宇宙には反物質でできた「反物質星」が存在するかもしれないとの研究結果
反物質とは、通常の物質とは逆の電荷を持つ物質で、物質と接触すると膨大なエネルギーを放出して対消滅してしまうという存在です。そんな反物質でできた「Antistar(反物質星)」が、銀河の中に複数存在している可能性があるとの研究結果が発表されました。
Phys. Rev. D 103, 083016 (2021) - Constraints on the antistar fraction in the Solar System neighborhood from the 10-year Fermi Large Area Telescope gamma-ray source catalog
https://journals.aps.org/prd/abstract/10.1103/PhysRevD.103.083016
Stars made of antimatter could lurk in the Milky Way | Science News
https://www.sciencenews.org/article/antimatter-stars-antistars-milky-way-galaxy-space-astronomy
Stars made of antimatter could exist in the Milky Way | Live Science
https://www.livescience.com/potential-antistars-in-milky-way.html
現行の宇宙論では、「物質と反物質は宇宙誕生と同時に同じ量だけ発生した」とされていますが、もしそうであれば対消滅によりあらゆる天体は跡形もなく消滅してしまっているはずです。欧州原子核研究機構(CERN)は「物質と反物質が対消滅した際、10億分の1という確率で通常の物質が生き残り、それが現在の宇宙を形作った」と説明しているものの、なぜ物質が反物質より多く残ったのかについては不明としています。
この問題に取り組んでいたフランス・トゥールーズ天体物理学惑星学研究所(IRAP)のサイモン・デュプルケ氏らの研究チームは、国際宇宙ステーションに設置されたアルファ磁気分光器という観測機器が、反物質のヘリウムである「反ヘリウム」らしき物体を観測したことに着目。「反ヘリウムと通常の物質が接触するとある種のガンマ線が放射される」ということを手がかりに、フェルミガンマ線宇宙望遠鏡が10年間にわたり収集した観測データを解析しました。
その結果、観測対象となった約5800個のガンマ線源のうち14個が、物質と反物質が対消滅を起こした際に発生するとされる種類のガンマ線を放出していることが判明しました。
by SIMON DUPOURQUÉ(IRAP)
これらのガンマ線源は、明らかにパルサーやブラックホールといった既知のガンマ線源とは異なることから、研究チームは「今回特定されたガンマ線源は反物質星で、それに星間ガスやちりがぶつかることでガンマ線を放出しているのではないか」と推測しています。
この研究結果について、デュプルケ氏は「今回見つかった反物質星の候補が、実際に反物質星であることの確認は難しく、またその可能性も高くはありません。通常のパルサーより強力なパルサーや、非常に遠くにある銀河の核など、未知のガンマ線源である可能性の方がはるかに高いと言えます。それでも、もしこれが本当に反物質星だということが証明されれば、宇宙のはじまりに関する理論が大きく塗り替えられることになるでしょう」とコメントしました。
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