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自動車を所有者が修理できる「自動車修理法」が圧倒的多数で可決、自動車メーカーに対して認定ディーラーと同様の車両データを消費者や独立系修理業者に提供することを求める


2023年11月7日(火)、アメリカ・メイン州で自動車を修理する権利を求める法律が圧倒的賛成多数で可決されました。これは一般消費者にとって大きな勝利であり、自動車関連の修理する権利に対するロビー活動や法廷闘争に多額の資金を費やしてきた自動車メーカーにとっては大きな打撃となります。

Voters Overwhelmingly Pass Car Right to Repair Law in Maine
https://www.404media.co/voters-overwhelmingly-pass-car-right-to-repair-law-in-maine/


Maine Question 4, "Right to Repair Law" Vehicle Data Access Requirement Initiative (2023) - Ballotpedia
https://ballotpedia.org/Maine_Question_4,_%22Right_to_Repair_Law%22_Vehicle_Data_Access_Requirement_Initiative_(2023)

2023年11月7日、アメリカのメイン州で消費者が自分の所有する自動車を自身の手で修理する権利を求める自動車修理法に関する住民投票が実施されました。投票では、「自動車メーカーに対して、車載診断システムを標準化し、それらのシステムと機械データへのリモートアクセスを自動車の所有者や独立した修理業者に提供するよう要求しますか?」というシンプルな質問が住民に投げかけられています。この投票の有効票における賛成票は84.3%、反対票が15.7%となったため、圧倒的賛成多数で自動車修理法が可決されることとなりました。


メイン州の自動車修理法により、自動車の所有者および独立系修理業者は、自動車の修理・メンテナンスに必要な情報、ツール、ソフトウェアに自由にアクセスすることが可能となります。また、同法律では自動車メーカー側は認定ディーラーが受け取るのと同じ診断・修理情報を、自動車の所有者および独立系修理業者に提供することが義務付けられます。加えて、自動車修理法は自動車メーカーが修理に専用ツール・ソフトウェアの使用を義務付けることを阻止するためにも効力を発揮するそうです。

なお、同じように自動車の修理する権利を求める法律が2020年11月にマサチューセッツ州で成立しています。そのため、海外メディアの404 Mediaは「メイン州での投票結果はあらゆる形態において、修理する権利が消費者に圧倒的に支持されており、メーカー側の修理する権利を否定するようなキャンペーンに消費者が動じていないことを改めて示すものである」と指摘しました。

自分で自分の車を修理できる「修理権」の新法がアメリカで成立、一体何が革新的なのか? - GIGAZINE


マサチューセッツ州で修理権法に関する住民投票が行われる直前には、自動車メーカーが数十億円もの資金を投じ、「修理権法が成立すればストーカーやハッカーにこれらの情報が悪用される」とネガティブキャンペーンを実施。また、自動車メーカーはマサチューセッツ州における修理権法の施行を阻止するために、2020年から3年にわたり法廷闘争を繰り広げました。

一方で、自動車における修理する権利を求める人々は、「自動車メーカーが許可した人しか自動車の診断情報システムにアクセスできない」という状況を問題視し、法律の必要性を訴えてきました。これまでの自動車は、ステアリングホイールの下にある有線ポートから自動車の診断情報にアクセスできましたが、近年の車両ではこの種のデータにアクセスすることが困難になっています。

メイン州の自動車修理権連合でディレクターを務めるトミー・ヒッキー氏は、「メイン州の住民は自動車の修理に関する自分たちの運命をコントロールする権利を勝ち取りました。自動車には新しい技術が導入されており、もはや車輪付きのコンピューターになりつつあります。しかし、メイン州の法律により、自動車オーナーは誰でもこの種のデータの門番になれるようになります」と言及しました。


メイン州での自動車メーカーによるネガティブキャンペーンについて、ヒッキー氏は「マサチューセッツ州ほど激しくは行われなかった」と語りました。その理由について、ヒッキー氏は「マサチューセッツ州では3000万ドル(約45億円)を費やしながら、求める投票結果を得られなかったため」と推測しています。

メイン州の法律がメイン州の人々にとってのみ重要というわけではありません。過去に各州がこの種の法案を可決した際、メーカー側は修理権法に関する機能を他の州でも利用できるようにする必要がありました。マサチューセッツ州で可決された修理権法は、自動車メーカーが州ごとにわずかに異なる法律に対応するのではなく、アメリカ全土で同様の法律を遵守することに同意する覚書に署名したため、事実上の国内法となっています。

アメリカで自動車の修理する権利を推進しているCAR Coalitionは、「メイン州の有権者が自動車修理法に圧倒的な支持を示したことで、保護法を整備する全国的な動きに勢いが加わりました」とコメント。CAR CoalitionはSMART法やREPAIR法のような超党派の法案により、アメリカ全土で自動車を修理する権利を求める闘いを継続し、どこに住んでいるかに関係なく、すべてのアメリカ人が自身の所有する自動車を修理する権利を求めていくとしています。

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in ソフトウェア,   乗り物, Posted by logu_ii

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