新型コロナ検査ではコーラやオレンジジュースを用いて偽の陽性結果を得られることが判明、その対策とは?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査方法には、PCR検査や抗原検査、抗体検査などが存在します。そんな複数種の検査の中でも検査結果を迅速に確認できるイムノクロマト法を用いた検査では、コーラやオレンジジュースなどのソフトドリンクを用いて陽性反応を偽装できることが判明しました。
COVID-19: kids are using soft drinks to fake positive tests – I've worked out the science and how to spot it
https://theconversation.com/covid-19-kids-are-using-soft-drinks-to-fake-positive-tests-ive-worked-out-the-science-and-how-to-spot-it-163739
以下の画像は、イムノクロマト法を用いた検査キットにコーラ(上)とオレンジジュース(下)を滴下した場合の反応を示しています。画像を確認すると、どちらのソフトドリンクを滴下したキットでもテストライン(T)とコントロールライン(C)の両方が赤く染まり、COVID-19陽性の検査結果を示していることが分かります。なお、本来ウイルスが含まれていない場合はコントロールラインのみが染色されます。
上記の検査キットの仕組みは、以下のムービーで解説されています。
Lateral Flow Test Teardown - YouTube
検査キットを分解すると、中には試薬を浸透しやすいフィラメントが入っています。このフィラメントのうち、着色された部分は「金コロイドなどの着色粒子で標識された抗体(標識抗体)」、テストラインは「『新型コロナウイルスと結合した標識抗体』と結合する抗体」、コントロールラインは「標識抗体と結合する抗体」でコーティングされています。
検査の仕組みは以下の通り。まず検査対象者から得たサンプルをキットに滴下します。
滴下されたサンプルが浸透していく過程で、サンプルに含まれるウイルスなどの抗原が標識抗体と結合します。
浸透したサンプルがテストラインに到達すると、サンプルに新型コロナウイルスが存在する場合は「新型コロナウイルスと結合した標識抗体」がテストラインをコーティングする抗体と結合して、赤く染まります。
そしてコントロールラインでは、標識抗体とコントロールラインをコーティングする抗体が結合して赤く染まります。
実際に検査キットを使う方法は以下の通り。まず、サンプルを滴下すると……
速やかにサンプルがフィラメントに浸透していきます。
サンプルが浸透した後に検査キットを確認すると、テストラインは染色されず、コントロールラインのみが染色されていることから、今回滴下したサンプルには新型コロナウイルスが含まれていないことが分かります。しかし、サンプルとしてコーラやオレンジジュースなどのソフトドリンクを滴下すると、先述の通りにテストラインも染色され、「新型コロナウイルスに感染している」という結果が示されてしまいます。
イギリスのハル大学で化学を研究するマーク・ローチ氏によると、コーラやオレンジジュースなどのソフトドリンクは、含まれるリン酸やクエン酸の影響で水素イオン指数(pH)が2.5~4と、強い酸性を示すとのこと。また、一般的に抗体は中性で、酸性かアルカリ性に変化すると構造が変化することも知られています。これらのことからローチ氏は「酸性のソフトドリンクにさらされると、抗体のタンパク質構造が変化します。通常、タンパク質は他の物質と結合しようとするため、構造が変化した抗体が金コロイドと結合し、テストラインが赤く染色されると考えられます」と指摘しています。
さらに、ローチ氏はソフトドリンクを用いた検査結果偽装の対策も考案しています。ローチ氏によると、酸性環境下で構造がした抗体は、環境が中性になれば構造が元に戻るとのこと。そのため、ソフトドリンクで検査結果が偽装された検査キットのフィラメントを緩衝液で洗浄することで、本来の検査結果を確認することができます。
以下の画像は、上側がコーラを滴下した検査キットで、下側がコーラを滴下した後に緩衝液で洗浄した検査キットです。画像を確認すると、コーラを滴下した検査キットではテストラインとコントロールラインの両方が赤く染まっていますが、緩衝液で洗浄した検査キットはコントロールラインしか染まっておらず本来の検査結果を示していることがわかります。
なお、ソフトドリンクを用いて新型コロナウイルス検査の結果を偽装できるという事実は、SNSなどを通じて学校をサボりたい子どもたちの間で広まっているとのこと。ローチ氏は「私は子どもたちのトリックを無効化する方法を見つけました。子どもたちには、そのずる賢さを活用して私の仮説を検証し、子ども向けの査読付きジャーナルに投稿することをオススメします」と述べています。
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