中世ドイツの商人となって交易網を形成して誰よりも名声を得ることをめざす「ハンザ・テウトニカ」プレイレビュー
「ハンザ同盟」は12世紀~16世紀の北ドイツに存在した100以上の都市による商業同盟で、中世ヨーロッパ北部の経済圏を支配しました。そんなハンザ同盟をモチーフに商人や交易人を使って交易路を構築するボードゲームの拡張版を同梱した「ハンザ・テウトニカ BIG BOX」が、2021年1月18日にホビージャパンから登場したので、実際にプレイしてみました。
ハンザ・テウトニカ BIG BOX | ANALOG GAME INDEX
http://hobbyjapan.games/hansa_teutonica_bigbox/
◆内容物
ハンザ・テウトニカ BIG BOXのパッケージはこんな感じ。
対象年齢は12歳以上、プレイ時間は45~90分、プレイ人数は3~5人を想定。
内容物はルール説明書と、プレイヤーボードとなる「書き物机」が5枚。
ゲームボードは3種類。
広げるとこんな感じ。左のゲームボード2枚は北ドイツを描いた「ハンザ同盟」「東ハンザ同盟」、一番右にある縦長のゲームボードはブリテン諸島の地図が描かれた「ブリタニア」です。
木製のトークンは立方体型の交易人トークンと円柱型の商人トークンの2種類で、赤・青・黄・紫・緑の5色が用意されています。
厚紙製のボーナストークン
熟練者向けの皇帝の恩恵トークンと任務カード9枚
点数計算用の得点記録用紙。
◆ゲーム準備
まずは「ハンザ同盟」をプレイ。ハンザ同盟のゲームボードは「2~3人向け」と「4~5人向け」で裏表になっています。今回は5人でプレイします。
各自に書き物机を配布します。書き物机には5つのゲージがあり、それぞれ最小の数字を除いたすべてのマスに、交易人トークンと商人トークンを以下のように配置します。
さらに商人トークンを1つ、交易人トークン複数個を、手持ちの「個人サプライ」として配布します。最初に配られる手持ちの交易人トークンの数はスタートプレイヤーが5個で、時計回りに6個、7個、8個、9個と1つずつ増えます。
そして、交易人トークンを1個ずつ、ゲームボードの周囲にある名声点トラックの「0」のマスに置きます。
残りのトークンは「全体ストック」に配置。
ボーナストークンは裏返した状態で積み重ね、ゲームボードの横に配置。
そして、黒い立方体の「完全都市トークン」を、ゲームボード右上にある完成都市トラックに置きます。
これで準備完了。
◆5人で「ハンザ同盟」をプレイしてみた
ゲームは、スタートプレイヤーから時計回りに手番を回していきます。ゲーム終了後、最も名声点を多く集めたプレイヤーが勝利となります。
手番では、プレイヤーは2回まで規定のアクションをプレイすることができます。アクションの回数は書き物机の右上にある「Actions」と書かれた封筒の数字が上限。ゲーム序盤は2回までしか行動できません。
プレイヤーがまずやることは、都市と都市をつなぐ「交易路」のマスに交易人トークンか商人トークンを配置すること。都市と都市の間にある交易路のマスすべてにトークンを設置して、「交易路の確立」を宣言することで、都市に交易所を設立したり都市の恩恵を受けたりすることができます。
交易路のマス数は2つ・3つ・4つと場所によって異なります。たとえば、カンペンとオスナブリュックを結ぶ交易路の場合はマスが2つだったので、黄プレイヤーは2アクション使い、個人サプライの交易人トークンをマスに1つずつ設置し、一気に交易路を埋めました。これでアクションを使い切ったので、手番は次のプレイヤーへ回ります。
そして次に手番が回ってきた時、黄プレイヤーは1アクションを消費して「交易路の確立」を宣言。交易路に置いた2つの交易人トークンを回収し……
そのうちの1つをオスナブリュックの一番左のマスに置いて「交易所を設立」。残るトークンは全体ストックへ戻します。なお、「交易所を設立」は「交易路の確立」アクションに含まれる行動で、設立するかどうかは任意です。
交易所を立てるメリットは、名声点をゲットできるというわけです。例えば、ヴァールブルクとゲッティンゲンをつなぐ交易路のマスすべてに交易人トークンを設置した青プレイヤーは、交易路の確立を宣言しました。交易路につながる2つの都市のうち、ゲッティンゲンにはすでに緑プレイヤーが交易所を立てています。
そのため、緑プレイヤーには名声点が1点追加されます。都市に交易所を立てておくと、その都市につながる交易路が確立するたびに名声点が1点入るので、貴重な得点源になるというわけです。
都市の中には、恩恵として特別な効果を持つものもあり、交易所を設立する代わりに都市の恩恵を受けることができます。例えばゲッティンゲンは、都市の横に封筒を持った男性の絵が描かれています。
ゲッティンゲンの恩恵を受けると、書き物机の封筒が描かれたアクションのゲージから、一番左の交易人トークンを外して自分の個人サプライに加えることができます。これでアクションのゲージが「3」の数字になったので、1手番に3回までアクションを取ることができるようになります。こうやって都市の恩恵を受けることで、自分の能力をアップデートすることができ、さらに手持ちのトークンを増やすことができるというわけです。
リューベックには、金貨袋を持った男性の絵が描かれています。ハンブルクとリューベックを結ぶ交易路を確立し、リューベックの恩恵を受けると……
書き物机の右下にある、金貨袋が描かれた銀行のゲージから交易人トークンを1つ取り除くことができます。この銀行のゲージは、1回のアクションを消費して全体ストックから補充できるトークンの数を表わしています。
例えば、紫プレイヤーはリューベックの恩恵を何度も受けることで、銀行のゲージにある交易人トークンをすべて取り除くことに成功。
銀行のゲージを最大限までアップデートすると、一度に全体ストックから補充できるトークンの数が無制限になります。ゲームボード上に置いたトークンは最終的に全体ストックに戻っていき、使用可能なトークンが個人サプライからなくなってしまうのですが、補充が無制限になることでトークンの残り数をほぼ気にしなくてもよくなります。
また、書き物机の左下にあるPrivilegium(特許状)のゲージは、アップデートすると「トークンを置けるマスの色」が解放されます。
例えばオスナブリュックには、すでに黄プレイヤーが交易所を設立しています。このオスナブリュックに青プレイヤーが交易所を立てるためには、黄プレイヤーの交易人トークンが置かれている右の「オレンジ色の四角マス」に交易人トークンを設置しなければなりません。このオレンジ色のマスにトークンを設置するためには、特許状のゲージをアップデートする必要があります。なお、都市のマスにトークンが置かれているとき、一番右にあるトークンを置いているプレイヤーが都市を「支配」しているとみなされます。
特許状のゲージをアップデートするには、都市シュターデにつながる交易路を確立する必要があります。緑プレイヤーは西からシュターデに伸びる交易路を確立しようとしましたが、1マスだけ青プレイヤーが商人トークンを置いているため、確立することができません。
そこで、緑プレイヤーは1アクションを消費して、青プレイヤーの商人を追い出すことにしました。これで、緑プレイヤーは交易路の3マスすべてにトークンを置くことができ、交易路を確立することができます。
ただし、他のプレイヤーのトークンを追い出すためには、コストとして手元の個人サプライからトークンを全体トークンに支払わなければなりません。コストは交易人トークンだと1で済みますが、商人トークンは2。わずかな差ですが、個人サプライの量によってはかなり厳しい選択を迫られることに。
さらに、追い出された青プレイヤーの商人トークンは全体ストックから追加で2つトークンを得て、元いた交易路と隣接する交易路にただちに置き直します。今回の場合は、以下の画像の①~③のルートにトークンを置き直すことが可能。
そんなわけで、フローニンゲンにつながる交易路の3マスすべてに一気にトークンを置くことに成功。交易路から追い出されると、それはそれでかなり大きなメリットを得られるので、他プレイヤーから追い出されることを想定してトークンを置くことも非常に重要な戦略の1つです。
フローニンゲンにつながる交易路を確立することで、青プレイヤーは書き物机下部中央にある図書館ゲージの商人トークンを1つ取り除くことができました。プレイヤーは1アクションを消費してトークンを移動させることができるのですが、この図書館ゲージは一度に移動可能なトークンの数を示します。
例えば以下の画面では、ハノーファーとリューネブルクの間の交易路に1つ、ミンデンとブルンズウィクの間の交易路に2つ、青プレイヤーの交易人トークンがあります。このままではどちらの交易路も確立は厳しいので……
青プレイヤーは1アクションを消費して、ミンデンとハノーファーの間にある交易路に3つの交易人トークンを移動させました。これで、ハノーファーに交易所を設立することができます。
しかし、青プレイヤーがハノーファーに交易所を設立した直後、ハノーファーとブレーメンの間の交易路を確立した黄プレイヤーがハノーファーに交易所を設立。なお、交易路確立時に名声点を得られるのは、都市を「支配」しているプレイヤーのみ。ハノーファーを黄プレイヤーが支配したことで、今後、ハノーファーとどこかを結ぶ交易路が確立されても、青プレイヤーは名声点を得ることができなくなりました。
交易路の中には、ボーナスマーカーが配置されているものもあります。ボーナスマーカーは自分の手番であれば1回だけ特殊な効果を発動できるアイテムで、配置されている交易路を確立すると報酬としてゲット可能。例えば以下のトークンは、「都市の交易所の順番を入れ替えることができる」というもの。このボーナスアーカーを使えば、ハノーファーでの交易所の位置を入れ替えることで、黄プレイヤーにかわって青プレイヤーが交易路確立の名声点を獲得できるようになります。
マスがすべて埋まった都市は「完全都市」となります。完全都市ができたら、左上の完全都市トラック上の黒いトークンを1つ右に動かします。この黒いトークンが一番右にきた状態、すなわち完全都市が10都市生まれた時点でゲームは終了。
そんなこんなでゲームは進み……
緑プレイヤーが名声点20点をゲット。プレイヤーのうち誰かが名声点20点をゲットしても、ゲームは終了します。
ゲームが終了したら、名声点の総計を計算します。名声点は名声点トラックの点数のほか、書き物机を最大限までアップデートした能力、獲得したボーナスマーカーの枚数、特定の都市や交易路でゲットできる名声点、支配している都市の数、最大交易網による名声点を加算します。
交易網は、交易所を設置した都市をつなぐ交易路の数を示します。例えば緑プレイヤーの最大交易網は、ミンデン・バーダーボルン・ヒルデスハイム・ゴスラーの4都市を3本の交易路でつなぐ以下の交易網でした。そのため、緑プレイヤーはこの交易網で3点を獲得できました。
なお、ゲームに慣れてきたら、「任務カード」を各プレイヤーに配布することで、追加の名声点をゲットすることもできます。例えば以下のカードは、アルンヘイム・ベルレンベルク・ハノーファーの3都市に交易所を設立できれば5点ゲットできる個人目標となっています。
また、未使用のボーナストークン2枚と交換することでゲットできる「皇帝の恩恵」は、非常に強力な効果を持つアイテム。例えば以下の皇帝の恩恵は、常にアクション回数が+1されるというもの。皇帝の恩恵は、使いようによってはゲーム内容に大きな影響を与えるので、思わぬところで大どんでん返しを生み出すことも。
◆「ブリタニア」をプレイしてみた
さらに、拡張版となる「ブリタニア」をプレイしてみました。
拡張版とはいえ、基本的な遊び方はまったく一緒。ただし、ブリタニアは「イングランド」のほかに、青色の「スコットランド」と……
茶色の「ウェールズ」が設定されています。
スコットランドとウェールズは、初期状態では交易路にトークンを置くことはできません。ただし、それぞれの監督府がある都市を支配していれば、1手番に1つだけトークンを設置できるようになります。たとえば、赤プレイヤーはウェールズの監督府があるカーディフに交易所を設立したことで、ウェールズの交易路のマスに1つずつトークンを配置できるようになりました。
なお、ロンドンを支配すれば、ウェールズにもスコットランドにもトークンを設置できるようになります。加えて特許状のゲージに恩恵を受けられることもあり、ロンドンを支配することはまさにブリタニアの支配に直結するといえます。そのため、赤・緑・黄のプレイヤーがロンドンに競い合って交易所を設立しました。
そんな感じで、どんどんブリタニアの交易路が開拓されていきます。
最終的に1位になった緑プレイヤーは、ブリタニア南部で交易路を開拓し、交易網を拡大していったのが特徴。特別な名声点をゲットできるブリマスも支配し、交易路の確立による名声点を大量に稼いだのが勝利に貢献しました。
今回、手番の時間管理を行うアプリ「Timer for Board Games」で1手番の持ち時間を3分に設定してプレイしましたが、初回で1ゲームにだいたい3時間かかりました。やや複雑なルールとゲームのプレイ感覚に慣れるためには、最初にチュートリアルとして1~2ゲームプレイするのがおすすめです。
交易路にトークンを設置して都市を支配していくためにできることは数多いのですが、あれやこれや様々なことに手を出していると、悩みが連鎖反応的に生まれていくのが楽しいところ。書き物机のアップデートを怠ると明らかに勝てなくなってしまうので、積極的に都市の恩恵を受けたいものの、都市の恩恵を受けるということは交易所の設立が遅れてしまい、名声点が得られない……などのジレンマが大きな魅力となっています。
ハンザ・テウトニカでは、トークンが追い出されると大きなメリットを受けるため、他人の動きを常に意識してトークンを設置していく必要があります。つまり、プレイヤーが積極的に相手の動きを妨害しにいく攻撃的なゲームともなっています。そのため、プレイ中は場がかなりギスギスしてしまう可能性もあります。また、難度はかなり高いので、ボードゲーム初心者には少し厳しい内容といえます。
なお、厚紙製の書き物机が湿度によって反ってしまい、小さい衝撃で簡単に動いてしまうため、書き物机の下にすべり止めを敷くなどの対策をするのがよさげです。
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