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企業の半導体在庫の中央値は5日分未満との調査結果、半導体不足解消は早くとも2022年後半になる見通し


世界的な半導体不足さまざま産業悪影響を及ぼしていることを受けて、アメリカ商務省は2021年9月に半導体メーカーや自動車メーカーなどを対象に、売上や在庫状況などの聞き取り調査を行いました。新たに発表された調査結果からは、「半導体を使用するメーカーが持つ在庫の中央値は5日未満」「工場の生産能力がボトルネック」といったことが明らかになっています。

Results from Semiconductor Supply Chain Request for Information | U.S. Department of Commerce
https://www.commerce.gov/news/blog/2022/01/results-semiconductor-supply-chain-request-information


Secretary Raimondo Announces Results of Request for Information on Semiconductor Supply Chain | U.S. Department of Commerce
https://www.commerce.gov/news/blog/2022/01/secretary-raimondo-announces-results-request-information-semiconductor-supply

Chip Shortage Means Some Companies Have Less Than 5 Days Worth of Inventory | PCMag
https://www.pcmag.com/news/chip-shortage-means-some-companies-have-less-than-5-days-worth-of-inventory

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックはいくつかの主要な半導体工場を操業停止に追いやり、サプライチェーンを混乱させただけでなく、リモートワークや遠隔学習の広がり、生活様式の変化に伴ってPCやゲーム機などの半導体需要を増加させました。民間企業は半導体不足に対処してきましたが、依然として需要が供給を上回る状態が続いており、PCやスマートフォン、ゲーム機、自動車、医療機器など多種多様な分野に悪影響を及ぼしています。


半導体サプライチェーンに関する洞察を深めるため、アメリカ商務省は2021年9月、主要な半導体メーカーや半導体を使用する消費者製品のメーカーを対象にして、半導体サプライチェーンに関する聞き取り調査を実施。合計150社以上に上る企業から回答を受けたアメリカ商務省は、2022年1月25日に調査結果を公開しました。

アメリカ商務省が報告した主要な調査結果は以下の通り。

・各メーカーによる半導体需要の中央値は、2019年から2021年にかけて17%も増加した一方で、サプライヤーは需要増加に応じて供給量を増加できていない。
・各メーカーが持っている半導体在庫の中央値は、2019年には約40日分だったものの、2021年には5日未満に落ち込んでいる。
・半導体不足を引き起こす主要なボトルネックとなっているのは、工場の半導体生産能力である。
・回答した企業は今後6カ月間で半導体不足が解消されるとは予想していない。


アメリカ商務省は「企業の半導体在庫の中央値が5日分未満」という調査結果を受けて、「これは、海外において半導体工場を2~3週間閉鎖する可能性がある事態が発生した場合、在庫が3~5日分しかない製造施設が操業できなくなり、労働者の仕事がなくなることを意味します」と指摘しています。

また、半導体不足は全ての産業で平等に起きているのではなく、一部の産業で特に集中していることも明らかになっています。アメリカ商務省によると、医療機器や自動車などに使用されるレガシーロジックチップ、電力管理設備やイメージセンサーなどで使われるアナログチップ、センサーやスイッチで使用される光エレクトロニクスチップなどにおいて、特に需要と供給のミスマッチが大きいとのこと。

アメリカ商務省が一連の半導体不足におけるボトルネックだと指摘しているのが、半導体工場の生産能力です。2020年第2四半期以降、半導体工場の稼働率は常に90%以上となっており、これ以前の水準を大幅に上回っています。


回答した企業は少なくとも今後6カ月は半導体不足が解消されないだろうと見ていますが、半導体メーカーは生産能力の増強に力を入れています。Intelは2兆円以上を投じてヨーロッパに半導体工場を建設する予定であるほか、アメリカ・オハイオ州にも半導体工場を建設するとしており、アメリカの大手半導体メーカーであるGlobalFoundriesもニューヨーク州に新工場を建設すると発表しました。一部の工場は早ければ2022年後半に稼働開始されるため、半導体不足の一部が解消される可能性があるとのこと。

今回の調査結果から、アメリカ商務省は国内における半導体生産を増強するため、国内の半導体産業に対する520億ドル(約5兆9000億円)の投資を盛り込んだ「米国イノベーション・競争法」を可決させることが必要だと主張。ジーナ・ライモンド商務長官は、「私たちが手をこまねいていれば、さらなる遅れを取ることとなります。しかし、この法案を可決して問題に対処すれば、今後数十年にわたってよい仕事を生み出し、アメリカの製造業を再建し、自国のサプライチェーンを強化することができるのです」と述べました。

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in ハードウェア, Posted by log1h_ik

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