「氷風呂」に健康上のメリットはあるのか?

健康的な入浴習慣の1つとして、SNSなどで「氷風呂」が紹介されることがあります。一般的には「筋肉痛を軽減し、運動後の回復を促進する効果がある」などと宣伝されていますが、果たして本当のところはどうなのか、南オーストラリア大学運動科学講師のハンター・ベネット氏が解説しました。
Ice baths are popular for exercise recovery and general wellness. But what does the science say?
https://theconversation.com/ice-baths-are-popular-for-exercise-recovery-and-general-wellness-but-what-does-the-science-say-250649
今回ベネット氏が言及したのは、文字通り風呂に氷を入れる「アイスバス(Ice baths)」というものです。日本では「冷水浴」や「水風呂」が広く知られており、冷たい水につかることは一般的な行為であると言えますが、水に氷を入れてまで冷やすというのはあまり見かけません。
氷風呂は主にプロのアスリートを中心に親しまれてきた行為ですが、近年では世界中のフィットネス愛好家が取り入れ始めています。氷風呂の温度は通常10度~15度ですが、文字通り氷入りのキンキンに冷えた水を選ぶ人も多くいます。日本では愛知県豊田市の宮城野部屋が取り入れた事例などが報告されています。
ベネット氏によると、激しい運動をした直後に氷風呂に入ると、その後数時間あるいは数日間の筋肉痛が軽減されるという研究結果が報告されているそうです。また、氷風呂は筋力、パワー、柔軟性などの回復にも役立つことが示されているほか、運動後の炎症、筋肉の腫れ、筋肉の損傷を抑え、乳酸などの代謝産物の排出を改善するとの研究結果もあります。
このことから、ベネット氏は「激しい運動を連日行う人にとって、氷風呂は良い選択肢となるでしょう」と述べました。

ただし、たとえアスリートであっても氷風呂を常時使うべきではないそうです。
氷風呂の効果の1つは運動後に起こる筋肉組織の炎症を抑えることですが、炎症は本来、体に対して「強くなれ」と伝えるものでもあります。このため、炎症を抑えすぎると、筋肉の成長を鈍らせる可能性があるとのことです。
ベネット氏がいくつかの研究を調べたところ、定期的に冷水に浸かることでストレスがわずかに軽減され、睡眠の質や生活の質がわずかに改善され、風邪やインフルエンザなどの病気にかかる頻度が減る可能性が示唆されたとのこと。しかしこうした知見の多くは単独の研究から得られたものであるため、ベネット氏は「より多くの研究が行われるまでは慎重に解釈すべき」と注意しています。

氷風呂にはいくつかメリットがある反面、急激な温度の変化による「冷水ショック」を引き起こす可能性があるというデメリットもあります。冷水ショックが起こると、過呼吸や血圧の上昇、不整脈を引き起こし、すぐに治療しないと命にかかわることもあります。
日本でも、サウナと水風呂を行き来することで気分をスッキリさせる行為が流行していますが、急激な温度変化に伴う血圧の乱れで「ヒートショック」が発生する危険性もあることが指摘されています。
加えて、あまりにも長く冷たい水に浸かっていると低体温症のリスクが高まる可能性もあります。
ベネット氏は、「氷風呂を試してみよう」と考えている人に対し、「いくつかの研究で10度~15度が最適な温度とされています。冷やしすぎず、長く入りすぎず、ゆっくり浸かってください。10分~20分程度が最も一般的な長さですが、始めて入る場合は3分~5分程度から始めましょう。体の反応は冷水に浸かった最初の30秒間でピークに達し、その後弱まっていきます。重度の冷水ショックになる可能性を最小限に抑えるにはこの反応が消えるのを待ち、胸から上と顔を水に浸す、あるいは顔を常に水につけないようにすることが大切です。入る前には体調をチェックし、筋力を向上させるために入る場合は日課とするのではなく控えめに使用しましょう」とアドバイスしました。
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in サイエンス, Posted by log1p_kr
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