「ベテルギウスの大減光」の原因は「温度低下と星間塵」か
地球から2番目に近い赤色超巨星であるベテルギウスで、2019年11月から2020年3月にかけて、歴史的な明るさの低下が観測されました。赤色巨星の最期を観測できるのではないかという見方を裏切るように、明るさは元に戻りました。このときの原因はさまざまな天文学者が研究を行っていて、「一時的な温度低下」と「星間塵(せいかんじん)」によるものだったという研究結果がNature誌に掲載されました。
A dusty veil shading Betelgeuse during its Great Dimming | Nature
https://doi.org/10.1038/s41586-021-03546-8
ベテルギウスの明るさの低下は2019年10月ごろから確認されていて、2019年12月には観測史上最低にまで低下。超新星爆発を起こすのではないかという予測もなされました。
超新星爆発の兆候を見せるベテルギウスが爆発すると満月級の明るさになる - GIGAZINE
しかし、予想とは裏腹にベテルギウスの「減光」は2020年2月に底を打ち、以後は明るさを取り戻しました。
超新星爆発寸前かと思われていたベテルギウスが持ち直してきている - GIGAZINE
この「ベテルギウスの大減光」については、「星の温度が低下したことで暗く見えた」という説と「星間塵がかかったことで暗く見えた」という説が唱えられてきました。
天体物理学者のミゲール・モンタルジェス博士やルーベン・カトリック大学博士課程のエミリー・キャノン氏らは、チリの超大型望遠鏡・VLTによる観測結果を用いて研究を行いました。その結果、モンタルジェス博士は「星の温度の低下」と「星間塵」の両方が同時に起きたというのが自然な結論であると述べました。
モンタルジェス博士らは、ちょうどベテルギウスが減光する前後の画像を撮影していて、比較することでどのように減光したかを調べることができました。以下はその変化を示したムービーです。
How Betelgeuse changed in brightness in 2019–2020 - YouTube
減光前、2019年1月に撮影されたベテルギウス。
次は2019年12月。すでにかなり明るさが低下している状態。
2020年1月。1カ月でさらに暗くなっています。
そして2020年3月。1月に比べると明るくなっているように見えます。
研究チームの考えでは、最初に変化があったのは2018年~2019年で、まずベテルギウスの表面に「気泡」が誕生。これが移動して冷え、星の表面に冷たい斑点が生まれます。すると、ベテルギウスを包むガスのうち、冷たい斑点に近い部分が冷え、ちりを形成。冷たい斑点部分が暗くなる上に、生まれたちりが地球とベテルギウスの間に割り込むことで、ベテルギウスの明るさをさらに抑え込むことになった、というわけです。
ヨーロッパ南天天文台が作成したイメージアニメーションはこんな感じ。あくまでイメージで、この通りだったわけではありません。
Artist’s animation of Betelgeuse and its dusty veil - YouTube
ハッブル宇宙望遠鏡も、同様の考えを示していますが、「星間塵」説に対しては「ちりが形成された直接的な証拠はない」と否定的な見解を示している研究者もいます。
Hubble Finds that Betelgeuse's Mysterious Dimming Is Due to a Traumatic Outburst
https://hubblesite.org/contents/news-releases/2020/news-2020-44
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