サイエンス

睡眠不足による健康への悪影響は適度な運動で相殺できることが判明


睡眠不足は、血糖値のバラつき認知症リスクの上昇といった健康への悪影響を及ぼすことが知られています。しかし、適切な運動時間を確保することで睡眠不足による悪影響を相殺できる可能性が、シドニー大学の研究チームによって示されました。

Sleep and physical activity in relation to all-cause, cardiovascular disease and cancer mortality risk | British Journal of Sports Medicine
https://bjsm.bmj.com/content/early/2021/05/25/bjsports-2021-104046

Poor sleep is really bad for your health. But we found exercise can offset some of these harms
https://theconversation.com/poor-sleep-is-really-bad-for-your-health-but-we-found-exercise-can-offset-some-of-these-harms-163270

1日7時間未満という少ない睡眠時間は、肥満や心臓病のリスクを高めることが明らかになっています。しかし、研究チームによると睡眠時間と日々の運動の相互作用に関する研究はほとんど行われていないとのこと。そこで、研究チームはUKバイオバンク計画で収集された38万55人分の健康調査データを入手し、睡眠状態を健康(Healthy)・中間(Intermediate)・不足(Poor)の3段階に分類しました。

さらに、世界保健機関(WHO)の示した身体活動ガイドラインを基に、中程度の運動を1週間に300分以上行っているか、ランニングや水泳、サッカーなどの激しい運動を週に150分以上行っている人々を「最も身体活動が活発な人々(High)」に分類し、中程度の運動を1週間に150分以上、または激しい運動を1週間に75分以上行っている人々を「身体活動を少し行っている人々(Low)」に分類しました。さらに「両者の中間(Medium)」と「まったく運動していない人々(No MVPA)」を加えて、身体活動の強度を4段階に分類しました。

以下のグラフは、縦軸が身体活動の強度(PA)と睡眠状態(Sleep)の組み合わせを示し、横軸がガンによる死亡のリスクを示しています。グラフを確認すると、まったく運動していない人々(No MVPA)の場合、睡眠状態が健康な人々(Healthy)の方が睡眠不足な人々(Poor)よりも、死亡リスクが低いことがわかります。しかし、身体活動を行っている人々(Low・Medium・High)は、睡眠状態にかかわらず運動しない人々と比べて死亡リスクが低く収まっていることが分かります。


次に、身体活動の強度や睡眠状態と心臓病による死亡リスクの関係を示したグラフを確認すると、「身体活動が活発かつ、睡眠不足な人々(High・Poor)」の死亡リスクは、「運動不足かつ、睡眠不足な人々(No MVPA・Poor)」の死亡リスクと比べて低くなっていることが分かります。


研究チームは、「今回の研究は、適切な身体活動と睡眠不足による害の減少との関連を示していますが、両者の因果関係の解釈には注意が必要です」「適切な身体活動が睡眠不足による害の軽減に直接役立つとは断言できません」と述べつつ、「この研究は、睡眠状態が悪くなっても、適度な運動によって健康への悪影響を相殺できるという希望に満ちたメッセージを提供しています」と語っています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
睡眠時間のバラツキが血糖値に悪影響をおよぼし深刻な健康問題を引き起こす可能性 - GIGAZINE

出産後の睡眠不足は4~6年にわたって母親に影響しつづける - GIGAZINE

「睡眠時間が6時間未満の人は認知症リスクが高い」ことが25年来の追跡調査により判明 - GIGAZINE

「睡眠不足で死に至るメカニズム」が解明される、死を避けるために必要なものとは? - GIGAZINE

睡眠不足の影響を調べるため実際に4時間睡眠で2週間生活し続けて認知機能をテストした結果とは? - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by log1o_hf

You can read the machine translated English article here.