「飲酒は適量であっても脳を萎縮させる可能性がある」と2万5000人のデータから判明


「酒は百薬の長」という言葉がありますが、適量の飲酒であっても脳卒中のリスクが高まったり、脳の認知機能の低下を早めたりすることが判明しています。イギリスで2万5000人以上を対象に行われた研究で、アルコールの消費によって脳の一部が萎縮してしまうことが、明らかになりました。

No safe level of alcohol consumption for brain health: observational cohort study of 25,378 UK Biobank participants
(PDFファイル)https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.05.10.21256931v1.full.pdf


Any amount of alcohol consumption harmful to the brain, finds study | Alcohol | The Guardian
https://www.theguardian.com/society/2021/may/18/any-amount-of-alcohol-consumption-harmful-to-the-brain-finds-study


論文を発表したのは、オックスフォード大学精神医学科の研究医であるアーニャ・トピワラ氏らの研究チームです。今回の研究では、2万5378人の被験者の年齢、性別、学歴、自己申告による飲酒量、MRIスキャンによる脳の大きさと健康状態、病院や外来の受診情報、記憶力テストなどのデータを分析しました。


その結果、1週間当たりのアルコール消費量が多いほど、脳の灰白質密度が低くなることがわかりました。また、個人の生物学的および行動学的特性を考慮しても、アルコールによって灰白質の体積が最大で0.8%減少したことが判明しました。さらに、高血圧や高BMIなどの基礎疾患があると、アルコールと脳の健康との間の負の関連性がより強くなったとのこと。

この「0.8%」という数字は非常に小さいように思えますが、他のリスク因子よりも影響が大きいとのこと。例えば、喫煙や肥満と比較すると、飲酒の脳への影響はほぼ4倍だとトピワラ氏は説明しています。


これまでの研究では、適度な量のワインを飲むことは、ビールや蒸留酒に比べて有益であるとされていましたが、今回の研究では、アルコール飲料の種類によって脳へのリスクに違いが生じることを示す証拠は見つかりませんでした。

トピワラ氏は「飲酒量に害になる閾値(いきち)はなく、どんなアルコールでも脳に悪影響があります。また、これまで考えられていたような特定の領域だけではなく、脳のほぼ全体が影響を受けるようです」と述べました。

トピワラ氏は、ワインを飲むことが高い教育水準や経済的地位と関連していることを指摘し、「少なくともイギリスでは、適度な飲酒をしている人は高学歴で裕福な人が多く、記憶力テストでも、低学歴の人よりもはるかに良い結果を出しています」と主張しました。

シェフィールド大学のシェフィールド・アルコール研究グループの上級研究員であるコリン・アンガス氏は、「トピワラ氏らの調査結果は、多くの別の仮定よりも説得力があります」と評価し、アルコールが認知症やアルツハイマー病などにどのように影響を与えるのかを理解することが今後の課題だと述べました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
「適量」の飲酒であっても脳卒中のリスクは高まるという研究結果 - GIGAZINE

アルコールは幹細胞のDNAに不可逆なダメージをもたらすと判明 - GIGAZINE

「お酒は乳がんを引き起こす危険がある」という事実がなぜ見逃されてきたのか? - GIGAZINE

飲酒や喫煙によって脳はどのくらい余分に年を取るのか? - GIGAZINE

「適量のお酒」ですら脳の認知機能の低下を早めるとする調査結果 - GIGAZINE

in サイエンス,   , Posted by log1i_yk

You can read the machine translated English article here.