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駆け出しのスタートアップが投資家にがっつりアピールするためのプレゼンの仕方とは?


スタートアップがビジネスで成功を収めるには、いかに投資家やベンチャーキャピタルにアピールして資金を呼び込むかが鍵になります。「スタートアップがベンチャーキャピタルから投資を集められるまで育てる」ことに主眼を置いた異色のベンチャーキャピタル・Yコンビネータ(YC)が、「駆け出しのスタートアップが優れたプレゼンをするためのポイント」を解説しています。

How to Build a Great Series A Pitch and Deck: Series A | Y Combinator
https://www.ycombinator.com/library/8d-how-to-build-a-great-series-a-pitch-and-deck


YCは、最初に投資機関から資金を調達をするシリーズAラウンドのスタートアップを支援することを目的とした、その名も「シリーズA」というプログラムを手がけています。そのシリーズAのプログラムマネージャーを務めるジャネール・タム氏は、「起業家たちに何百時間もプレゼン資料の作り方をレクチャーした結果、私は同じアドバイスを繰り返していることに気がつきました」とコメント。豊富な経験に基づく、プレゼン資料の作り方を以下のようにまとめました。

◆最初に「一体なぜ投資を受けるのか」をはっきりさせる
プレゼン資料を作成するにあたっては、「そもそも一体なぜ投資を受けたいのか」を明確にする必要があります。そこでタム氏は、プレゼンの方向性を固める上で必要な心がけとして次の6点を挙げました。

01.相手は顧客ではなく投資家である
シリーズAのプレゼンはあくまで投資家のためのプレゼンであり、顧客向けのプレゼンと取り違えてはならない、とタム氏。投資家たちには、スタートアップがソリューションをもたらそうとしている問題に遭遇した経験がない可能性があり、事業がどうやって問題を解決させるかを直感的に理解できないおそれもあります。そのため、プレゼンには「ターゲットとなる顧客が直面している課題」と、「自分のサービスがそれをどう解決に導くのか」という2つの視点を盛り込む必要があるとタム氏は述べています。

02.プレゼンは明確かつ簡潔にまとめる
投資家がビジネスを最短の時間で理解できるようにするには、資料をできるだけ分かりやすくしなければなりません。タム氏は「最高のプレゼンは、簡単な言葉を使い、専門用語を避けるものです。どうしても専門用語が必要な場合は、最初にその意味を簡潔に定義します」と述べました。

03.かいつまんで話す
プレゼンでは、ビジネスの内容を全て投資家に理解させることではなく、投資家を引きつけることが重要になります。そのための時間配分は「プレゼンが15分~20分、質疑応答が40分~45分」がベストだとのことです。

04.まず実績から切り出す
タム氏は「口約束だけでよかった創業前のシードラウンドとは違い、シリーズAラウンドは手厳しいものです」とコメント。既に事業が始まっているスタートアップには実績が求められるため、「何をしたか」から切り出すべきだとタム氏は指摘しています。

05.次にどこに向かうのかを話す
実績を示した後は、今後ビジネスがどこに向かうのかの青写真を投資家に見せる必要があります。特に、ベンチャーキャピタルの投資家は膨大なリターンを期待しているので、自分のスタートアップならそれが可能だと投資家に思わせなくてはなりません。

06.資金調達が最後の関門だと思わせる
プレゼンでは、会社の力不足や製品の品質の低さではなく、資金不足こそがスタートアップの成長を妨げていることを明確にする必要があるとのこと。プレゼン資料にもそのことがにじみ出るように工夫し、資金をどう使って次のレベルに到達するかを示せるようにするべきだとタム氏はアドバイスしています。

◆スライドの構成(全10~15ページ)
タム氏によると、シリーズAのプレゼンに使うスライドは、添付資料抜きで通常10~15ページのボリュームになるとのこと。そして、「もしYCがシリーズAのプレゼンをするスタートアップだったら」を例に、資金調達を成功させるスライドのサンプルを次のように示しました。

01.タイトル(1ページ)
YCのスライドの最初の1枚目が以下。中央に大きくYCのロゴが配置され、その下に「シリーズAの資金調達を支援します」と、事業内容が簡潔に書かれています。


02.トラクション(ティザーとして1ページ)
2枚目には、投資家の関心を引きつけるためのトラクション(けん引力)として、プレゼンに使われているデータを簡潔にまとめたグラフが掲載されており、「当社は四半期ごとに36社の企業のシリーズAを支援し、前四半期比78%の成長を遂げさせました」とのキャプションが添えられています。


03.問題提起(1ページ)
3枚目は、ビジネスが解決を目指している課題を提示します。YCの場合は「起業家には、シリーズAで資金調達をする方法に関する優れたガイダンスが欠けています。具体的には(1)調達の時期、(2)投資家と関係を築く方法、(3)プレゼンの方法と資料作り、(4)効果的に資金調達プロセスを実行する方法が足りません」とのことです。


04.解決策(1ページ)
4枚目は、前述の課題を解決する方法が書かれています。YCの場合は、「起業家が資金を調達する各段階で明確なガイダンスを提供します。具体的には(1)シリーズAの最優良事例ガイドを作成する、(2)いつ・何を仕上げる必要があるかをアドバイスする、(3)プレゼンとスライドのためのワークショップを催す、(4)レバレッジを最大化し、プロセスにかかる時間を最小限にするアドバイスを行う」となります。


05.トラクション(数ページ)
次に、最初にティザーとして示したトラクションの詳細を数ページで提示して、内容を掘り下げます。


06.マーケット調査(1ページ)
続いて、スタートアップが業界に与えるインパクトや、市場での価値を数字で簡潔に示します。


07.競合相手(1ページ)
競合他社や先行するサービスを挙げた上で、それらに対する自社の優位性をアピールします。


08.ビジョン(1ページ)
ここでは、スタートアップがどのようなビジョンを掲げているかを示します。YCの場合は「価値ある会社を興す全ての起業家が、シリーズAでの資金調達を成功するようにします」となります。


09.チーム(1ページ)
続いて、スタートアップの中心となるメンバーを紹介します。以下のスライドには、YCのパートナーである個人投資家のアーロン・ハリス氏(左)とタム氏(右)の経歴が掲載されています。


10.資金の用途(1ページ)
最後に、無事資金を調達したらそれをどのように使うかを明示します。


11.質疑応答のための付録(必要なだけ)
特にサンプルはありませんが、この後の質疑応答の時間で話のネタになるような資料を仕込んでおくといいとのこと。例えば、よくある質問のリストや、その質問への回答に視覚的な情報が必要な場合のスライドなどがこれにあたります。また、今後の財務状況を予測する資料や、上記の「資金の用途」をより詳細に述べる資料も効果的です。

タム氏は「質疑応答はプレゼンのクライマックスであり、全てのスライド資料はこの時のために作ってきたようなものです。しかし、しばしば質疑応答のないプレゼンをしてしまうスタートアップがあるのも事実なので、これを読んでいる人は必ず質疑応答の時間を入れるようにしてください」と述べました。

◆資料のデザインに関する注意点
資料は美しさよりも、分かりやすさに力点を置くべきとのこと。タム氏は「私の経験上、多くの場合はできるだけシンプルで素朴な資料作りを心掛けると、分かりやすいスライドになります。特に、要点から気がそれてしまうようなものは避けるべきです。また、派手で複雑な図や、見た目はいいものの何も説明していないカラフルな画像が使われることがよくありますが、これもNGです」と述べています。

◆ビデオプレゼンをする上での注意点
近年では、会場に投資家を招いてプレゼンを発表するのではなく、オンラインでのプレゼンもよく行われます。そこでタム氏は、オンラインビデオ会議ツールのZoomなどでプレゼンをする上で気をつけなければならない点を、以下の通りまとめました。

・PCの画面ではなく、カメラを見ること。
・照明に気をつけること。例えば、TikTokユーザーがよく使うリングライトが有用な場合があります。
・音声の設定を適切にしておくこと。落ち着いて質疑応答ができるように静かな環境を用意するのもこれに含まれます。
・話すのは原則として1人にすること。マイクの切り替えなどはトラブルの元になるため、話者は1人にすると無難です。
・録画しておくこと。後で見て、自分のプレゼンを振り返るのに役立ちます。特に、自分で思っているより覇気がない話し方になっていることが多いそうです。
・台本を用意しておくこと。最低でも箇条書きの台本を用意しておくべきです。また、一息で長いフレーズを話さなければならない時は、途中で詰まったりかんだりしないように、あらかじめそのセリフを文章にしておくと効果的です。

プレゼン資料が完成した後は、エンジェル投資家やすでに資金調達に成功したほかの起業家に観客になってもらって、プレゼンの練習をするといいとのこと。また、プレゼンが終わった後にもプレゼンを振り返って、投資家が食いついた場面や逆にしらけてしまった部分を特定し、プレゼンをブラッシュアップしていくことをタム氏はアドバイスしました。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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