自動車規制当局がメーカーに「修理する権利に関する法律を守るな」と警告、安全性に重大な懸念をもたらす可能性
ユーザーが自分で購入したモノをメーカーの修理サービスを介さず自身で修理できる権利は「修理する権利」と呼ばれており、アメリカではこの修理する権利を認めるための法律が整備されつつあります。マサチューセッツ州では「自動車テレマティクス法」と呼ばれる自動車の修理する権利に関する法律が存在するのですが、これを順守すると「安全性に重大な懸念が生じる」として、アメリカの自動車安全規制当局である国家幹線道路交通安全局(NHTSA)が大手自動車メーカーに警告していることが明らかになりました。
US tells automakers not to comply with Massachusetts vehicle data law | Reuters
https://www.reuters.com/business/autos-transportation/us-tells-automakers-not-comply-with-massachusetts-vehicle-data-law-2023-06-13/
Feds tell automakers not to comply with Mass. “right to repair” law | Ars Technica
https://arstechnica.com/cars/2023/06/feds-tell-automakers-not-to-comply-with-mass-right-to-repair-law/
マサチューセッツ州の自動車テレマティクス法は、自動車のテレマティクスや車両生成データへのオープンアクセスを義務付けることで、車両が正規ディーラーやメーカーに直接送信する診断データに独立系の修理業者もアクセスできるようにするという法律です。
これにより、独立系修理業者による車両の修理が容易になることが期待されています。2020年に実施された有権者を対象とする自動車テレマティクス法への賛否を問う投票では、圧倒的多数で同法律の成立が承認されており、同州では法律の施行に向けた動きが進められていました。
しかし、NHTSAは大手自動車メーカー約20社に対して、この自動車テレマティクス法ではなく連邦自動車安全基準に従うことを求める書簡を公開しました。この書簡は大手自動車メーカー約20社に宛てて公開されており、これにはゼネラルモーターズ、テスラ、フォード、トヨタ、リヴィアン、フォルクスワーゲンなどが含まれます。
NHTSAは、マサチューセッツ州の自動車テレマティクス法と連邦自動車安全基準には矛盾する点があるとして、「NHTSAは自動車メーカーが連邦政府の安全義務を完全に順守することを期待しています」と述べています。
NHTSAは「(マサチューセッツ州の自動車テレマティクス法に基づく)オープンアクセスを利用し、悪意のある攻撃者が車両を遠隔操作したり、複数の車両を同時に攻撃したりするなどの危険な攻撃が行われる可能性があります」と述べ、マサチューセッツ州の自動車テレマティクス法を自動車メーカーが順守することで発生し得る問題を挙げました。
さらに、「リモートからコマンドを送信できる機能を備えた自動車メーカーのテレマティクス製品にオープンアクセスできるようになると、ステアリング・加速・ブレーキといった安全上重要な機能を含む、車両のシステムを遠隔操作することができるようになります」とも述べています。
一方、マサチューセッツ州のアンドレア・ジョイ・キャンベル司法長官は、「消費者と独立系修理業者は知る権利がある」と言及。これに対してNHTSAは、「一部の自動車メーカーが自動車テレマティクス法を無効にする意図を表明している」と述べています。
大手自動車メーカーを代表する業界団体のAlliance for Automotive Innovationは、マサチューセッツ州の自動車テレマティクス法の成立を阻止すべく訴訟を起こしており、裁判所に一時差止命令の発令を求めていました。
Alliance for Automotive Innovationは、自動車メーカーが自動車テレマティクス法を順守するには「車両から重要なサイバーセキュリティ保護機能を取り除く必要がある」と警告しています。
なお、Alliance for Automotive InnovationはNHTSAの書簡についてのコメントを控えています。
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in 乗り物, Posted by logu_ii
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