中国の有人宇宙船「神舟12号」が宇宙ステーション「天宮」のコアモジュールとドッキング成功、宇宙飛行士3人が宇宙滞在へ
北京時間の2021年6月17日9時22分、中国のゴビ砂漠にある酒泉衛星発射センターから、有人宇宙船「神舟12号」が打ち上げられました。打ち上げから約6時間30分後に、神舟12号は中国独自の宇宙ステーション「天宮」のコアモジュールとドッキングに成功し、宇宙飛行士3人が宇宙ステーションでの滞在を始めた映像が報じられています。
Shenzhou-12 docks with Tianhe space station module - SpaceNews
https://spacenews.com/shenzhou-12-docks-with-tianhe-space-station-module/
First astronauts enter China’s Tiangong space station after successful docking operation | South China Morning Post
https://www.scmp.com/news/china/science/article/3137330/blast-chinas-shenzhou-12-manned-mission-build-space-station
China space station: Shenzhou-12 successfully launches, sending astronauts to Tiangong station - CNN
https://edition.cnn.com/2021/06/16/china/china-manned-mission-space-launch-intl-hnk-scn/index.html
国際宇宙ステーション(ISS)のプロジェクトから締め出されている中国は、独自の宇宙ステーション「天宮」の建設計画を進めています。2021年4月29日には宇宙ステーションのコアモジュールである「天和」を打ち上げ、5月30日には無人貨物船の「天舟2号」が天和とのドッキングに成功し、4.69トンの貨物を届けました。
そして6月17日、ついに有人宇宙船の「神舟12号」が、ローンチ・ヴィークル(打ち上げ機)の長征2号Fを利用して打ち上げられました。実際に神舟12号が打ち上げられた時の様子は、以下のムービーを見るとよくわかります。
China successfully launches Shenzhou-12 manned space station mission - YouTube
打ち上げ機の長征2号Fが、猛烈な煙を噴出しながら飛び立ちます。
神舟12号は、中国にとって2016年以来の有人宇宙船打ち上げとなります。なお、2016年には有人宇宙船「神舟11号」が軌道上実験モジュール「天宮2号」とドッキングして、2人の宇宙飛行士が天宮2号内で33日間にわたるミッションを行いました。
神舟12号に搭乗したのは、元戦闘機パイロットで船長を務める聶海勝氏(56歳)と、劉伯明氏(54歳)、湯洪波氏(45歳)の3名。聶氏はこれが3回目のミッションとなるベテランであり、「このミッションは中国の宇宙ステーション建設の一環として、最初の有人飛行になります。宇宙ステーション建設の最初期工程を開始することは非常に幸運であり、私は多くの希望を持っています」と、発射前日にコメントしました。
そして打ち上げから約6時間30分後の15時54分に、神舟12号はコアモジュールの天和とドッキングすることに成功しました。以下の埋め込みムービーでは、宇宙ステーションの天和側の視点からドッキングの瞬間を見ることができます。
Docking success! About 6 hours after launch, #Shenzhou12 has successfully docked with #Tiangong space station. Astronauts will enter the space station later. We’ll keep up updated. HD Full process: https://t.co/QPtRTjj90f pic.twitter.com/bXDbuXzIZO
— CNSA Watcher (@CNSAWatcher) June 17, 2021
手前に見えているのがコアモジュールの天和、奥に見えているのが神舟12号です。
天和と神舟12号が接近し……
ドッキングに成功。
地球の管制チームが大きな拍手を送る様子も収録。宇宙飛行士はいくつかの手順をマニュアルで行ったものの、ほとんどのプロセスはコンピューターによるオートパイロット機能が実行したとのこと。オートパイロット機能を使用することにより、ドッキングプロセスが2日間からわずか数時間に短縮されたそうで、ドッキング技術の高速化は緊急時に宇宙飛行士が退避する際にも有効だと言われています。
そして、3人の宇宙飛行士は神舟12号から居住モジュールである天和へと移りました。神舟12号から天和へ移動する様子は、以下のムービーで確認できます。
Shenzhou-12 astronauts enter space station core module - YouTube
宇宙飛行士が「天和一号」と記されたコックを操作し……
天和への入口を開きました。
天和の内部はこんな感じ。大量の荷物が詰め込まれ、壁にはモニターやさまざまな装置、収納らしきスペースが並んでいます。また、3つの独立した寝室やシャワー、ジムなども備えられているそうです。
天和は長辺16.6メートル、直径4.2メートルとのことですが、内部はさらに狭いため、低重力状態ですれ違うのはなかなか困難なようです。中国は2022年末頃に天宮の完全稼働を目指しており、神舟12号に搭乗した宇宙飛行士らは、天舟2号が輸送した宇宙服を着用しての船外活動やロボットアームの性能テスト、生命維持システムの確認などの作業を行う予定とのこと。
今回、神舟12号で天和に到着した宇宙飛行士らは3カ月間の滞在を予定しており、2016年に神舟11号の宇宙飛行士らが達成した33日間の記録を抜く見込みです。船長の聶氏は、「私たちは神舟12号のミッションに向けて1年以上も準備してきており、ミッションに対応できると思います。そして、ミッションを遂行する完全な自信を持っています」とコメントしています。
中国の宇宙ステーション開発は、ISSからの締め出しを背景として急速に進展しています。ミッションの初期段階は中国人宇宙飛行士のみで行われる予定ですが、将来的には他国の宇宙飛行士を迎え入れる方針を示しています。中国の有人宇宙飛行プロジェクトで総設計師を務める周建平氏は、「(天宮への参加を)望んでいる国はたくさんあり、私たちは将来、それを受け入れるつもりです」と述べました。
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