サイエンス

紫外線ランプで空気中の新型コロナウイルスを破壊する研究が進行中、研究者は「状況を大きく変える」と自信


世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスを紫外線を用いて破壊するという研究が進められています。同研究を主導する人物は、紫外線を用いたウイルス破壊ランプが「ゲームチェンジャーになる」と、その有用性を語っています。

Could a New Ultraviolet Technology Fight the Spread of Coronavirus? | Columbia News
https://news.columbia.edu/ultraviolet-technology-virus-covid-19-UV-light

コロンビア大学のデイビッド・ブレンナー博士は、2013年から抗生物質が効かない耐性菌を殺すために紫外線を用いる方法を研究しています。ブレンナー博士らは2018年時点で「有害な細菌を殺す能力を持ちつつ、人体にとって安全な紫外線のごくわずかなスペクトルの範囲」を発見しています。

抗生物質耐性菌の蔓延を食い止めるべく人体に無害な紫外線の活用が探られている - GIGAZINE


波長が254nmの紫外線がウイルスやバクテリアを破壊することに有効であることは、何十年も前から知られており、病院や研究所では設備や部屋の殺菌で紫外線が使用されてきました。しかし、この波長の紫外線は皮膚や目を損傷し、健康上の問題を引き起こす可能性があるため、人間に対して使用することはできません。

それに対してブレンナー博士が率いる研究チームが発見した「有害な細菌を殺す能力を持ちつつ、人体にとって安全な紫外線のごくわずかなスペクトルの範囲」は、紫外線のうち「遠紫外線C波」と呼ばれる、波長が約205~230nmのもの。人体の細胞に到達しないため、目や皮膚に照射しても問題ないとのこと。

ブレンナー博士が率いる研究チームは遠紫外線C波を連続的に低線量放出するランプを用いることで、空気中や物体表面の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を破壊することに成功。ブレンナー博士は「遠紫外線C波は『ゲームチェンジャー』になる可能性を秘めています。遠紫外線C波を用いたランプは公共の場でも安全に使用することが可能で、我々が空気中のウイルスを吸い込む前に病原体を破壊することができます」と語っています。


研究チームの開発した遠紫外線C波ランプは、既にコロナウイルスの一種であるHCoV-OC43HCoV-229Eに対して有効であることがこれまでの研究により示されています。さらに、コロンビア大学の医療センターキャンパス内にあるバイオセーフティラボ内では、遠紫外線C波がSARS-CoV-2に対して有効か否かが検証されており、実験から「有望な結果が得られている」とブレンナー博士は語っています。

ブレンナー博士によると遠紫外線C波は将来起こる可能性のあるパンデミックを強力に抑制できる可能性があるとのこと。ブレンナー博士は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を引き起こすウイルスに対するワクチンを開発する必要がありますが、同時に次に発生する新たなウイルスから人体を守る必要もあります」と語り、SARS-CoV-2だけでなくさまざまな細菌・ウイルスを破壊することができる遠紫外線C波の有用性を主張しています。

ブレンナー博士は「我々の遠紫外線C波ランプは、呼吸やせき、くしゃみにより発生する空気中のウイルスを数分後には根絶することが可能な、低コストかつ安全なソリューションです。COVID-19を引き起こすウイルスの世界的なまん延を防ぐ可能性があるだけでなく、将来登場する新しいウイルスや、既存のインフルエンザや麻疹を引き起こすウイルスを防ぐこともできます」と語りました。


遠紫外線C波ランプは公共の屋内施設などに設置することで、公共施設で拡散するSARS-CoV-2を破壊することが想定されています。また、遠紫外線C波ランプは既存の照明器具に簡単に後付けすることもできるため、病院・診療所・学校・避難所・空港・飛行機・交通機関にも簡単に導入することが可能とのこと。

なお、遠紫外線C波を照射できるランプは、記事作成時点でいくつかの企業により生産されているものの、大規模生産に移るには製造設備を拡張し、アメリカ食品医薬品局アメリカ合衆国環境保護庁からの承認を得る必要があります。ブレンナー博士によると、遠紫外線C波ランプは500~1000ドル(約5~11万円)程度と比較的安価で導入でき、大量生産されればより安価になる可能性もあるとのことです。

ブレンナー博士は「遠紫外線C波を用いるというアプローチは、COVID-19との戦いにおいて他とは根本的に異なる戦略をとっています。ほとんどのアプローチはウイルスが体内に侵入したあとの戦いに焦点を当てていますが、遠紫外線C波はウイルスが体内に侵入する前の段階に焦点を当てており、実際に拡散を防ぐ可能性がある数少ないアプローチのひとつです」と語りました。

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in サイエンス, Posted by logu_ii

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