世界初「磁力で呼吸する空冷システム」を搭載したPCが爆誕
高性能なPCを構築する上で悩みの種となるのが、冷却をどうするかの課題です。巨大なファンを複数備えた空冷システムは騒音が大きくなりがちですが、CPUやグラフィックボードが十分に冷却されなければPCの性能は大きく低下し、最悪破損してしまいます。PCやオーディオ機器などさまざまなデバイスを自作するYouTubeチャンネル・DIY Perksのマット氏は、磁力を使ったポンプで大量の空気をPCに送り込む奇抜な冷却システムをDIYで生み出し、その動画を公開しています。
Building the world's first 'breathing' PC - YouTube
「これが私が自作した『ふいごシステム』です」と話すマット氏。
透明な箱の中では、アクリル板が左右に動いています。PC用のクーリングシステムによく見られる冷却ファンなどがないため、一見すると一体何のための装置なのかも分かりません。
マット氏は当初、モーターで中央の板を動かす装置を考えていました。しかし、これでは騒音の問題が解決できなかったとのこと。
そこでマット氏は、チューブに埋め込んだ磁石とリニアモーターの原理を応用した方式を考え出しました。
この方式は確かに静かでしたが、勢いが弱く動きもスムーズではないという問題に直面しました。
こうした試行錯誤を経てマット氏がたどり着いたのが、チューブに封入した水で磁石を動かし、その磁力でふいごを動かすというもの。
実際に冷却システムを作るにあたっては、まず中密度繊維板(MDF)とガラス板で箱を作成し……
次に、アクリル板を2枚を貼り合わせてふいご用の板を作ります。
ふいご用の板には磁石がリング状に配置されており、これがチューブ内の磁石と磁力で固定されることで、板とチューブを接続するという仕組みです。
チューブ内の磁石は、チューブに水を送り出すポンプにより制御するようになっています。
こうして、マット氏の「ふいごシステム」は完成しました。
この冷却システムのポイントは、なんといっても静音性です。両端に取り付けられた磁石のおかげで、アクリル板はスムーズかつ静かに方向転換します。
冷却システムが完成したら、次はPCです。冷却システムと同じ要領でエンクロージャーを作り……
CPUにはAMD Ryzen 9 5950Xを採用。グラフィックボードはGeForce RTX 3080を選択し、マシンを構築しました。
こうして、世界初の「磁力で呼吸するPC」が完成しました。
マット氏は、「中がクリアに見えるので部屋に置いても重たい感じがしません」と気に入っている様子です。
実際に動かしてみます。
本体の上面にある排気口に紙片を置くと、風圧で少しだけ浮き上がるため、きちんと空気が排出されていることが分かります。
モニターにつないで温度を測ると、CPUは最高でも60度で……
GPUも62度までしか上がりませんでした。
この成果に満足したマット氏は、マシンの左右にある吸気用の空気弁などに手を加えて、さらなる改良を目指していくとのことです。
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