「避妊」によって多くの哺乳類の寿命が延びるとの研究結果

現代社会では、家族計画や人生設計の一環として避妊手術が行われるほか、動物を対処にした去勢なども広く実施されています。動物園などの動物を対象にした新たな研究では、「避妊手術や治療を受けた哺乳類の多くは寿命が延びる」という結果が示されました。
Sterilization and contraception increase lifespan across vertebrates | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-025-09836-9

Contraception and castration increase lifespan in mammals
https://www.mpg.de/25822909/1204-evan-contraception-and-castration-increase-lifespan-in-mammals-150495-x
Contraception May Extend The Life of Some Mammal Groups by 10% : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/contraception-may-extend-the-life-of-some-mammal-groups-by-10
動物によって寿命はさまざまですが、一般に出産する子どもの数が多い動物ほど短命で、出産する数が少ないほど長命の傾向がみられます。この傾向については、動物は限られたリソースを「繁殖」と「自分の生命維持」に割り振る必要があり、生殖にエネルギーを費やすと生きるためのエネルギーが減るという説明があります。
交尾・妊娠・出産・子育てといった繁殖活動には多大なエネルギーが必要であり、繁殖活動をしていない時でさえ性ホルモンは成長や老化に影響し、本来であれば身体の維持に使われるはずのリソースを消費します。つまり、避妊手術や治療などによって繁殖ができない場合、理論的にはその個体がより長生きする可能性があるというわけです。
ドイツのマックス・プランク進化人類学研究所やニュージーランドのオタゴ大学などの国際研究チームは、この説を確かめるために世界中の動物園や水族館で飼育されている117種の動物の記録を分析。また、実験室で飼育されていたものや野生のものを含む、不妊手術を受けた動物に関する71件の発表済み研究についてのメタアナリシスを行いました。

分析の結果、避妊のための継続的なホルモン治療や永続的な不妊手術は、動物たちの寿命を平均10%延長させることがわかりました。避妊による寿命延長効果は霊長類から有袋類、げっ歯類に至るまで多くの哺乳類グループで観察されましたが、一部の種では特に顕著な効果がみられました。たとえばマントヒヒでは、ホルモン治療を受けたメスの寿命が治療を受けていないメスより29%も長くなり、去勢されたオスは19%も寿命が延びました。
論文の共著者でマックス・プランク進化人類学研究所の統計数理生態学者であるフェルナンド・コルチェロ氏は、「この研究は、生殖にかかるエネルギーコストが哺乳類全般の生存に測定可能な、そして時には大きな影響を与えることを示しています。生殖への投資を減らすことで、より多くのエネルギーを寿命の延長に向けることができるのかもしれません」と述べています。
避妊によって寿命が延びる現象は雌雄ともに生じましたが、その根本的な原因には違いがありました。オスの寿命を延ばすのは去勢手術であり、精管切除術(パイプカット)では延命効果がみられませんでした。これは、発達段階の不妊手術によって男性ホルモンであるテストステロンの分泌が減り、主要な老化経路への影響が排除されたり、危険行動のリスクが減ったりすることが影響しているとみられます。
一方、メスの場合は複数タイプの避妊手術および治療で寿命延長効果がみられ、この利点は妊娠・授乳・生理周期といった負担が軽減されることで生じると考えられます。しかし、卵巣摘出手術による避妊は寿命を延ばすものの晩年の健康状態を損なうことが示唆されており、これは閉経後の女性がフレイル(慢性的な虚弱状態)や慢性疾患になりやすい現象を説明する可能性があります。

今回のデータはあくまでヒト以外の動物を対象にしたものであるため、同様の結果がヒトでも確認できるかどうかは不明です。19世紀以前の朝鮮半島における宦官(かんがん)に関する研究では、去勢された男性は去勢されていない男性よりも平均で18%長生きしたと示されていますが、歴史的記録の正確性については議論があるとのこと。また、女性の場合は良性疾患による外科的不妊手術を受けることが、約1%の寿命減少と関連しているとの研究結果があります。
研究チームは、「生殖には本質的にコストがかかります。しかし、医療・栄養・社会的サポートといった人間の環境がこれらのコストを緩和したり、影響を変えたりする可能性があります」と指摘しました。
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