乗り物

メーカーが倒産してしまったEVのオーナーらが自力でソフトウェアを解析してオープンソースツールを構築


近年の自動車には高度なソフトウェアが搭載されていますが、メーカーが倒産するとソフトウェアのアップデートやサービスが提供されなくなり、文鎮化してしまうリスクがあります。2024年に倒産したEVメーカー・Fisker(フィスカー)のEV車を所有するオーナーたちが、自分たちでフィスカー車を維持するための非営利団体を設立し、ソフトウェアをリバースエンジニアリングしてオープンソースツールを構築していると、EV関連のニュースサイトであるElectrekが報じました。

Fisker went bankrupt and owners built open source car company from the ashes | Electrek
https://electrek.co/2026/05/16/fisker-ocean-open-source-ev-story-after-bankruptcy/

フィスカーは2016年に設立されたEVメーカーであり、2022年には初のEV車であるフィスカー・オーシャンの販売を開始しました。フィスカー・オーシャンはブレーキやエアバッグ、シフト操作、バッテリー管理、ドアロックなどほぼすべてのシステムがソフトウェアベースで構築されており、かつてはテスラのライバルとも目される存在だったとのこと。

ところがフィスカー・オーシャンのソフトウェアには多数の不具合がありました。2024年2月にはガジェットレビュー系の人気YouTuberに酷評され、その火消しで車を貸し出したディーラーに高圧的な電話をかけたことが判明して炎上する事態に発展。資金調達のめどがたたなくなったことを受けて、同年6月に破産申請を行いました。

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by Werner Bayer

フィスカーの破産によって被害を被ったのが、すでに納車された約1万1000台のフィスカー・オーシャンのオーナーたちです。フィスカー・オーシャンに搭載されたソフトウェアの多くは、診断や通常動作のために定期的にフィスカーのクラウドサーバーに接続する必要がありました。しかし、倒産によってフィスカーのサーバーがダウンしてしまったため、フィスカー・オーシャンは車載インフォテインメントシステムが使えなくなるだけでなく、車の走行にとって重要な機能まで使えなくなってしまったというわけです。

これを受けてイーサリアムの考案者であるヴィタリック・ブテリン氏は、「自動車業界にはもっと多くのオープンソースが必要です。『メーカーがなくなれば、その車はもう使い物にならない』というのがあっという間に常識になってしまったことが本当に残念です」とコメントしました。


しかしフィスカー・オーシャンのオーナーたちは、製造元が倒産したからといって泣き寝入りすることはしませんでした。フィスカーの破産から数カ月以内に数千人のオーナーが「フィスカーオーナーズ協会(FOA)」という非営利団体を立ち上げ、独立した技術専門家を雇ってフィスカー独自のソフトウェアパッチのリバースエンジニアリングを開始したのです。

FOAではメンバー同士でファームウェアの書き換え方法を教え合ったり、交換部品を大量購入することで部品単価を抑えたりしています。また、ヨーロッパでは技術力に優れたメンバーが各地を巡回し、他のオーナーの車両修理を支援するモバイル修理ネットワークも創設されたとのこと。


さらにFOAはアメリカの規制当局に対し、車両メーカーの倒産手続きにリコールを含むように働きかけたり、企業を通じて部品購入ルートを確保したり、製造元が存在しない車両についても保険適用を継続するよう保険企業に求めたりと、多岐にわたる活動を行っています。

FOAはこれまで自動車業界に欠けていたソフトウェアのオープンソース化にも貢献しています。GitHubではフィスカー公式モバイルアプリをHome Assistantに統合する機能や、車載ソフトウェアが通信するCANバスフィスカー・オーシャン用ファイルなどが公開されています。また、フィスカー・オーシャン上でCANトラフィックを傍受し、診断トラブルコードを解読する方法について解説するメンバーもいます。

近年はEVメーカーの競争が激しく、フィスカー以外にもEVトラックを製造していたニコラが破産を申請したほか、清算を進める企業もいくつか存在しています。消費者団体はメーカーが倒産しても車載ソフトウェアが機能し続けられるようにする基金の義務化や、メーカー倒産時にソフトウェアをオープンソース化することの義務化などを求めています。また、ヨーロッパに拠点を置くフォルクスワーゲンやBMW、メルセデス・ベンツなどの11社は、2025年にオープンソースの車載ソフトウェアを共同開発する覚書に署名しており、一部の業界大手の間でもオープンソース推進の動きがみられます。

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in ソフトウェア,   乗り物, Posted by log1h_ik

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