サイエンス

CERNがLHCを使った実験で新たな「テトラクォーク」を発見、寿命が長くさらなる研究にも期待

by Morton Lin

クォークとは、物質を構成する最小単位である素粒子のグループです。2021年7月29日、欧州原子核研究機構(CERN)大型ハドロン衝突型加速器(LHC)を使った実験で、4個のクォークから構成される「テトラクォーク」の新たなタイプを発見したと報告しました。今回見つかったテトラクォークは粒子としての寿命が長く、さらなる研究を進める手がかりになると期待されています。

Twice the charm: long-lived exotic particle discovered | CERN
https://home.cern/news/news/physics/twice-charm-long-lived-exotic-particle-discovered

New particle discovered at CERN is a long-lived double charmer
https://newatlas.com/physics/cern-new-particle-double-charm/

物質の基本的な構成要素であるクォークは、これまでにアップクォークダウンクォークチャームクォークストレンジクォークトップクォークボトムクォークの計6種類が見つかっています。複数のクォークが強い相互作用で結合することで、陽子中性子などのハドロンを構成します。

通常のハドロンは2個または3個のクォークで構成されていますが、近年ではより多くのクォークからなる粒子も発見されており、4つのクォークで構成されるハドロンはテトラクォークと呼ばれています。CERNは2021年7月26日~30日に開催された高エネルギー物理学の会議であるEPS-HEP2021で、「Tcc+」と名付けられた新たなテトラクォークを発見したと報告しました。

CERNによると、新たなテトラクォークは大型ハドロン衝突型加速器(LHC)を使った実験で発見されたとのこと。テトラクォークは2個のクォークと、質量やスピンが等しいものの電荷などの正負の属性が逆の反粒子(反クォーク)からなっており、今回発見された「Tcc+」は2個のチャームクォーク・1個の反アップクォーク・1個の反ダウンクォークで構成されているそうです。

by CERN

テトラクォークはこれまでにも複数発見されており、CERNも2020年に2個のチャームクォーク・2個の反チャームクォークからなるテトラクォークを発見しています。ところが「Tcc+」は、クォークの中で3番目に質量が大きいチャームクォークが2個ある一方、結合する反クォークは質量が5番目に小さいダウンクォークと6番目に小さいアップクォークであり、粒子全体でクォークと反クォークの質量が釣り合っていない点が特徴的だとのこと。

チャームクォークの質量はダウンクォークやアップクォークより格段に大きいため、研究者はチャームクォークの質量と釣り合いを取る反チャームクォークがない粒子を「open charm(オープンチャーム)」と呼んでいます。「Tcc+」の場合は、チャームクォーク2個分の質量が反クォークと釣り合っていないため、「double open charm(ダブルオープンチャーム)」となるそうです。


Tcc+」はダブルオープンチャームであることに加え、これまでに見つかった特殊なハドロン(異種ハドロン)の中で最も寿命が長いという特徴があります。2個の重いクォークと2個の軽いクォークからなるテトラクォークは、「1個の重いクォークと1個の軽いクォーク」からなる中間子に分かれて崩壊するとされていますが、「2個のチャームクォーク・1個の反アップクォーク・1個の反ダウンクォーク」からなるテトラクォークは質量の関係から、他の粒子よりも崩壊しにくいとCERNは説明しています。

CERNによると「Tcc+」の発見は、2個のチャームクォークを「2個のボトムクォーク」に置き換えたより寿命の長いテトラクォークの探索や、粒子の高精度な量子数測定といった研究の可能性を開くとのことです。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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