「温かい風呂」につかることがマラソンランナーの走力を向上させるかもしれない

1日の終わりに温かい風呂につかり、疲れを取るのが日々の楽しみだという人もいるはず。学術誌のThe Journal of Physiologyに掲載された論文で、「温かい風呂につかることが長距離ランナーの走力を向上させる可能性がある」という興味深い研究結果が報告されました。
Long‐term passive heat acclimation enhances maximal oxygen consumption via haematological and cardiac adaptation in endurance runners - Jenkins - The Journal of Physiology - Wiley Online Library
https://physoc.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1113/JP289874
Marathon training: why hot baths might help you run faster
https://theconversation.com/marathon-training-why-hot-baths-might-help-you-run-faster-276796
マラソンなどに取り組む長距離ランナーの一部は、標高が高い場所で「高地トレーニング」を行っています。これは、空気中の酸素濃度が低い場所にいると体が酸素を運搬する赤血球をより多く生成するため、低地に戻った時に赤血球の多さが走力の向上をもたらしてくれるという仕組みです。
しかし、高地トレーニングには時間や金銭的な負担が大きく、長距離の移動が必要になるというデメリットもあります。そこで、イギリスのカーディフ・メトロポリタン大学の博士課程に在籍するエリオット・ジェンキンス氏らの研究チームは、高地トレーニングの簡単な代替手段として「温かい風呂」が役立つのかどうかを調べる実験を行いました。
研究チームは十分なトレーニングを受けている長距離ランナーを募集し、いつも通りのトレーニングをしながら「週5回の入浴」を5週間続けるように依頼しました。使用された浴槽はごく普通の家庭用のものであり、水温は安価な温度計を用いてセ氏40度に保たれ、水温が下がったら必要に応じてお湯を加えて温度を調整したとのこと。各入浴セッションは45分間で、通常のトレーニングが終わった直後に実施されました。
5週間の実験期間の前後で、被験者の赤血球量や心臓の構造、運動持久力の指標となる最大酸素摂取量(VO2 max)といった項目について測定を行い、温かい風呂につかることがどのような影響を及ぼしたのかが調査されました。

実験の結果、5週間にわたって定期的に入浴した被験者の赤血球量は著しく増加したことが判明しました。つまり、ランナーたちの血液中の酸素運搬量が、定期的に温かい風呂につかるだけで増加したというわけです。
一見すると、酸素が薄い高地に行ったわけでもないのに、風呂につかるだけで赤血球が増加したのは意外に思えます。この理由についてジェンキンス氏らは、「たった一度の温熱療法でも、血液の液体成分である血漿(けっしょう)が膨張します。この膨張によって赤血球が希釈され、血液中の酸素運搬量が一時的に減少します。体はこの変化を感知して、バランスを回復するために赤血球を増産することで対応します」と説明しています。温かい風呂につかることを繰り返すにつれて血漿と赤血球はそれぞれ増加し、結果的に総血液量も増加して体の酸素運搬能力が向上するとのこと。
また、心臓の主要なポンプ機能を担う左心室の容積も、温かい風呂につかり続けることで増加することも確認されました。この左心室の変化には、風呂につかることで生成された血液量の増加が寄与していると考えられます。
これらの変化が相まって被験者らの有酸素能力は向上し、最大酸素摂取量は約4%増加し、トレッドミルを用いたテストでもより速いスピードに到達できるようになりました。ジェンキンス氏らは、「実験室での測定値はレース結果と同じではないものの、特にトレーニングの強度や走行距離を増やすことなく達成されたことを考えると、これほどの改善は訓練を受けたアスリートにとって意義深いものです」と述べました。

温かい風呂につかることはけがのリスクや身体への負担が小さく、比較的多くのアスリートが利用しやすいというメリットがあります。その一方で、今回の実験は「セ氏40度の水温」「1回45分」「週5回を5週間継続」という特定のプロトコルのみを用いており、より低い温度や短い時間でも同様の効果が得られるかどうかは不明です。また、長時間の入浴は脱水症状やめまいといった症状を引き起こす可能性もあるため、リスクが完全にゼロというわけではありません。
とはいえ、今回の調査結果は長距離走のパフォーマンスを向上させる上で、必ずしも運動量の増加や高地トレーニングが必要ではないことを示唆しています。ジェンキンス氏らは、「時には、驚くほどシンプルな方法で体の適応を促すことができます。マラソンランナーがトレーニングをサポートする実践的な方法を探している場合、受動的な温熱療法は、驚くほどシンプルで検討する価値のあるツールとなるかもしれません」と述べました。
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in サイエンス, Posted by log1h_ik
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