オーフェンの髪の色は「暖色系の黒」など作中の色について「魔術士オーフェンはぐれ旅 キムラック編」色彩設計・桂木今里さんにインタビュー
監督・浜名孝行さん、撮影監督・近藤慎与さんと続く、「魔術士オーフェンはぐれ旅 キムラック編」制作スタッフへの連続インタビュー第3弾は、色彩設計の桂木今里さん。アニメのキャラクターはぱっと見てわかるようにわりとカラフルな髪の毛の色になっていることがありますが、本作はそういったキャラは少なめ。どのように画面上の色を決めているのかなど、話を聞いてきました。
TVアニメ「魔術士オーフェンはぐれ旅 キムラック編」公式サイト
http://ssorphen-anime.com/
GIGAZINE(以下、G):
色彩設計というのは「どの色を使うか」を決定する役目ですね。
色彩設計・桂木今里さん(以下、桂木):
そうです。いま画面で見てもらっているのがキムラック編のオーフェンです。
G:
「オーフェン」は、髪の毛の色が突飛な人はあまりいない世界ですよね。特にキムラック編では新たに登場するメッチェンをはじめ、黒髪系の人が多くて、大変ではありませんか?
桂木:
まずはオーフェンを基準にして、メインキャラは際立たせるようにしています。ただ、モブの人も黒髪が多いのでオーフェンより悪目立ちしないように作るようにしています。オーフェンは黒髪っぽいですがちょっと茶色、アザリーは明るい茶色に近いですね。
G:
オーフェンは黒い服のシーンが多いので、髪の色も真っ黒に近いイメージでしたが、ちょっと茶色に寄っているんですね。
桂木:
はい、黒目の服を着ている人は多いんですけれど、髪の毛が完全に真っ黒という人はいないです。舞台が日本ではないので、西洋風に、明るい茶色や金髪の人がいつつ、主には茶色と黒の系統を採用しているという感じです。
G:
魔術師は黒が好きですよね(笑)
桂木:
そうですね(笑) 肌の色もいろいろで、原作で言及されている人はそれに合わせています。
G:
サルアは第1期で出たときは「いかにも悪人面だ」と思ったんですが、こうして改めて見せてもらうといい顔になっているような……服装の変化でしょうか。
桂木:
以前は村人に溶け込みつつ黒っぽい衣装でしたが、今回は白っぽいですね。実は、この衣装は第1期のエンディングで一瞬だけ先出しされていました。
G:
なんと!
桂木:
キムラック編ではちゃんと出てきます。あとは……ちょっとネタバレになる新キャラが多数なので……。第1期のときはこうだったのに、キムラック編だと実はこうでした、というのもあるので、ぜひ見ていただきたいです。
G:
髪の色の話題だと、やっぱりめちゃくちゃ目立つのがハーティアですね。
桂木:
唯一、赤いですもんね。
G:
こうして見ると他の作品から来たかのような印象すら受けます。そしてこれはレティシャ……黒っぽいけれど青みがかっていますね。オーフェンといるシーンが多かったので、黒系でも2人の髪の色は違うんだなと見ていてわかりやすかったです。
桂木:
その点はしっかりと意識して作りました。チェック時に、監督からも「まったく同じ色にはしないで欲しい」と言われたので、オーフェンは暖色寄り、レティシャは寒色寄りになっています。ただ、印象を変えてしまうと今度は原作からズレてしまうので、原作の印象は変わらない範囲で、明るさは同じくらいで色味だけ変えている感じですね。
G:
キムラック編は第1期に比べて話が重めになっているということですが、色彩設計の点でも、重めの色というのは意識しているのですか?
桂木:
シーンが重ければ重い色にしていますが、あくまで色彩設計が勝手に色替えで重く表現するのではなく、演出さんの「こうしたい」という方針に合わせています。「こういう感じでキャラクターの心情を」という指示があった結果として暗い、重い印象の色になっているということで、意識的に色彩で重くしているというシーンはないです。
G:
意図に合わせて作っていて、第1期よりも重たい色を使っている印象はありますか?
桂木:
曇りが多くて、晴れがあまりないという印象はありますね。オーフェンの心の内に迫るシーンが多いので、自然と暗くなっているのかなと思います。そういうシーンでは、色替えをあえて明るくはしないようにしています。なので、逆にボルカンやドーチンがいるときには明るくなるようなコントラストは意識しています。
第1期にも暗いシーンはありましたが、長く続く印象はありませんでした。キムラック編ではじわじわと暗いシーンが多く、キャラクターの心情がじっくり見られるんじゃないかと思います。個人的には、監督が特殊な演出をされている第6話はその辺も含めて見ていただきたいと思っています。内容は思いっきりネタバレになるので何も言えないのですが、ぜひ……。
G:
ちょうど中央あたりに1つの山場がある、というぐらいでぼかしましょう(笑) 「オーフェン」に携わって、気に入ったキャラクターはいましたか?
桂木:
アニメをやる前から「魔術士オーフェン」という作品の存在は知っていて、私はだいたい主人公を好きになるタイプなのでオーフェンのことを好きになるかなと思っていたら、学生時代の仲間たちがとても愉快で愛着が湧きました。
第1期だと、第1話でオーフェンとクリーオウが出会うところが好きですね。オーフェンたちが結婚詐欺師をしている……
G:
オーフェンがらしくない扮装をしているところですね(笑)
桂木:
あれと、子どものころのシーンでオーフェンが早着替えをするところとか、最近あまり見ない表現で好きです。
G:
これは「オーフェン」に限らない部分になるのですが、色彩設計という仕事に就きたい人がなにか知っておくべき知識、身につけておいた方がいいことはありますか?
桂木:
いろいろな作品に触れておくことでしょうか。知識が偏っていると、なにか聞かれた時にわからないことが出てくるので。
G:
色の参考として「○○みたいな感じで」という指示があったときに「なるほど」とわかるように、という感じでしょうか。
桂木:
それです。わからないと「なんだろう、後で調べないと」となるので、ちょっとでも知っていれば理解を深められますし、「こんな感じ」が感覚的にわかるので、広く知っておくといいんじゃないでしょうか。
G:
知っておくべきジャンルはアニメがよいですか?実写まで含めた方がよいでしょうか?
桂木:
そんな偉そうなことは言えないですが、アニメの原作的なところは幅広く知っておくとよいと思います。色替えについては実写映画を知っておくと、リアルな構図の雰囲気もつかめます。
G:
「オーフェン」での経験を踏まえて、なにか取り組んでみたい作品はありますか?
桂木:
私はもともと子ども向けの作品をやりたいと思っていたんですが、それは叶っているので……いかにも少女漫画っぽい色合いが好きだし得意なので、そういうのをやってみたいと思います。でも、「オーフェン」みたいに少年向けというか、男性が主の作品もいいチャレンジなので、「何でも」ですね。
G:
色彩設計を目指したきっかけは何かありましたか?
桂木:
色を塗ったり作ったりするのは好きですが、目指したきっかけというのは別にないですね(笑) 仕上げ工程で、ある程度色をつけるのは色指定さんが別にいるんですが、実際に自分で色を作るという作業をやっていて「楽しい」って続けていたら「設計やってみる?」という話になって、結果的に色彩設計をやっている、という流れですね。
G:
好きなことを続けていたら、気付いたときにはここにたどり着いていた、という感じでしょうか。
桂木:
どうなんでしょう(笑) でも、やっていて楽しかったので「やりたい?」と聞かれたら「やりたいです」と言うようになっていました。
G:
色彩設計で「これが一番の楽しみ」というのはどの部分ですか?
桂木:
メインキャラクターではないモブたちは、設定が細かく決まっているわけではないため、ある程度好きな髪や目の色を設定したりできるという点でしょうか。私は茶髪・緑目が好きなので、そういうモブがたまに混ざっています。
G:
そんなところに好みが(笑) 確かに、わざわざ「緑色の目」なんて設定されているモブはいないですよね。
桂木:
もちろん、作品にちゃんと合っていなければダメです。西洋っぽい雰囲気の作品であれば、緑色の目でもおかしくはないので大丈夫ということです。色彩設計は、線画に色をつけていって色鮮やかにするところに楽しさを感じる人に向いています。「オーフェン」は全体的に髪も服も「色鮮やか」という作品ではありませんが、色をのせることでキャラクターたちの魅力を引き出せるのがやりがいのある所だと思います。
G:
なるほど。詳しい話をありがとうございました。
スタッフインタビューはまだまだ続きます。
『魔術士オーフェンはぐれ旅 キムラック編』アニメ PV第2弾 - YouTube
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