超音波を使って新型コロナウイルスを破壊できるかもしれない
マサチューセッツ工科大学の応用力学教授であるTomasz Wierzbicki氏らが、特定の周波数をウイルスに当て続けることで、ウイルスを破壊できる可能性を示しました。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)などへの応用が期待されています。
Effect of receptors on the resonant and transient harmonic vibrations of Coronavirus - ScienceDirect
https://doi.org/10.1016/j.jmps.2021.104369
Ultrasound has potential to damage coronaviruses, study finds | MIT News | Massachusetts Institute of Technology
https://news.mit.edu/2021/ultrasound-coronaviruses-damage-0316
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を含むコロナウイルスはエンベロープという脂質膜を持つ一本鎖プラス鎖RNAウイルスです。コロナウイルスの表面には「スパイクタンパク質」と呼ばれる先端が大きく膨らんだタンパク質があり、このスパイクタンパク質が人間の細胞にある受容体に結合し、ウイルスの体内への侵入を助ける働きを持っています。
Wierzbicki氏は自身の研究分野である固体力学の観点から、超音波を使って新型コロナウイルスの殻やスパイクタンパク質に損傷を与えられるのではと考え、実際にシミュレーションを行いました。
なお、新型コロナウイルスの具体的な構造や材料特性はいまだ完全に明らかになっていないため、このシミュレーションに際しては新型コロナウイルスの単純なモデルを作成して代わりとしたとのこと。
Wierzbicki氏がウイルスのモデルに超音波を当て続けたところ、特定の圧力下において、25MHzや110MHzなどの特定の周波数を与え続けることで、モデルの構造が大きく変化することが明らかになりました。このシミュレーションにより、超音波によりウイルスを破壊できる可能性が示唆されたとWierzbicki氏は述べています。
Wierzbicki氏は微生物学者と協力し、実際のコロナウイルスで効果が見られるのか実験を行うとしています。なお、Wierzbicki氏はこのシミュレーションを「単純な理論とモデルに基づいたシミュレーションにすぎない」としていますが、この技術が確立された場合、新型コロナウイルスの治療が大幅に改善し、「携帯可能な音波発生機」を用いて人々をウイルスから保護することができるかもしれないと期待されています。
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