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テスラとWaymoは自動運転車実現における最重要項目「データ」をどのように扱っているのか


2020年代の実現に向けて開発が進められる自動運転車の実現のためには、膨大な量のデータから有用な内容を解析して抽出し、人間にかわって判断を行う人工知能(AI)に多くの事を学習させる必要があります。自動運転車実現に向けて最先端を走っているといわれるのは、イーロン・マスク氏がCEOを務めるテスラと、Googleの兄弟企業であるWaymoの2社ですが、両社の開発の取り組み方には大きな違いが存在しています。

Tesla vs. Waymo: who’s winning the race for self-driving cars - The Verge
https://www.theverge.com/transportation/2018/4/19/17204044/tesla-waymo-self-driving-car-data-simulation

人間のドライバーは、同じ人間のドライバーがどのように行動するのかをあらかじめ予測して理解することができます。しかし一方で、コンピューターが判断を行う自動運転車の場合は、大量のデータを基にした学習によってその能力を身に付けることとなります。その技術開発の最先端を行っているといえるのが、Google傘下のWaymoとテスラです。

両社とも、自動運転を可能にするためのデータを日々蓄積していますが、そのアプローチは全く異なっています。すでに何十万台という市販車を世に送り出してきたテスラは、各車両に搭載されたコンピューターを通して実世界での走行データを日々取得しています。一方、Waymoは主にパワフルなコンピューターで実在世界を再現した環境で膨大な回数のシミュレーションを行うことで、人工知能(AI)に学習を行わせています。


自動運転車が普及することで、交通事故で亡くなる人の数を減らすことができると言われていますが、メリットはそれだけにとどまりません。自動運転車が実現することで、金銭面でも普及の動機になる要因があるといわれています。Intelは、2030年には自動運転車が年間8000億ドル(約82兆円)の利益を生み出すことになるとみており、さらに2050年には年間7兆ドル(約750兆円)規模に拡大すると予測しています。

テスラは、顧客が走らせている自動車から取得した多くのデータを使って自動運転車の開発を進めています。実際にテスラが取得してきたデータの総走行距離数を把握することは困難ですが、2016年当時に自動運転車部門を率いていた人物の発言によると、テスラでは7億8000万マイル(約13億km)分の走行ログを取得しており、そのうち1億マイル(約1億6000万km)はオートパイロット機能による走行時のデータとなっているとのこと。また、同年の夏にはマスク氏が、1日あたり300万マイル(約480万km)分の走行データを取得していることを明かしていたほか、翌2017年7月には走行データの合計距離が50億マイル(約80億km)に達したことを明らかにしていました

By mariordo59

ログデータの大部分はオートパイロット走行時のものではありませんが、テスラの車両は手動運転時でも周囲の状況を情報収集してテスラのサーバーにアップロードしています。「シャドーモード」と呼ばれるこの機能により、テスラは何億kmにも相当する実社会での走行データを活用できるようになっています。

テスラに匹敵する規模のデータを持っているのは、2018年初頭にシミュレーションでの総走行距離が50億マイル(約80億km)に達したことをTwitterで公表したWaymoだけだとのこと。またWaymoは500万マイル(約800万km)分の公道上での自動運転データを取得していることも明らかにしています。テスラとWaymoがこれまでに取得してきた実走行距離数は、同様の自動運転車を開発する他社の実績を全て合計した数値よりも大きなものとなっているとのこと。

Waymoが取得している自動運転のデータは、同社が所有する500~600台ともいわれる実験用車両から取得されたものに限定されており、すでに30万台もの車両が世界中を走り回っているテスラに比べると、小規模なものです。また、Waymoの車両が走行を認められているのはテキサス州やカリフォルニア州、ミシガン州、アリゾナ州などに限られています。一方、Waymoに比べて膨大なデータを取得しているテスラですが、そのデータは「半自動運転」状態のものであるために、純粋な自動運転機能のためのデータというわけではないという欠点があります。Waymoは今後、実走行車両を大幅に増加させることで、さらに多くのデータを取得する予定ですが、それまではコンピューターシミュレーションでのデータ取得がメインにならざるを得ない状況があります。


また、両社の間には取得しているデータの種類に違いが存在しています。Waymoは無数のレーザー光を照射して対象物との距離を把握するLIDARを各車両に3基搭載するほか、5基のレーダーセンサーと8基のカメラを搭載しています。一方のテスラも、8個のカメラと12個の超音波センサー、前面カメラを搭載していますが、LIDARは搭載していません。LIDARに関してはマスクCEOも非常に重要なものであることを認めていますが、LIDARはまだまだ高価でサイズも大きく、耐久性でも解決しなければならない課題があるなど、一般消費者向けの製品に採用するまでにはまだ少し時間がかかる状況です。しかしもし、テスラがLIDARなしの自動運転を実現したとしたら、それはテスラの大きなアドバンテージになり得るともいえます。


取得するデータと同じぐらい重要なのが、いかにデータを処理して学習に反映させるかという点にあります。Waymoはこの点でアドバンテージを持っていると言えます。Waymoではシミュレーション上で得られたデータを解析してAIを学習させ、その状態でさらにシミュレーションを行うことで、フィードバックループを高い頻度で更新することが可能。そのため、実社会での走行をはるかに上回る効率の良さで学習を繰り返すことが可能です。

シミュレーションの世界で存在感を示しつつあるのが、プロセッサーメーカーのNVIDIAです。2018年3月には、バーチャル世界でのシミュレーション環境を提供するシミュレーションシステムDRIVE Constellationの提供を開始しており、今後は各企業がこの技術を使った開発に乗り出す可能性があります。

また、シミュレーターを使った開発の利点は、学習効率を高めることが容易であるという点。実際に車を運転したことがある人ならば実感できるはずですが、自動車の走行シーンのうち、大部分は何のできごとも起こらない「空走時間」であるといえます。シミュレーションでは、この空走時間を排除して重要なポイントのみを重点的に再現し、学習させることで、実社会での走行よりも効率的に学習を深めることが可能になるというわけです。

とはいえ、シミュレーターも万能というわけではなく、しょせんは実社会を再現しただけの仮想空間であることから脱却することはできません。そのため、自動運転車の実現のためには、やはり実社会での走行データ取得は欠かせないものであるといえます。自動運転車が本当に安全であるかどうか、それは実際に自動運転車が街を走り初めてから初めて明らかになるといえそうです。

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in ソフトウェア,   ハードウェア,   乗り物, Posted by darkhorse_log

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