植物と共生する菌類が周辺土壌の細菌を集めて利用していることが判明
コーネル大学・ボイストンプソン研究所の研究チームが、菌類や植物が土壌の養分を吸収するのを補助する働きを持つ細菌を発見したと報告しました。この細菌を利用できれば、作物の収穫量を改善し、肥料への依存も減らすことができると期待されています。
Conserved and reproducible bacterial communities associate with extraradical hyphae of arbuscular mycorrhizal fungi | The ISME Journal
https://www.nature.com/articles/s41396-021-00920-2
Soil bacteria could improve crop yields, via fungi | Cornell Chronicle
https://news.cornell.edu/stories/2021/04/soil-bacteria-could-improve-crop-yields-fungi
土壌中の細菌が植物と共生関係を築いていることはすでに知られています。例えば、根粒菌と呼ばれる菌類は大気中の窒素を還元して植物に吸収しやすいようにし、見返りに植物から光合成産物を受ける共生関係にあります。
また、陸上植物のおよそ70%は、根にアーバスキュラー菌根菌(AM菌)と呼ばれる菌の共生体を持ち、AM菌が生成する窒素とリンを脂肪酸と交換していることがわかっています。ただし、AM菌には複雑な有機分子から窒素やリンを得るために必要な酵素がないことから、どうやって窒素とリンを得ているのかというメカニズムは不明でした。
ボイストンプソン研究所のマリア・ハリソン教授が率いる研究チームは、AM菌の他にも植物の養分吸収を助ける菌が存在するかどうかを調査するため、「Glomusversiforme」と「Rhizophagusirregularis」という2種のAM菌を用意し、単子葉植物のモデル植物であるミナトカモジグサと共に3つの異なるタイプの土壌で共生させ、観察しました。そして研究チームは、菌をミナトカモジグサと共に最大65日間成長させた後、菌糸に付着している細菌を遺伝子配列から特定しました。
その結果、ミナトカモジグサ周辺の土壌にみられる細菌の構成が、驚くべきレベルで一致していたことがわかりました。また、ミナトカモジグサから遠く離れた場所では細菌構成は大きく異なっていたとのこと。つまり、特定の細菌が、植物と共生するAM菌に引き寄せられていたというわけです。
研究チームは、AM菌がこれらの細菌を引きつけるための分子を分泌している可能性を指摘し、「逆に引き寄せられた細菌もAM菌に何かしらの影響を与える可能性も考えられます」と述べています。また、「発見された細菌群の中に有機物からリンイオンを遊離させるものがあり、これがAM菌のリン酸獲得プロセスの要となっているのではないか」と、研究チームは予測しています。
くわえて、ミナトカモジグサ周辺の土壌にみられる細菌群には、他の細菌を食べてしまう粘液細菌なども含まれていたとのこと。粘液細菌が一部の菌を食べてしまったことにより、土壌中のミネラル分が増加する可能性も指摘されています。研究チームは、「AM菌周辺の細菌群を特定することで、AM菌と細菌の相互作用を理解し、農業システムの生態学的強化をサポートするための重要な戦略を考案することが可能となります」と述べました。
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