自分の義手を改造して「考えるだけで音楽を制御」できるサイバー過ぎるミュージシャンが誕生
筋電義手のエレクトロニックミュージシャン兼YouTuberとして活動するベルトルト・マイヤーさんが、自身の義手を「頭で考えるだけで音楽を制御できる義手」に改造しました。
Man hacks his prosthetic arm to control music synthesizer with his thoughts / Boing Boing
https://boingboing.net/2020/02/15/man-hacks-his-prosthetic-arm-t.html
筋肉は脳から命令として発せられる微弱な電気的刺激により収縮しますが、この電位は「表面筋電位」と呼ばれ、体表面でも検知することができます。この表面筋電位の出力量によって動作を制御するのが「筋電義手」で、表面筋電位の発生方法に一定のルールを設けることで、通常は「手首を曲げる」や「ものを掴む/離す」といった動作を義手で再現します。
マイヤーさんはこの表面筋電位を用いてシンセサイザーを制御することを思いつき、筋電義手に取り付ける「SynLimb」という装置を開発し、自身のYouTubeチャンネル上で紹介しています。
Hacking my arm prosthesis to output CV so that it plugs into my synth: Thought-controlled music! - YouTube
マイヤーさんの筋電義手は手首を360度回転させたり、ものを掴んだり離したりすることができます。しかし、シンセサイザーを制御するための小さなつまみをひねるなど、細かい操作は難しいそうです。そんなマイヤーさんが考えたのが、筋電義手が検知する表面筋電位を用いてシンセサイザーを操作するというアイデア。
筋電義手が検知する表面筋電位を使ってシンセサイザーを制御するには、検知した表面筋電位をシンセサイザーが理解できる制御電圧に変換する必要があります。そのためには回路基板を設計する必要があったのですが、マイヤーさんは自宅にあった音楽機器メーカー・KOMA ElektronikのField Kitで、求めているような信号の増幅が行われていることに気づき、KOMA Elektronikに直接連絡を取ったそうです。すると、KOMA Elektronikで働くクリシーさんからすぐさま返信があり、マイヤーさんが求める装置を作るための回路図を提供してもらうことに成功。
そして、クリシーさんとマイヤーさんの父親であるダニエルさんの協力の下、マイヤーさんの筋電義手に合わせたカスタム回路基板を作成。ベースは3Dプリンターで出力します。
完成したのがコレ。「SynLimb」と名付けられています。
設計
義手を取り外して……
ここにSynLimbを装着。片手でも簡単に着脱可能です。
マイヤーさんが指で示している部分にインジケーターランプが存在しており、これによりSynLimbが動作中かどうかが判断できます。
このSynLimbとシンセサイザーをケーブルで接続することで、筋電義手の検知する表面筋電位でシンセサイザーを制御することができます。表面筋電位は腕を動かそうとする際に発生する電気的刺激であり、マイヤーさんは普段から筋電義手を扱うことに慣れているため、SynLimbがあればまさに「考えるだけでシンセサイザーを制御」可能になるそうです。
SynLimbとシンセサイザーは2本のケーブルで接続することが可能で、ムービー中ではシンセサイザーを手で操作することなく、再生される音源の音程を変えることに成功しています。
なお、SynLimbはあくまでもプロトタイプの段階にあるため、マイヤーさんたちはまだ開発に取り組んでいるとのことです。
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in ハードウェア, 動画, Posted by logu_ii
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