「新型コロナウイルス抗体検査のお粗末さは災害レベル」と大手製薬会社のCEOが酷評、抗体検査の一体何が問題なのか?

スイスを拠点とする世界的な製薬会社ロシュのセベリン・シュワンCEOが、これまでに発売されている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査キットの一部について「なんの価値もないし、ほとんど役に立たない」と発言していたことが分かりました。その背景には、信頼性の低い抗体検査が乱造されているという実態があります。
'A disaster': Roche CEO's verdict on some COVID-19 antibody tests - Reuters
https://www.reuters.com/article/us-roche-results/a-disaster-roche-ceos-verdict-on-some-covid-19-antibody-tests-idUSKCN2240JS
Roche CEO Blasts Faulty Antibody Tests, Touts Own Product - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-04-22/roche-ceo-blasts-faulty-virus-tests-while-touting-own-product
Some high-demand Covid-19 blood tests a 'disaster,' says Roche CEO Severin Schwan - San Francisco Business Times
https://www.bizjournals.com/sanfrancisco/news/2020/04/22/covid-coronavirus-serologic-blood-tests-roche.html

COVID-19に感染すると、体内でウイルスに対する抗体が作られるため、抗体の有無を調べる抗体検査によりCOVID-19に免疫を獲得した人を特定することができると期待されています。COVID-19に免疫を獲得した人の数や割合などを把握することができれば、経済活動の再開や都市封鎖の解除といった政策の判断に役立つため、大規模なCOVID-19の検査を実施しているアメリカ、スペイン、イギリスなどでは100種類を超える抗体検査キットが製品化され流通しています。
また、抗体検査は指先に針を刺して血液サンプルを取るといった比較的簡易な方法で実施することが可能で結果が出るまでの時間も短く、検査キットの価格も安いというメリットもあります。
しかし、ロシュのシュワンCEOは2020年第1四半期の業績について発表した4月22日の電話記者会見で、「市場に出回っている既製の抗体検査をテストしましたが、これらの検査キットの信頼性はとても満足できるものではなく、さながら災害とでもいうべきものでした。こうした検査キットを販売する企業の倫理は非常に疑わしいといわざるを得ません」と述べて、他社の検査キットを酷評しました。

シュワン氏が既製の抗体検査キットを厳しく批判したのは、「信頼性の低さ」が理由です。シュワン氏は「どんな素人でも抗体検査キットを作ることができてしまいます。なんなら、私と誰かもう1人の2人で一晩かければ、うちのガレージで抗体検査キットを開発することもできます。つまり、検査キットとして機能しないようなものが実際に販売されていることが問題なのです」と話しました。
抗体検査の精度について疑問視しているのは、シュワン氏だけではありません。アメリカ食品医薬品局(FDA)の元長官のスコット・ゴットリーブ氏は5月4日に出演したCNBCのニュース番組で「抗体検査で陽性と出たら、念のためもう一度検査を受けることをおすすめします。率直に言って、私なら3回は受けます」と発言し、誤検知率の高さを指摘しました。
一方で、高い精度を持つ抗体検査も登場しています。FDAは5月3日に、ロシュが新たに開発した抗体検査薬「Elecsys Anti-SARS-CoV-2」を承認しました。ロシュによると、この抗体検査薬は検査対象者の静脈から採取した血液を使用し、「IgM」と「IgG」という2種の抗体の両方を検知するため、陰性の対象者を正しく判定する確率が99.8%、陽性の場合では100%と信頼性が高いとのこと。この抗体検査薬は、日本でも5月13日から全国の医療機関や研究機関向けに販売されています。
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