アート

「史上最も盗まれた絵画」の波乱万丈すぎる経歴とは?


レオナルド・ダ=ヴィンチの「モナ・リザ」やゴッホの「ひまわり」など、著名な美術品は窃盗犯に狙われやすく、美術品を専門に盗んでブラックマーケットで売りさばく国際窃盗団も存在します。そんな美術品の中でも最も盗まれた回数が多いともいわれる作品「ヘントの祭壇画」を、イギリスの日刊紙ガーディアンが特集しています。

Ghent Altarpiece: 'most stolen' artwork has new €30m home in bulletproof glass | Belgium | The Guardian
https://www.theguardian.com/world/2021/mar/25/ghent-altarpiece-most-stolen-artwork-30m-glass-case


「ヘントの祭壇画」は12枚のパネルに油彩で描かれた15世紀・初期フランドル派の作品で、ベルギーのヘント市にある聖バーフ大聖堂に収蔵されています。パネルには聖母マリア、イエス・キリスト、洗礼者ヨハネ、聖霊を意味するハトと神の子羊、十二使徒やローマ教皇、聖人、殉教者たちなどが描かれています。


なお、祭壇画は折り畳みが可能で、両翼のパネルをたたむとこんな感じ。


作者はフランドル(現在のベルギー)の画家であるフーベルト・ファン・エイクですが、制作半ばで亡くなってしまったため、弟のヤン・ファン・エイクが後を継いで完成させました。フーベルトが作品をどこまで完成させていたのかについては、資料が少なすぎるため明確になっておらず、議論が分かれています。

美術史研究家のノア・チャーニー氏によれば、「ヘントの祭壇画」はこれまで13回の遭難と7回の盗難を経ているとのこと。古くはナポレオンがヨーロッパを制圧した時に略奪され、1815年にヘントに返還されました。しかしその直後、ヘントの大公が借金のかたに、パネルの一部を古美術商に売却してしまいます。また、1822年には大聖堂が火災に遭い、「ヘントの祭壇画」は燃えなかったものの救出の際に一番大きなパネルが割れてしまったとのこと。


その後、およそ90年にわたって「ヘントの祭壇画」はバラバラの状態が続いていましたが、第一次世界大戦終結後にドイツが賠償金の代わりにヘントの祭壇画のパネルを返却したことで12枚のパネルは再集結します。

しかし、1934年にパネルの一部が盗まれてしまいました。窃盗の容疑者として浮上した人物は「どこにパネルがあるかを私は知っている」という言葉を残し、急死。その結果、以下のパネルは行方不明となり、現代に伝わっているのは複製画です。


国の外交取引の材料にもなった「ヘントの祭壇画」を盗まれたことで、ドイツからはベルギーを非難する声があがり、ドイツとの関係も再び緊張状態となったため、1940年にベルギー政府は「ヘントの祭壇画」をカトリックの総本山であるヴァチカンに移すことに。しかし、ヴァチカンを抱えるイタリアがドイツ・日本と日独伊三国同盟を締結してしまったため、ひとまず「ヘントの祭壇画」はフランスの古城で保管されることとなりました。

その後、「ヘントの祭壇画」は1941年にアドルフ・ヒトラーの命令によってナチス・ドイツによって押収され、ノイシュヴァンシュタイン城に持ち込まれます。その後、ドイツの戦況が悪化すると、他の大量の美術品と共にオーストリアの岩塩窟に隠されました。ヒトラーの最後の賭けでもあったバルジの戦いでドイツ軍が敗北すると、美術品の管理を任されていた軍人がすべての美術品と共に爆死しようとしたそうですが、幸運なことに内部告発者によって連合軍へ美術品の場所がリークされ、祭壇画はダイナマイトの爆風から救われることとなりました。

波乱万丈の歴史を送ってきた「ヘントの祭壇画」は、幾度と修復を受けてきたこともあって、12枚のうち1枚は複製画となっていますが、保存状態は比較的良好。1986年からは、高さ6メートル・容積100立方メートル・価格3000万ユーロ(約38億円)のガラスケースに収納されているとのことです。

また、2012年からは大規模な修復作業が執り行なわれており、上層の古いニスの層と上塗りは完全に取り除いた状態だとのこと。フーベルトとヤンが当時描いた層から修復を行うのは、16世紀以来初めてのことだと聖バーフ大聖堂は述べています。


ベルギー・フランドル州のJan Jambon知事は「ヤン・ファン・アイクは革新的な技術で400年以上世界を驚かせてきた天才です。色彩の輝き、細部、照明、すべてが完璧です。私たちは非常に誇らしく思います。フランドル州政府がこれに貢献できたことを喜ばしく思いますし、この傑作を子どもたちや孫たち、そして願わくば近いうちに多くの観光客に見せられることを願っています」とコメントしています。

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in アート, Posted by log1i_yk

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