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Facebookを使って小規模ビジネスを行っている人がアカウントから締め出されて広告費を無駄にする事態が多発


Facebookは小規模ビジネスを手助けしていると主張しており、「Appleの広告トラッキングに関する仕様変更は小規模ビジネスに壊滅的な影響を与える」と訴えていますが、一方でシステムの自動化を進めたことで小規模ビジネス向けにカスタマーサービスが致命的に不十分だとも指摘されています。このため、Facebook広告を使って広告を運用する人がアカウントから締め出されてしまい、なすすべもないまま広告費を無駄に費やしてしまったという事態が発生しています。

Facebook’s Small Advertisers Say They’re Hurt by AI Lockouts - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-12-21/facebook-s-small-advertisers-say-they-re-hurt-by-ai-lockouts

Facebookの収益はほとんどが広告事業によるもので、特に大手メーカーではなく「Facebookがなければ生きていけない」中小企業の利用によって売り上げをあげています。このため2020年6月にはコカ・コーラやユニリーバなど1000社以上がFacebookの広告をボイコットするキャンペーンを実施しましたが、Facebookの広告収益は増加し続けたことが8月に報じられました。

Facebookは1000社以上の「広告ボイコット」にも関わらず収益を増加させている - GIGAZINE


Facebookは広告価格を自動運用しており、大手メーカーの広告出稿がなくなれば広告価格が下がるため、中小企業にとっては「買い時」な状況が生まれます。独自のエコシステムを構築していることがFacebookの強みであり、一方で、小規模ビジネスはFacebookに依存するしかないという状況であることも事実です。

そんな中、新たにBloombergが報じた内容によると、Facebookの自動広告システムを利用している小規模ビジネスのマーケティング担当や広告会社が、広告運用中にアカウントから締め出されてしまい、広告費を無駄にしてしまう事態が発生しているとのこと。


例えば自分のアカウントを使ってクライアントのFacebook広告を運用するクリス・レインズ氏は、2020年12月の3週目に突然アカウントから締め出されてしまいました。レインズ氏は締め出される前に1日3000ドル(約30万円)を上限としたキャンペーンの実施を設定しており、アカウントに入って広告の制御を行うことができないまま、ただただ1日30万円が消費されるのを見ているしかなかったそうです。

その間、レインズ氏はFacebookの自動システムによって身元を証明しようとしましたがうまくいかず、エラーメッセージを受け取りました。そこでクライアントに連絡し、レインズ氏の妻のアカウントを広告の管理アカウントとして指定させてもらうことで、ようやく広告の制御が可能になったといいます。


「広告主やマーケターにとって、損害は甚大です。回避策を見つけ出さなければビジネスが崩壊するところでした」とレインズ氏は述べています。

レインズ氏が解決策を見つけ出そうと調査する中で、同様の事態を別の企業のデジタルメディアマネージャーが経験していることがわかったとのこと。ハリソン・クグラー氏という広告担当者は地元のコメディクラブの広告を掲載している間に同様の締め出しを食らい、アカウントに再度入るまでに26時間もかかったと伝えています。制御できなかった26時間で費やした費用は200ドル(約2万円)でした。

さらに、ニュージーランド在住のマーケティングコンサルタントであるサム・フロスト氏も同様の事態に直面しました。広告を運用しているアカウントと紐付けられた管理者がほかにいなかったことから、フロスト氏も再度アカウントに入れるようになるまでに数万円を費やしたそうです。「巨額ではありませんが、ビジネスによってはかなりの大金になるはずです」「この事態から逃れることができたビジネスを私は見たことがありません」とフロスト氏は語りました。

Facebookはユーザーの興味や関心に応じて表示する広告を決めるターゲティング広告を運用しています。テレビのCMであれば細かくターゲットを絞らず広範囲の視聴者に広告を見せていきますが、ターゲティング広告の場合、どのようなユーザーをターゲットとするかということを、広告担当が細かく調整することになります。このため広告担当は広告の随時パフォーマンスを確認し、ある特定層のパフォーマンスが振るわなければ、その広告を引き上げて別のターゲット層に見せるといった調整が必要になります。アカウントにアクセスできない場合、このような調整が不可能になるわけです。


このような事態は、Facebookが事業の多くを自動化することによって多発するようになっているとみられています。Facebookは有害な広告を自動的に非表示にするフィルターを持っていますが、年末商戦の無害な広告がフィルターにひっかかり、かき入れ時に広告が表示できなくなってしまったという事態も報告されています

Facebookの広報担当は声明で「私たちは小規模ビジネスを潜在的顧客につなげ、ビジネスを成長させるツールを提供しており、人々を詐欺や嫌がらせから守る仕組みも実施しています。しかし、私たちの取り組みは完璧ではありません。混乱があったことをおわびします」と述べました。

Facebookはたびたび自社が小規模ビジネスを支援していると主張しており、Appleのソフトウェアアップデートによって小規模ビジネスが被害を受けるという内容の新聞広告も掲載していますが、一方で同社は小規模ビジネス向けの十分なカスタマーサービスを有していないという致命的な問題を抱えています。小規模ビジネスの広告主やマーケティング担当者はFacebook広告で何か問題が生じた時に、自動チャット機能を利用して問い合わせる仕組みですが、自動チャットを使うにはアカウントが必要なので、アカウントから締め出された時は利用できません。このような背景から、ユーザーがFacebookにカスタマーサービスの改善を求める「Change.org」という嘆願書も、数年前から存在します。

レインズ氏は「私たちは水牛の背中にとまっているブヨみたいなもので、ただ事態が改善すること待っていることしかできません。問題が解決できるかどうかが生計にかかわる場合、これは本当に恐ろしいことです」と語りました。

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in ネットサービス, Posted by darkhorse_log

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