たった5万円の軽量＆高性能な義手が開発される、ポテチを割らずに食べることも可能

近年、義手に関する研究開発によって、痛みを感じられる義手や少ないトレーニングで本物の手のように動かせる義手などの高性能な義手が登場しています。そんな中、マサチューセッツ工科大学(MIT)と上海交通大学の合同研究チームが高い性能と低コストを両立した義手を開発しました。

A soft neuroprosthetic hand providing simultaneous myoelectric control and tactile feedback | Nature Biomedical Engineering
https://www.nature.com/articles/s41551-021-00767-0

Inflatable robotic hand gives amputees real-time tactile control | MIT News | Massachusetts Institute of Technology
https://news.mit.edu/2021/inflatable-robotic-hand-tactile-0816

本物の手のように動かせる義手はすでに登場していますが、これらの義手には「費用が数万ドル(数百万円)かかる」「金属製の外装や電気モーターが使われているため、重たい」といった問題が存在しています。そこで研究チームは市販の材料を使って費用が低く、軽量かつ本物の手のように動かせる義手の開発に取り組みました。以下のムービーでは、実際に研究チームが開発した義手をボランティアの男性が装着して使用する様子を確認できます。

Inflatable robotic hand gives amputees real time tactile control - YouTube

開発された義手を装着して握手する男性。義手の表面には市販されているシリコーン「ECOFLEX」が使われており、義手全体にかかる費用は約500ドル(約5万5000円)とのこと。また、重さは0.5ポンド(約227グラム)です。

強く握るとつぶれてしまいそうなカップケーキを……

力加減を調節してつかみ、口に運びます。

開発された義手は多様な握り方に対応しています。ワイングラスのステム(脚)をつまんで……

乾杯。

義手の表面には圧力センサーが搭載されており、義手の装着部分を通して装着者に触覚を伝えることが可能。ムービーの中では、義手を装着した男性が猫を優しくなでています。

重量のありそうなジュースの紙パックをしっかりホールドして持ち上げ……

コップに注ぎます。

カバンのジップを開閉するような細かい操作も可能。

パスケースのような薄い物体も……

器用につまみあげることができます。

薄くてもろいポテトチップスも、優しくつまんで口に運べます。

開発された義手は、少ないトレーニングで使い始められることも特徴としています。ムービーの中では、タイマーをセットしてトレーニングにかかる時間を計測しています。

まずは、腕をねじ込んで義手を装着。

次に、電源ボタンとトレーニングボタンを押します。

義手には表面筋電位(EMG)センサーが搭載されており、トレーニングボタンを押してから装着者が「握る」「つまむ」といった動作を行おうとした時の筋電位を記録することで、装着者の意のままに動かすこと可能になります。

装着からトレーニングにかかった時間は約1分。これで装着者が動作を行おうとする際の筋電位を義手が検知して、思い通りに動くようになりました。

研究チームによると今回使われた義手は試作品とのことですが、すでに複数の動作に対応しています。1つ目の動作は「強く握る」。

他にも「繊細な力加減でつまむ」といった動作や……

「3本の指でつまむ」……

カギを持つようにして親指と人差し指の側面で物を保持する「側方つまみ」といった動作が可能です。

開発チームの一員であるMITのXuanhe Zhao教授は、「今回開発した義手はまだ製品段階には達していませんが、すでにワクワクするほどのパフォーマンスを発揮しています」「義肢を必要としている低所得の家族にとって、今回開発した非常に安価は義手は大きな可能性を提供します」と述べています。