ハードウェア

人間の脳からヒントを得た新しいチップはAIのエネルギー消費量を大幅に削減できる可能性


ケンブリッジ大学の研究チームが、人間の脳からヒントを得た新しいチップを開発しました。このチップは従来のデバイスと比べてスイッチング電流が約100万分の1に抑えられるため、実現すればAIのエネルギー消費量を大幅に削減可能です。

New Cambridge human brain-inspired chip could slash AI energy use — new type of memristor has roughly a million times lower switching current than conventional devices | Tom's Hardware
https://www.tomshardware.com/tech-industry/new-cambridge-human-brain-inspired-chip-could-slash-ai-energy-use


2026年3月20日、ケンブリッジ大学の研究チームが科学誌のScience Advancesで、酸化ハフニウムメモリスタに関する論文を発表しました。この新技術の最大の特徴は、従来の酸化物系デバイスに比べて電路の開閉に必要な電流が約100万分の1に抑えられるという点です。

HfO2-based memristive synapses with asymmetrically extended p-n heterointerfaces for highly energy-efficient neuromorphic hardware | Science Advances
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.aec2324


酸化ハフニウムメモリスタを開発したのは、ケンブリッジ大学の材料科学・冶金学科のババク・バヒト博士率いる研究チームです。チームは、半導体内でP型半導体の領域とN型半導体の領域が接している部分であるpn接合を形成する多成分薄膜を開発し、10nA(ナノアンペア)以下の電流でデバイスの状態をスムーズに切り替えながら、数百種類の異なる導電率レベルを実現可能にしました。

メモリスタは、データを同じ物理的な場所に保存・処理できるという2端子デバイスです。従来のコンピューターアーキテクチャでは、メモリユニットと処理ユニットの間でのデータ転送に大量のエネルギーを消費してしまいますが、研究チームが開発した酸化ハフニウムメモリスタではデータ転送そのものが不要となるためエネルギー消費はなくなります。論文によると、メモリスタで構築されたニューロモルフィック(神経模倣)システムは、コンピューティングの消費電力を70%以上削減できる可能性があるそうです。


既存の酸化ハフニウムベースのメモリスタのほとんどは、酸化物内部で導電経路が成長・破断するフィラメント抵抗スイッチングに依存しています。これらのフィラメントは確率的な挙動を示すため、デバイス間およびサイクル間の均一性が低く、計算精度が制限されます

これに対してケンブリッジ大学の研究チームは、酸化ハフニウムにストロンチウムとチタンを添加し、2段階プロセスで薄膜を生成するという新しいアプローチを採用することで、下層のN型チタン酸化物層とpn接合界面を自己組織化するp型酸化ハフニウム層を形成しました。


バヒト博士は「フィラメント状のデバイスはランダムな挙動を示すという問題があります。しかし、我々のデバイスは界面でスイッチングを行うため、サイクル毎、デバイス毎に優れた均一性を示します」と説明しています。

また、研究チームが開発した酸化ハフニウムメモリスタは、0.00000001(10のマイナス8乗アンペア)以下のスイッチング電流、10万秒を超える保持時間、5万回を超えるパルススイッチングサイクルの耐久性を実証しています。さらに、生物の神経信号に匹敵する1Vの同一スパイクを用いることで、飽和することなく、数百の異なるレベルにおいて、50倍以上の電気伝導率の変調範囲を実現しました。


ただし、既存の成膜プロセスでは約700度の温度が必要であり、これは標準的なCMOS製造の許容範囲を超えるものです。そのため、バヒト博士は「これが我々のデバイスを製造するプロセスにおける最大の課題です。しかし、現在温度を下げて標準的な業界プロセスに適合させる方法に取り組んでいます」と語りました。ただし、デバイススタックに使用されている全ての材料は完全にCMOSと互換性があるそうです。

なお、研究チームによる酸化ハフニウムメモリスタはケンブリッジ・エンタープライズを通じて特許が出願されています。

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in ハードウェア, Posted by logu_ii

You can read the machine translated English article A new chip inspired by the human brain c….