伝子と呼ばれるもので、FTO遺伝子を有する動物はエネルギーの消費効率や食欲を抑える能力が低くなると考えられています。研究チームの一員であるChuan He氏によると、植物はFTO遺伝子を持っていないため、作物にFTO遺伝子を組み込み影響を観察することにしたとのこと。He氏は、「それは大胆で奇妙な考えです」「正直なところ、私たちはFTO遺伝子が作物に壊滅的な影響及ぼすと期待していました」と述べています。
実験の結果、FTO遺伝子を組み込んだ作物は、通常の作物と比べて成長が促進されることが明らかになりました。以下の写真は左側が通常のイネから収穫した米、右側がFTO遺伝子を組み込んだイネから収穫した米です。研究チームは、FTO遺伝子を組み込んだイネからは通常のイネと比べて3倍多くのコメが収穫できたと述べています。
そして、以下は左側が通常のジャガイモで、右側がFTO遺伝子を組み込んだジャガイモです。ジャガイモでもイネと同じくFTO遺伝子を組み込んだほうがより多くの食糧を生産できることが分かります。
遺伝子組み換え技術を用いて食糧の生産量を増やす取り組みはこれまでも行われてきましたが、「遺伝子組み換えでは、食糧の生産量を10%以上増やすことはできない」とする研究結果も発表されていました。しかし、研究チームは「FTO遺伝子を組み込んだ作物は通常の作物よりもも50%大きく成長しました」「FTO遺伝子は特別な遺伝子です。他の遺伝子では、おそらくうまくいかないでしょう」と述べ、FTO遺伝子が食糧不足の解決に寄与する可能性をアピールしています。
研究チームによると、今回の研究は初期段階にすぎないとのことで、今後FTO遺伝子が作物の生長を促進するメカニズムを解明するべく研究を続けていくと語っています。
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