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半導体不足が「危険な領域」に突入したと専門家、チップの入荷待ちは過去最長


Bloombergが2021年5月19日に、4月時点の半導体チップの納品待ち時間が17週間に達したと報じました。チップの注文から納品までの期間が、記録が開始されて以来最長になったことで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックから持ち直しつつあった経済の回復が腰折れすると懸念されています。

Chip Crisis in ‘Danger Zone’ as Wait Times Reach New Record - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2021-05-18/wait-for-chip-deliveries-increased-in-sign-shortage-persists

Bloomberg: Chip Delays To Impact Apple's iPad And Mac Lineups
https://www.redmondpie.com/bloomberg-chip-delays-to-impact-apples-ipad-and-mac-lineups/

Chip delays reach crisis territory; Apple, Qualcomm and others are affected - PhoneArena
https://www.phonearena.com/news/chip-delays-are-now-in-the-danger-zone_id132229

Alarming Semiconductor Shortage Pushes Chip Order Wait Times Into The Danger Zone | HotHardware
https://hothardware.com/news/semiconductor-shortage-chip-order-wait-times-danger-zone

パンデミックに端を発する世界的な半導体不足は、自動車家電ゲーム機スマートフォンなど身近な電子機器の生産に広範な影響を与えており、危機的な状況は今後もしばらく続くと見られています。

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市場調査会社のSusquehanna Financial Groupは2021年5月18日に、半導体チップの注文から納品までの期間であるリードタイムが4月に17週間を記録したと発表しました。これは、2017年にデータの収集を始めてから最長で、同社はこのリードタイムを「危険な領域」と表現しています。

以下は、Susquehanna Financial Groupの発表を元にBloombergが作成した、半導体チップのリードタイムの推移を表すグラフです。2021年初頭から急激に悪化しはじめたリードタイムは、3月には16週間、4月には17週間を記録し、調査を始めた2017年以来最悪となりました。


Susquehanna Financial Groupのアナリストであるクリス・ローランド氏は報告の中で、「リードタイムが長くなると、企業は在庫の積み増しや買い占め、二重発注といった『悪行』に走ることが多いです」と指摘。供給不足を恐れた産業界の過剰反応が、事態に拍車をかけている可能性があるとの見方を示しました。

報告によると、特に需給が悪化しているのが電力管理用のチップで、4月のリードタイムは前月より約4週間長い23.7週間に達しているとのこと。また、ヘッドフォンメーカーなど一部の業界では52週間、つまり1年間の入荷待ちに直面しているところもあるそうです。


Bloombergは、「この状況をさらに複雑にしているのが、チップ製造の主要拠点である台湾でCOVID-19患者が再度急増していることです。台湾では、学校や公共施設の閉鎖、集会の規制などが行われています。企業や工場は営業していますが、台湾政府は今後、より広範な規制を検討しなければならないかもしれません」と述べました。

かねてから台湾では、水不足により半導体生産に支障が生じていると報じられています。さらに、5月上旬ごろからは、COVID-19の封じ込めで世界に先んじていた状況から一転してCOVID-19患者が急増しつつある上に、台湾の大手半導体サプライヤーのFoxconnなどが生産拠点の移転先にしていたインドでもパンデミックが再燃していることから、同国の半導体業界には大きな混乱が生じています。

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アメリカの大手IT企業・IBMのジム・ホワイトハースト社長は5月14日のインタビューで「率直に言って、チップ不足を全面的に解消するだけの生産能力が確保されるまでには数年はかかると見ています」とコメントしました。

一方、電化製品関連のニュースを専門とするHotHardwareは、「台湾の大手半導体ファウンドリであるTSMCがチップ生産能力の改善に1000億ドル(約10兆9147億円)を投じているほか、Intelも35億ドル(約3820億円)かけてニューメキシコ州の工場を拡張するなど、業界は多額の投資をしています。そのため、いずれは状況が好転するはずです」と述べました。

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in ハードウェア, Posted by log1l_ks

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