世界的な半導体不足によって自動車や家電製品の生産が停止する事態に

2020年から続く世界的な半導体不足によって、ゲーム機や自動車など、幅広い製品の生産に影響が出ています。そんな中、複数の家電製品や自動車装備の生産が停止し、人々の生活に影響が出始めていることが報じられています。

Chip shortage is starting to have major real-world consequences
https://www.cnbc.com/2021/05/07/chip-shortage-is-starting-to-have-major-real-world-consequences.html

◆家電業界の状況
Samsungのコ・ドンジン共同CEOは、現地時間2021年3月17日に開かれた年次総会で「世界のITセクターにおけるチップの需要と供給には深刻な不均衡があります」と述べ、毎年新モデルを発表している同社のフラッグシップスマートフォン「Galaxy Note」の2021年モデルの発表を見送る可能性があることを明らかにしました。

世界規模で深刻な半導体不足が発生しているとSamsungが警告、スマートフォンの生産台数にも影響 - GIGAZINE

また、低価格帯チップの供給が減少していることや、一部の企業によるチップの大量確保の影響を受けて、トースターや食洗機といった家電製品の生産に用いるチップの入手が困難な状況に陥っています。

さらに、世界的な半導体不足はペット用シャンプーマシーンや電動歯ブラシ、洗濯機といった製品にも影響を与えています。CNBCは、「技術が進歩するにつれて、半導体はコンピューターや自動車だけでなく、歯ブラシや洗濯機といった日用品にも用いられるようになりました。世界的な半導体不足は、これらの製品にも大きな影響を与えています」と述べています。

◆自動車業界の状況
自動車業界では、世界的な半導体不足の影響で自動車装備の生産が停止する事態が発生しています。例えば、日産ではナビゲーションシステムの生産量が不足し、通常はナビゲーションシステムを搭載する自動車からナビゲーションシステムを除外していることが報じられています。

また、ピックアップトラックの生産で知られるラム・トラックスは、カメラの映像によって死角をカバーするバックミラーを提供していましたが、ラム・トラックスの広報担当者は「バックミラーの生産に必要な電子部品の供給が限られているため、各モデルへのオプション提供を停止しました」と述べ、半導体不足の影響で自動車装備の生産が停止していることを明らかにしています。

さらに、大手レンタカー企業のハーツとエンタープライズでは新車の大量購入が不可能になったことから、走行距離の短い中古車の購入に頼り始めているとのこと。ハーツの広報担当者は、「世界的なマイクロチップの不足は、レンタカー業界全体が新車を注文する能力に影響を与えました」とCNBCに語っています。

世界的な半導体不足が自動車メーカーに大きな打撃を与えている - GIGAZINE

◆半導体不足の解決にかかる時間
2021年5月3日に、世界最大の半導体ファウンドリであるTSMCが、「自動車業界のチップ不足は2021年6月ごろに解決される」と発言しました。しかし、投資家向けコンサルティングサービスを展開するPlurimi Investment Managementのパトリック・アームストロング最高情報責任者(CIO)はCNBCに対して、「2021年6月までに自動車向け半導体の供給不足が解決されるというTSMCの発言は、非常に野心的なものです」「フォードやBMW、フォルクスワーゲンから話を聞いたところ、いずれの企業もチップの入手が困難な状態が続いていると述べています」と語り、自動車向け半導体の供給不足は、今後18カ月間は続くと指摘しています。

また、ドイツのチップメーカーInfineonのラインハルト・プロスCEOは、「需要と供給のバランスを取るには、時間がかかります」「2022年には、バランスの取れた状態になるでしょう」とコメントしています。

さらに、フィアットやシトロエン、ジープなどの13ブランドで構成される世界4位の自動車メーカーであるステランティスのリチャード・パーマー最高財務責任者(CFO)は、2021年5月5日に「世界的な半導体不足による自動車業界の混乱は、2022年まで混乱は続くと考えられます」と述べています。