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WaymoのCEOが「テスラが完全な自動運転車を生み出すことはないだろう」と発言

by Web Summit

2020年3月に総生産台数が100万台を突破したアメリカの電気自動車メーカー・テスラは、同年7月に時価総額がトヨタを上回り、同社を率いるイーロン・マスクCEOは世界一の富豪に躍り出ました。そんな飛ぶ鳥を落とす勢いのテスラについて尋ねられたGoogle傘下の自動運転車メーカー・Waymoのジョン・クラフチックCEOが、「テスラがライバルになることはないだろう」と発言したと報道されています。

Waymo CEO dismisses Tesla self-driving plan: “This is not how it works” | Ars Technica
https://arstechnica.com/cars/2021/01/waymo-ceo-tesla-is-not-a-competitor-at-all/

ドイツのビジネス雑誌・Manager Magazinのインタビューを受けたクラフチックCEOは、その中で「テスラは我々にとって、全く競合相手ではありません。現状の戦略では、テスラが完全自動運転車システムを開発する可能性は低いでしょう」と述べました。

by Alexander Migl

クラフチックCEOは自社を、「完全自動運転システムを開発している企業」と位置づけている一方で、テスラについては「優れた運転支援システムを開発している自動車メーカー」とみなしてると、インタビューの中で語っています。

クラフチックCEOの発言は、両社の自動運転技術に対する姿勢の違いを反映したものです。IT系ニュースサイト・Ars Technicaによると、マスクCEOは運転支援システムを改良しながら完全自動運転車システムを実現させていく考えだとのこと。しかし、クラフチックCEOは「いつか魔法のように完全な自動運転車システムになるまで支援システムを開発し続ければよいというのは誤りです」と述べています。


完全自動運転車システムを「運転支援システムの延長線上にある」と考えているテスラは、2016年からカメラやレーダーなどのハードウェアを搭載した車を開発するとともに、「後日配信される完全自動運転車システム(FSDオプション)」に数十万円の価格を付けて販売しています。

当初2018年の完成を予定されていたFSDオプションは、度々の延期を経て2020年にリリースされました。しかし、このFSDシステムは実車をレビューした消費者団体のコンシューマー・レポートから、「完全自動運転車とは名ばかりで80万円超の価値はない」との評価を受けています。

「テスラの完全自動運転は名ばかり」で80万円超の価値ナシとコンシューマー・レポートが評価 - GIGAZINE


Ars Technicaは「もちろんテスラは問題の修正に取り組んでいるため、FSDシステムは間もなく運転席に誰もいない状態でも完全に動作するようになるでしょう」と述べました。

このように、テスラは運転支援システムの改良によって完全自動運転車を実現させようとしていますが、Waymoはこのアプローチは危険だと見なしています。2010年代初頭に自動運転システムの開発に着手したGoogleの開発者は、予想よりも早くドライバーがシステムに頼り切りになることに気付きました。というのも、システムを注意深く監視するよう厳命されていたにもかかわらず、テストに参加したドライバーは携帯電話を見たり、化粧をしたりしてしまっていたとのことです。


このことから、「運転支援システムが発展すればするほど、ドライバーは注意を怠るようになり、ソフトウェアのミスした時に備えられなくなる」と考えるようになったWaymoは、運転支援システムを改良していくアプローチを放棄。訓練を受けたプロのドライバーによる監視の下で、自動運転タクシーサービスを開発する方向にかじを切りました。

クラフシック氏によると、Waymoは自動運転システムの技術的な作業をほぼ完了させており、今後数年間のうちに商業展開することも射程に捉えているとのこと。一方、マスクCEOはWaymoのアプローチに対して、「高度に専門化されてしまっている」と述べて、一般に浸透させられるようなスケールアップは難しいのではないかとの見方を示しています。

Ars Technicaは「Waymoのクラフシック氏と、テスラのマスクCEOのどちらの理論が正しいかは、今後数年以内に明らかになるのではないでしょうか」と述べました。

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in ソフトウェア,   乗り物, Posted by log1l_ks

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