ネットサービス

Appleの自社プラットフォーム上の広告に対してフランスの規制当局が疑念を投げかける


Appleはユーザープライバシーの保護を掲げて広告企業による追跡を制限しようとしていますが、広告企業はCMやロビー活動などでAppleの行動に対抗しようとしています。フランスではロビー団体が当局への申し立てを行っており、その訴えを受けたフランスの個人情報規制当局(CNIL)が「Apple自身の広告慣行に問題があるのではないか」と疑念を投げかけたことが報じられました。

French data protection watchdog casts doubt on Apple’s privacy compliance – POLITICO
https://www.politico.eu/article/apple-france-french-data-protection-privacy-compliance-watchdog-cnil-doubt/

広告企業はユーザーの行動や興味関心を追跡することで、個々の消費者に最適化されたターゲティング広告を表示していますが、Appleは広告のためにユーザーを追跡することがプライバシーの侵害に当たると懸念しています。そこでAppleは、広告企業によるユーザー追跡を制限するためにiPhoneで用いられる広告識別子・IDFAの仕様を変更し、ユーザーの許可がなければIDFAを使用できなくする対策を予定しています。

Appleが広告トラッキングを制限するためのポップアップ表示をiOS 14.4のベータ版でテスト - GIGAZINE


これに対しFacebookなどの広告企業は強く反発しており、「パーソナライズした広告は宣伝費をかけられない中小企業にとって重要であり、Appleによる広告トラッキングの仕様変更は小規模ビジネスに壊滅的な影響を与える」と新聞広告で訴えたり、プライバシー保護施策に反対するCMを制作したりしています。

また、フランスでは広告関連のロビー団体が、「Appleのプライバシー保護規則はアプリ開発者にとって不公平な取引であり、Appleは支配的な立場を乱用している」と主張して、IDFAを制限する機能の導入を一時停止するように競争委員会へ申し立てました。この申し立てについて競争委員会はCNILと協力して調査を行い、「Appleのプライバシー保護施策はユーザーを保護するAppleの長期的な戦略の一部であり、支配的な立場を乱用するものではない」と判断し、機能導入を停止する要求を拒否しました。

「Appleのプライバシー保護機能を一時停止する措置」をフランス当局が拒否 - GIGAZINE


フランスの競争委員会にはこれ以外にも、「Appleは他社の広告ネットワークを制限しながらも、自社の広告ネットワークを優遇している」との申し立ても寄せられています。

「Appleは他社の広告を制限しながら自社の広告を優遇している」とロビー団体が規制当局に申し立てる - GIGAZINE


ロビー団体のFrance Digitaleは、規制当局に寄せた申し立ての中でApp StoreやApple Newsに対してAppleの広告ネットワークが表示する広告が特に問題だと指摘しました。これらの広告はあくまでもファーストパーティによるものであり、サードパーティの広告ネットワークに用いられるIDFAを制限する施策に反してはいませんが、France Digitaleは「Appleは誰が『パートナー』で誰が『サードパーティー』であるかを任意の方法で選択する権利を持ちます」と主張。また、iPhoneではデフォルトでAppleの広告機能が有効化されており、ユーザーに対して十分に周知されていない点も問題だと訴えています。

Appleはこの主張に対し、「申し立ての主張は明らかに虚偽です」と反論。Appleが配信する広告はダウンロードしたアプリ、年齢、居住する国または都市、性別などの特性を元にユーザーをグループ化して最適化されるものであり、個々のユーザーを識別するものではないと主張しました。


ところが、政治関連メディアのPoliticoが入手したCNILの内部文書では、「iPhoneではデフォルトでAppleのターゲティング広告が有効化されており、事前にユーザーの同意を得ていない点には問題がある」と指摘されていたとのこと。CNILは事態の調査を行う立場ではなく競争委員会に情報を提供する立場であるため、文書の内容は慎重なものだったそうですが、この文書は競争委員会の決定に影響を与える可能性があるとPoliticoは述べています。

Appleの広報担当者はPoliticoに対し、「プライバシーは当社のプラットフォームで販売される広告に組み込まれています。パーソナライズされた広告のためにAppleの限られた自社データを使用することをユーザーが拒否できるようにすることで、自らに高いプライバシー水準を課しています」とコメントしました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
「Appleのプライバシー保護機能を一時停止する措置」をフランス当局が拒否 - GIGAZINE

「Appleは他社の広告を制限しながら自社の広告を優遇している」とロビー団体が規制当局に申し立てる - GIGAZINE

Appleが広告トラッキングを制限するためのポップアップ表示をiOS 14.4のベータ版でテスト - GIGAZINE

Appleのプライバシーポリシー変更が想定とは真逆の「コンテンツの要塞」を作り出す - GIGAZINE

Appleが広告業界のエコシステムを一転させる日が刻々と近づいている - GIGAZINE

in ネットサービス, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.