取材

「Fate/stay night」を作っているのはこんな人たち、スタッフトークイベント・後編


2014年10月4日(土)から放送開始となるテレビアニメ「Fate/stay night」はどんなスタッフたちが作っているのか、前編に続いて、若手の原画マンや動画検査、撮影(デジタルチーム)、美術監督、色彩設計、制作進行と幅広い役職の方々が登壇したイベント後半の様子はこんな感じでした。

Fate/Zero~stay night Cafe 【第4期】summer vacationイベント3 Fate/stay night TVアニメ制作スタッフ トークイベント
http://www.ufotable.com/cafe/tokyo/gallery/fate_zerosn_cafe/event.html#event_talk

・目次
【前編】
◆パート1:監督・三浦貴博さん&キャラクターデザイン・総作画監督・須藤友德さん
◆パート2:演出・栖原隆史さん&作画監督・青木拓也さん
◆パート3:原画・小船井充さん&原画・國弘昌之さん&演出・白井俊行さん
【後編】
◆パート4:原画・小山将治さん&原画・竹内將さん&原画・梅田貴嗣さん
◆パート5:動画検査・亀谷佳須美さん&動画検査・都築萌さん&動画検査・下村晋矢さん
◆パート6:撮影監督・寺尾優一さん&撮影・西脇一樹さん&撮影・滝沢雅人さん
◆パート7:美術監督・衛藤功二さん&色彩設計・松岡美佳さん&制作進行・近藤亮さん

◆パート4:原画・小山将治さん&原画・竹内將さん&原画・梅田貴嗣さん
近藤:
次は若手ゾーンです。年齢は30歳ぐらいで、脂が乗りかかってきたところ。三浦くんが大変で地味にコツコツやるカットを渡すことが多いという3人です。

高橋:
原画のお三方です、どうぞー。

近藤:
小山くんがやったところ、PVだとどこだっけ。

原画 小山将治さん(以下、小山):
一瞬だけ、凛のシーンが。(PVを見つつ)あ、ここもですね。

近藤:
ちょっと地味なシーンだったね。

小山:
頑張ったところはPVでは使われていなくて「なぜだぁー!」みたいな(笑)。


近藤:
小山くんはGOD EATER 2で、アクションと言えばいいのかメカと言えばいいのか……

小山:
武器の作画ですね。

近藤:
あれをコツコツ描いたのが彼です。

小山:
若手といっても30歳なんですが、原画をやっております小山と言います。よろしくお願いします。

原画 竹内將さん(以下、竹内):
ufotableで日々ちまちまと原画を描かせていただいております、竹内將と申します。よろしくお願いします。

近藤:
ここらが、面倒くさくて大変なカット、しんどいところを回されているというメンバーです(笑) では梅田くんもどうぞ。

原画 梅田貴嗣さん(以下、梅田):
はい、原画の梅田です。よろしくお願いします。

近藤:
彼はエフェクトがとっても好きで、めんどくさいエフェクトを延々と描いているんだよね。

梅田:
爆発ばっかり描いています。

近藤:
タイトルは言えないけれどあるゲームのOPで6秒延々とアクションというのがあったけれど、それがいちばん重いヤツだよね。

梅田:
あれは……結構しんどい仕事でしたね……。時間的な制約もあって、やれる範囲で頑張りましたが……大変でした。

近藤:
労作だなぁと思って見ていました。

高橋:
若手・中堅の原画というところで、実際に絵を描かれているお三方。原画はカット単位で担当することになりますが、これは自分たちで選べるんですか?それとも「これを」って渡されるんですか?担当するキャラクターやシーンの特徴などありますか?

小山:
基本的には「ここお願いします」と絵コンテを渡されて、「わかりました」って。

近藤:
みんな付き合いが長いから、「ここやりたい」っていうシーンと渡されるシーンとはそんなにずれてないよね。

小山:
そうですね……。

近藤:
もちろん、アクションシーンは國弘くんが持っていったりとかあると思うけど。

高橋:
小山さんはどういったシーンが多いですか?

小山:
凛や士郎をよく。出番が多いですからね……。自分は動くところを振られやすいかなと思います。地味芝居も、割と振られますけれど。

高橋:
凛や士郎は描いていて、難しかったり楽しかったり?

小山:
凛は髪の毛のなびきが難しいなという感じですね。キャラクターデザイン的にストレートではなく先がくせっ毛になっているので、なびきや長い髪に苦労します。

高橋:
続いて、竹内さん。

竹内:
特定のキャラを担当しているというわけではなく、それぞれいろんな話数の中でちょっと面倒くさい感じのところを回されたりしています。描いていて楽しいのはアサシンですね。


高橋:
テレビ放送に向けて日々過ごされているところですが、重いカット、難しいカットはどういうシーンだというのはありますか?

竹内:
例えば、処理のめんどくさいというか、セルワークの面倒くさいカットが多い感じですかね。セル同士の重なりの入れ替えが明確に描けないといけないようなカットを多く振られているような気がします。

高橋:
そこで手間暇かけるからこそいいものになるというのはあるんですかね、近藤さん?

近藤:
きっと三浦くんが楽したかったんだろうね(笑)、竹内くんに振っておけば何とかしてくれるだろうと。そういう意味では三浦くんがかなり信用しているという話は聞いています。そして、竹内くんが地味に面倒なら、梅田くんは派手な面倒くささ。

梅田:
そうですね、わかりやすい面倒くささは僕が作業させてもらうことが多いですね。

近藤:
「ヨヨネネ」で、でっかくなったビハクが駆け上がっているところは彼がコツコツコツコツとやりました。どれぐらいやったの?

梅田:
でも、全体で1週間ぐらいですかね?

近藤:
ああいう面倒なところは梅田くんです。Fateだとどうですか?

梅田:
変な話なんですが、ここ3週間、人を描いていないんですよ(笑)。だから僕が言えるのは、最近描いたものは「壁を爆破でぶち抜きました」というぐらいです。そういう、大変なところです。

近藤:
そういう役割ゾーンだよね?(笑)

梅田:
たぶん、三浦さんが作画でモノを壊すのが好きなんですよ。だから「やってください」って言われて、厳しいなあと思って相談すると「やって?」って改めて言われるので、そこで覚悟を決めるという感じです。


高橋:
stay nightはサーヴァント同士の戦いとかで結構モノが壊れますもんね。

梅田:
そうですね、壊した記憶が一杯です。

高橋:
画面になるとき、アクションの派手さや説得力を含めると大事なシーンですよね。

近藤:
大事だし、壁が爆発するカットを作画監督がちまちま直すのは大変なのでほとんどなく、そういう意味では爆破カットは梅田くんが描いたものがそのまま絵になることが多いよね。そういう意味では責任重大です。

梅田:
その分、やりがいがあると思って日々作業させてもらっています。

近藤:
凛や士郎くんは作画監督が統一するのでやっていくけれど、爆発はスペシャリストがやるべきだというところもあるので、モノ壊しスペシャリストみたいになっているんだよね。竹内くんは地味系だよね、階段上がらせるとか縦の移動とか。

竹内:
そうですね、凛が階段を降りたり。

近藤:
組み線はあるしリピートはできないし。しかも僕らはリアルにやっちゃうから、余計大変なんだよね。どう、そういうカットを回されて?

竹内:
地味ながらもしっかりやってやろうと思うので、楽しくやらせてもらいます。

近藤:
あら、すてきなご意見で。何かあったときに今の言葉しっかり覚えておくからね?

高橋:
急に司会からいきなり社長に戻る瞬間が(笑)

近藤:
とってもいい言葉をもらったから覚えておかなきゃと思って。

高橋:
小山さん、竹内さん、梅田さん、ぜひ覚えていただければと思います。では最後に一言ずつお願いします。

小山:
「Fate/Zero」のときは新人だったのでやりたくてもできないことが多かったですが、今回はやりたいことをちゃんとできるように頑張りたいと思います。小山でした。

竹内:
やりたいところをやらせてもらえないで面倒くさいところが多いですが、日々頑張ろうと思ってやっていますので、ぜひ皆さん期待してください。竹内將でした。

梅田:
僕はわりとやりたいことをやらせてもらえていて、嬉しい現場なので、その分ちゃんと頑張って、画面がきれいに見えるように作っていきたいと思っています。梅田隆史でした、ありがとうございました。

近藤:
なにかモノが壊れたら「あ、梅田くんかな?」とか、階段を凛が歩いていたら「竹内くんかな?」と、そんな風に思ってもらえたら3人も……

小山:
(自分を指さす)

近藤:
小山くんはどうしようか、メカのイメージなんだよね。Fateはあんまりメカは出ないしなぁ。

小山:
最近、ライダーの鎖を描いています。

近藤:
あっ……ご苦労様。

小山:
すっごい楽しいです。

近藤:
では、ライダーの鎖が出たら小山くんかな?と思ってもらって。

高橋:
お三方、ありがとうございました。

◆パート5:動画検査・亀谷佳須美さん&動画検査・都築萌さん&動画検査・下村晋矢さん
近藤:
男ばかりが続いたので、ここらで女の子を入れたいと思います。下村くんもいます。

高橋:
残り陣営も3つになりました。5つ目の陣営は動画検査、実際に絵が繋がっているかを検査するところです。亀谷さん、都築さん、下村さんです。拍手でお迎えください。

近藤:
なかなか動検がこういうところに出てくることは少ないんですけれど、どうですかstay nightってことで一言ずつ行きますか。

動画検査 亀谷佳須美さん(以下、亀谷):
動画検査を担当しています亀谷佳須美です。動画検査は原画さんの描かれたかっこいい原画を動画で崩さないように、動画ですけど1枚の絵としてちゃんとしたものになるようにチェックするよう心がけています。アニメをコマ送りして見る人もいると思いますが、その時でも1枚ずつちゃんときれいな絵になっているようにとチェックしていくのが動画検査の仕事です。


近藤:
亀谷さんはとっても几帳面なので、すごく大変なんです。本人は大したことをしてないと言うけれど、周りからすると怖いっていう……

亀谷:
怖くないです、怖くないです!

(会場笑)

近藤:
ヨヨネネの時にも最後まで美しい動検を頑張ってくれたので、クレジットもオープニングにしようと言って入れたぐらいなので、stay nightも頑張ろうと言うことで今日来てもらった次第です。

動画検査 都築萌さん(以下、都築):
動画検査の都築です。stay nightにはかわいい女の子が一杯出てくるので頑張ります。

近藤:
都築はかわいい女の子が好きなんだよね、いつもかわいい女の子描いてるの。じゃあ下村くん行こう。

動画検査 下村晋矢さん(以下、下村):
動画検査をやらせてもらっている下村です。動画検査はあまりなじみのない仕事だと思いますが、大事な仕事だと思うので、ギリギリ踏ん張って頑張りたいと思っています。よろしくお願いします。

近藤:
動検に重きを置きつつも原画も少しやっているという感じです。

高橋:
動画検査ということで、カットとして絵が上がるまでを担当なさっています。

近藤:
原画さんのかっこいい絵があるのは前提なんだけれど、画面に出るのは動画なんですよ、クリーンナップして中割りして。そのときに彼ら彼女らが描いた絵が出るので、そこがきれいじゃないと、原画がいくら頑張ってもというところなので。

高橋:
それが繋がって1カット1シーンになるというところで、チェックもそうですし描く方でも活躍しているお三方。亀谷さんには「Fate/Zero」のときインタビューさせていただくことがありましたが、動画検査として触れて楽しかったなというシーンやキャラクター、最近のお仕事でありますか?

近藤:
どのキャラが一番大変なの?パーツとか含めて。

亀谷:
やっぱりサーヴァントになると線が多いので、サーヴァントは大変です。バーサーカーは真っ黒になっちゃうけど、線が実際には多くてですね……。

近藤:
バーサーカーはすぐ逆光になりやがるからね(笑)。威圧感を見せるために。でも、きちっと描いてから逆光にするので、線としてはちゃんとやっちゃうんだもんね。

高橋:
都築さん、チェックしたキャラやサーヴァントでいい感じだなと思ったのは?

都築:
全体的に凛ちゃんがかわいいなと思います。田畑さんは、ufotableにはいないようなかわいい女の子を描かれる方なので、新鮮だなと思いました。

高橋:
近藤さん的には検査上がっての凛を見てどうですか?

近藤:
僕とかは絵描きの個性を知っているから見ていて面白いよ。誰の凛が好き?誰の原画がいい?

都築:
今日いらっしゃった方では小山さんのカットの凛ちゃんがかわいいなと。

(隅で聞いていた小山さんが喜ぶ)

近藤:
あれは本当に嬉しいんだよ。でも、実際そういうのはあるよね、誰々の凛はかわいいとか。

亀谷:
私は最近、菊池さんの凛ちゃんを中割りしたんですが、原画がすごくかわいくて。

近藤:
菊池くんは「空の境界 未来福音」の作画監督をやってくれて、今回は原画として入っています。菊池くんとかが原画に入っているのは凄くリッチだよね。「まなびストレート」でキャラデをやった小笠原君も凛をバリバリ描いているし。

下村:
ぼくはバーサーカーがムキムキで格好いいなと思ってます。

近藤:
バーサーカーは特殊な進め方をしているので期待して欲しいレベルだよね。いまPVに出てくるのは2カット~3カットですが、三浦くんが大変なコンテをお描きになられたので(笑)、すごいことになっています。

高橋:
今バーサーカーの名前が出ましたが、下村さん的に他のサーヴァントで「かっこよく」とか、生き生きと動きがいいなと感じたサーヴァントとかありますか?

下村:
僕が最近見たのだとライダーですかね。

近藤:
さっき小山がライダーの鎖の話をしたけれど、あれは動画が大変だよね。ライダーの鎖の動画は許してくれって感じだよね。だって、輪っかじゃなくてちゃんと1つずつ繋がったヤツで、しかも影も1つずつ入れていくんでしょ?

下村:
はい、小山さんがそういう風に修正を入れてくださるので。

高橋:
鎖が違和感なく動くのって絵としては大変ですよね。

下村:
そうですね、意外としっかり描かないと大変です。

近藤:
意外じゃなくて超大変だと思うよ。ちょっとぐにょぐにょするだけで鎖に見えなくなっちゃうので。じゃあ、最後に一言ずつ行きますか。


亀谷:
今、まだ上にいる動画さんもがんばっているので、動画というお仕事にも最近は目が向けられがちなので頑張っていきたいと思います。

近藤:
動画というセクションはわかりづらいところがあるけれど、注目してもらえるといいよね。作業は超地味だもんね。

亀谷:
そうですね、1mmの間に10本線を引かなければいけないとかよくあって、それを失敗するとぶよぶよした動画になるので、それをしないように1枚ずつチェックしています。

近藤:
「この間に10枚割って」って言われても線が入らないってことあるもんね。そういうのを1個1個やっているのがこの3人なんです。

都築:
1カットでも多くきれいな動画を、と動画マン一同頑張ってやっていきたいと思いますので、みなさん期待して待っていて下さい。

下村:
見応えのあるシーンは派手なよく動いているシーンだと思いますが、動画で大変なのは意外と動かないシーンだったりするので、そういうシーンもきれいだったら「動画さん、頑張っているな」と思ってもらえればと思います。

◆パート6:撮影監督・寺尾優一さん&撮影・西脇一樹さん&撮影・滝沢雅人さん
高橋:
続いては6つ目の陣営、撮影とか3DCGだったり。

近藤:
デジタルチームと呼んでいるところです。

高橋:
デジタルチームの西脇さん、滝沢さん、寺尾さんです。

撮影 西脇一樹さん(以下、西脇):
みなさんこんばんは、撮影部でCGと撮影などをやっている西脇です。よろしくお願いします。

近藤:
西脇くんでわかりやすい仕事というと、「Fate/Zero」の次回予告の令呪は彼の仕事です。Unlimited Blade WorksのPVの雲も彼の仕事だそうです。そういう、地味ワークスです。

撮影 滝沢雅人さん(以下、滝沢):
撮影部で3DCGと撮影をやっています、滝沢と申します。よろしくお願いします。

近藤:
滝沢くんはPVとかでやってきた部分のわかりやすいところはどこかある?

滝沢:
PVに出てくる胸像とか全部僕がモデリングしました。

近藤:
チェスの駒みたいなヤツだね、1個目のPVに出てきた。

滝沢:
はい、あと今回のHeaven's FeelのPVでも使われています。

近藤:
そういえばHeaven's FeelのPVは流してなかったからここで流そう。Heaven's Feelは話せないことだらけだから流すのやめようかと思ってた(笑)


ということで、このHeaven's FeelのPVの冒頭シーンで背後に並んでいる各クラスのスタチューのモデリングを担当したのが滝沢さん。

「Fate/stay night」Heaven's Feel PV01 - YouTube


近藤:
1体1体モデルを作っていったのが滝沢くんなんだよね。

高橋:
あと「Fate/Zero」ではバーサーカーを担当なさっていたんですよね。そして、続いて寺尾さん。

撮影監督 寺尾優一(以下、寺尾):
撮影監督をやらせていただいている寺尾と申します。仕事の説明でいうと、たとえばセイバーがいて後ろに言峰教会があるというとき、2つの素材を合成した後に光のニュアンスを整えるような仕事をしています。よろしくお願いします。

高橋:
まずは西脇さん、日々テレビアニメの制作に向けてどういったことをなさっているんでしょうか?

近藤:
デジタル部の仕事の幅は広がる一方だよね。こういう素材作りから……。

西脇:
そうですね、CGという範疇でも増えていますし、撮影も全カット何かしらやるという仕事になっているので。

近藤:
CGでレイアウト作ることもあれば、モーション作ることもあるし。

西脇:
3Dレイアウト、キャラクターのモーション、カメラに3Dの動きをつけたり、エフェクト各種をのっけたり……なんでもです。

近藤:
西脇くんの仕事だとレイアウトが多いのかな?

西脇:
今はレイアウトメインでやりつつ、カット単位のカメラワークとかエフェクトもやり、チームのCGカットの管理みたいなこともやらせていただいています。マネージャーというか中間管理職みたいな感じです。

近藤:
滝沢くんはどうなの、役割分担は。

滝沢:
僕はまだそんなに数は持っていませんが、いまは大きいところだと塀をぶっ壊したり、ビームを出したりしています。

近藤:
スペシャリスト的な仕事をしているよね。あと最近の滝沢くんの仕事だと、みんなあまり見てないかもしれませんが「おへんろ。」のオープニングをかなりやってくれました。

滝沢:
はい、まるっとやりました

高橋:
寺尾さん、撮影監督ということで日々どんなお仕事をなさっていますか?

寺尾:
日々何をしているかというと、三浦監督などと同じで、演出さんや作監さんは各話いらっしゃるんですが、撮影はチームが1つで撮影監督も1つなので、全話数の全てのカットが僕の手元に集まってくるんです。それが今は数メートルの高さになっているんですが、1つ1つ見ていって直すべきかどうか、抜けがないかどうかをチェックしつつ絵を作っていくという仕事をしています。

近藤:
物量がすごいよね、どれぐらいあるんだろう……。

寺尾:
HDDは……10TBぐらいですかね。

近藤:
あの管理と、ファイル名をどうするかってことからだよね。

寺尾:
カット毎にテイクが発生して、1つのカットを5人ぐらいで撮影するんですがver7とか8とか作るんですね。それが数百カットあるので、ファイルの数はウン百万にすぐなっちゃうんです。それを効率よく、なくさないように管理するためにファイル管理ツールを社内用に作ったりして運用しています。

近藤:
そこまでしないとわかんないよね。

高橋:
「空の境界」「Fate/Zero」「Fate/stay night」と積み重ねがありますが、どんな質感にしていこうとか、どのようにアプローチされていますか?

寺尾:
Fateという作品のイメージもあると思いますが、高級感であったり、「いいものを持っているな」と思ってもらえる、ちゃんと作った丁寧な品物になるといいなぁと思っています。あとは、それに加えて大作感、見ていて気持ちが高揚するような映像になればと思って作業しています。

高橋:
滝沢さん、ご自身としてZero後、どのようにstay nightへ挑もうというのはありますか?

滝沢:
「Fate/Zero」は派手な映像がかなり多かったと思うんです。14話では爆発があったり空を飛んでいったりとか。

近藤:
ZeroはCGとしてはゴツいよね、キャスターさんが大きいのを出したりして。

滝沢:
そうなんです。でも、今回はそういう大戦争ではないおとなしい中でも、手が入って見応えのある映像になるといいなと思っています。

近藤:
そうか、CGとしてはstay nightの方が地味かも。作画は圧倒的に派手だけどね。

滝沢:
CGは派手じゃないけど見応えのあるものができればと思いますね。

高橋:
西脇さんも同じく、stay nightへ向けての抱負などあれば。

西脇:
Fateというシリーズにはstay nightのファンも、Zeroから入った方もいると思うんです。そういったファンの方々に、映像の派手さだけではなく内容まで踏み込んだ上で「これがFateだ」と思っていただけるようなものを作ろうと思っています。


高橋:
近藤さんは上がってきたカットを見てどうですか?

近藤:
PVのまま本編が動いているので見てもらったとおりです。PVのカットはPV用のものは1つもなく本編なので、あのままですね。

高橋:
あれがTVでというのは大変そうなイメージですが、いかがですか?

寺尾:
いま近藤さんが話した通りなのですが、僕の気持ちとしてはPVはスタートで、もっともっと行きたいなと思って作業しています。PVをやってて、もっとすごいカットはあるんですけれど、それは本編のお楽しみにした方がいいのかなと。

近藤:
そうそう、ゆまくんと寺尾くんに任せると、いいカットを出しちゃうのでストップしようと(笑)

高橋:
そうですね(笑) 寺尾さんとは「どんなPVを作ろうか」という相談をよくさせてもらうんですが、僕らは出したがりなのでいいカットを入れようとしちゃうんです。

寺尾:
少しでも早くお見せしたいなと(笑)

近藤:
今のアニメ作りの中ではどんどんデジタル部の作業幅が増えていて、量も増えていて、大変なセクションになっちゃったよね。

寺尾:
CGで何をするのか一から考え直す機会が増えてきたかなと思います。

近藤:
作品ごとにデジタル部の関わり方が変わっているもんね。特に、西脇君と滝沢君はこれからどんどん出てくるメンバーになると思うので来てもらいました。ぜひ名前を顔を覚えていってもらえばと思います。

寺尾:
ufotableは常に進化していくものだという気持ちがあり、「空の境界」から「Fate/Zero」へ、そして「Fate/stay night」へということで、Zeroよりも上に行きたい、いいものを作りたいと挑んでいます。どうかお楽しみに。

滝沢:
僕はZeroが始まったときに入ったばかりのド新人で、そこから幾年か経って自分のスキルも前より確実に上がっていると思うので、Zeroよりきっといい映像ができると思います。ご声援よろしくお願いします。

近藤:
滝沢くんはゴジラぐらい作ってくれると思ってるよ。

滝沢:
ハードル上げすぎです(笑)

西脇:
まずはファンの皆さんが喜んで下さる作品を作りたいなと思っています。自分もFateという物語が好きでやっているところがあるので、ファンの目線に寄り添って映像面からアプローチしていきたいなという気持ちで頑張っています。よろしくお願いします。

◆パート7:美術監督・衛藤功二さん&色彩設計・松岡美佳さん&制作進行・近藤亮さん
高橋:
最後は混合チーム、違うセクションの方にお三方お越しいただいています。

近藤:
どうですか衛藤さん、こういう場は?

美術監督 衛藤功二さん(以下、衛藤):
慣れないですね。

近藤:
衛藤さんは美術監督で、「空の境界 未来福音」とか第六章・第七章をやってくれました。

衛藤:
背景の美術監督をやっています衛藤です。空の境界からお世話になっており、これからもufotable作品に関わっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。

近藤:
いま、かっちょいいカットを後ろに映しました。


衛藤:
3Dの力もあって、車の光とかは3Dさんが入れてくれたんですが、背景と撮影でよりリアルな感じに。

近藤:
今のアニメって背景だけすごくてもダメだし、デジタルだけすごくてもダメなんです。

衛藤:
そうですね、背景の止め絵だけだとちょっと物足りないんです。そこに光を足すとすごいものになります。

高橋:
続いて、松岡さんお願いします。

色彩設計 松岡美佳さん(以下、松岡):
色彩設計の松岡と申します。色彩設計は千葉絵美さんと2人でやっている色関係のお仕事です。

制作進行 近藤亮(以下、亮):
制作進行の近藤と申します。仕事としては、ここに今日呼ばれている弊社のたくさんのスタッフの皆さんとはちょっと違い、そのスタッフの、有り体に言えばサーヴァントのようなことをずっとやっていて、いろんなスタッフさんが作業した結果を次のセクションにつなぐお仕事です。

近藤:
進行となっているけれど、いわば制作担当ですね。今回のFateでの汗かき役だよね、それを彼がやっています。

高橋:
ではそれぞれ具体的なお仕事を伺っていければと思います。まずは衛藤さん、stay nightの美術をどうしていこうというのはありますか?

衛藤:
空の境界やFate/Zeroはかなり写実的でリアリティの重い、雰囲気的には暗い作品だったと思います。stay nightは学園ものっぽい部分もあって、確かにリアルではあるんですがより鮮やかな、もっとアニメの絵っぽい感じにしたいなと。

近藤:
今彼はさらに難しいことに挑戦していて、「ディテールで画面のリッチ感を増やす」というところから、奥行きというか「面」でモノを描こうとしているんだよね。

衛藤:
実は、逆にディテールは多少潰せとスタッフに言っていて、面を出して色で見せたいなということがあって。

高橋:
いまPVが流れていますが、PVの中のカットでわかりやすい部分はありますか?

衛藤:
PVだとビル群のところですかね……。

TVアニメ「Fate/stay night」PV第3弾」の1分26秒のところに出てくるのがこのビル群のシーン。


衛藤:
ここで言うと、奥は前までは隅々まで描いていたんですが、人間の目って全部描いてあるとどこを見ていいか分からないと思うんです。それを今回、奥は潰していて、監督から「SFになっていい」と言われたので、中心部を集中的に面と窓の光とかでやっています。実は側面部には影は描いていなくて光だけで立体を表現するという手法をとっています。

近藤:
今回は全体の立体感を大事にしているよね。

衛藤:
そうですね、空の境界では影の中まで描いていたんですけれど。

近藤:
一番描いたのは第六章じゃない?

衛藤:
今見るとちょっと気持ち悪いなと(笑)。描きすぎて、描いたけれど写真にしか見えないと言われて(苦笑)、それじゃだめだなと思い、もっと絵っぽい感じにしています。

近藤:
全然ダメじゃないけど(笑)、さらに進化しようということですね。第六章の美術すごかったよ。

衛藤:
ありがとうございます、必死でやりました。

高橋:
10月の放送に向けていいものができそうな感じでしょうか?

衛藤:
ちょっとまだ試行錯誤中ですが、次の日に自分の絵を見るとかっこ悪く見えちゃって、描き直し描き直しでまだ完成形ではないです。もうちょっと、Zeroや空の境界よりもよくしたいと思うので。

近藤:
恐ろしい世界でしょう?テレビとか劇場とか関係ないところで今やっています。

衛藤:
僕、劇場もテレビも全部同じクオリティでやっちゃうので、みんなヒィヒィ言っていて大変な思いをさせちゃうんです(笑)。でも、ぶっちゃけ空の境界よりクオリティいいと思います。


高橋:
そして続きまして松岡さん。色彩設計は色を決めるお仕事ですが、具体的にstay nightではどんなお仕事をなさっているんですか?

松岡:
背景さんにキャラクターを合わせて、夜だったら夜、朝だったら朝、夕方だったら夕方とキャラクターの色を決めていって、それを色指定の方に指定していただくという仕事です。

近藤:
「住めば都のコスモス荘」からやっている千葉という色彩設計もいるので、今回はダブルでやってもらっています。どうですか?

松岡:
難しいです。千葉さんの雰囲気を崩さないように頑張っています。

高橋:
そして近藤さん、近藤亮さん。

近藤:
僕の弟ではないですよ。

高橋:
血縁関係はない近藤さん。制作ということで日々、どんなお仕事をされていますか?

亮:
スタッフの皆さんが気持ちよく、かつクオリティアップに集中できるようにと環境を整えるのが一番のお仕事で、それはスケジュールをちゃんと用意したり、例えばカットを作るときに参考にしたい写真を撮るためのロケのセッティングをしたり、そういうのをいろいろと、ひたすら一個一個やっています。

近藤:
アフレコの別日を取ったり、コンテが少しずれたらカッティングを1週間ずらそうとか、そういう調整を彼がやっています。仕事が終わることがなくて大変だよね。僕もずっと制作をしているけれど、自分の都合で仕事を調整できないのが辛い。周りに合わせていく仕事なので、例えば夕方の5時上がり予定のコンテが12時になっても、いなきゃいけない。

高橋:
僕の宣伝という立場からすると、まずご相談は亮さんにすることが多いですね。それぞれ役職が違いますが、近藤さんから見て、3人の仕事の見て欲しいところは?

近藤:
セクションが違いすぎるけれど、衛藤さんの美術は圧倒的で僕らも「これをテレビでやるの?」と思いつつやっています。彼よりはるかにベテランの海老沢さんという方も一緒に衛藤さんとやっていますが、みんな大変だよね。衛藤さんに関しては、この圧倒的なクオリティを最後までどう保たせるのかという戦い。全然クオリティを落とす気ないですもんね。

衛藤:
そうですね、体力のあるうちは。

近藤:
だから、衛藤さんが居てくれるのは心強い。Fateの画作りの根幹の1つだよね。

高橋:
実際、背景は画面に占める割合は大きいので。松岡さんの色彩というところで、楽しみにして欲しい部分は?

近藤:
仕上げって大変なんだよね。美術が先に上がったらそれに合わせる、美術が遅れて撮影に回さなきゃならないときはとりあえず回して、後から美術が来たらもう一度戻して調整する。きりがないよね。テレビシリーズの色彩設計まで来て、どう?

松岡:
今までやった作品の中ではやりやすい方ですね、好きな色味なので。


高橋:
シーンごとに色を決めていて、触れててぐっとくるキャラとかいますか?

近藤:
どのキャラクターが好きなの?

松岡:
誰だろう、今は特にまだそんなに……これからですかね。

高橋:
続いては亮さん。

近藤:
お気に入りのキャラクターは誰?

亮:
僕のお気に入りですか?キャスター好きです。

近藤:
そうなんだ。近藤亮君が夜中の2時にカップヌードルMEGAとか食べているのを見て「大丈夫かなぁ」と思ったりしています。

亮:
stay night始まってから痩せたので大丈夫です。

高橋:
それぞれに違うお仕事をされているお三方、画面作りにおいては欠かせない方々ですね。

近藤:
特に制作担当は、作品作りで最初から最後まで関わる唯一のポジションなので、ここからさらにダイエットできると思います。

亮:
はい、絞っていきます。

高橋:
では改めて一言ずついただきたいと思います。

衛藤:
みなさんあまり背景を見ないと思いますけど、今回は見て、描き込んでいるのはZeroまでの流れだったので、きれいというか感動してもらいたいなという目論見があります。Zeroは夜のシーンが多かったんですが、stay nightは日常の光のシーンが多く、きれいな色味に気をつけていますので、ぜひ見てもらえたらありがたいです。

松岡:
Zeroと雰囲気がちょっと変わっていたりもするんですが、暗くて見えなくなったりするキャラもできるだけ見えるように色を上げて、きれいな色で皆さんにお届けできるように頑張りたいと思います。

亮:
とにかく、スタッフ全員が心血を注いで作っているので、放映を楽しみに見ていただけたらという気持ちで一杯です。

高橋:
ありがとうございました。

近藤:
今日は20人のスタッフを紹介しましたが、この10倍以上の人数で1本のアニメを作っています。見ているときはそんなこと気にしなくてかまわないんだけれど、こういう人たちが関わっているということを知ってもらえたら、スタッフも嬉しいと思います。

高橋:
ではお越しいただいた皆様へのわずかながらの御礼ということで、プレゼント抽選への流れに入りたいと思います。

ということで、イベントの最後にはプレゼント大会が行われました。


高橋:
では最後に近藤さん、お願いします。

近藤:
先ほど美術監督の衛藤さんも言ってくれたように、テレビとか劇場とかではなく「Fate/stay night」というものを作ろうとしていて、待っていて欲しいというか、みんなに早く見て欲しいと思って作っていますので、ぜひ一緒に10月を一緒に迎えられればと思います。stay nightのカフェはこのまま続くので、一緒にワイワイ言いながら迎えられたら。告知的なところでいうと、徳島で行われるマチ★アソビというイベントが10月11日~13日にクライマックスランです。9月終わりからファーストランとして空港でアニメジャックとかをやります。「Fate/stay night祭り」やるぞと思ってやってっているので、ぜひ徳島に集合してもらって、これ以上ないぐらいにワイワイできればと思っています。スタッフも頑張っている分だけ、僕とかゆまくんとかみんな含めて盛り上げられたらと思います。今日、こんな風にスタッフの紹介みたいなイベントでしたけれどもよかったと思いますか?

(会場拍手)

近藤:
彼らが頑張って作っているので顔とか名前とか覚えてもらいたいと思っていて、終わった後にもまた何かできればと思っています。

高橋:
みなさんの応援は必ず作り手に届きますので、一緒にいい作品を作っていけたらと思います。以上をもちましてufotableプレゼンツ、「Fate/stay night」スタッフトークイベントを終了とさせていただきます。遅くまでありがとうございました。

テレビアニメ「Fate/stay night」は10月4日(土)24時からTOKYO MXほかにて全国同時放送開始。BS11での放送があるので、BSの視聴環境があれば全国どこでも見ることができるほか、放送日の25時からはniconicoでの配信も行われることになっています。

「Fate/stay night」TVアニメ公式サイト
http://www.fate-sn.com/

TVアニメ「Fate/stay night」PV第3弾 - YouTube


さらに、テレビで描かれるのとは別のルート「Heaven's Feel」の劇場アニメ化も決まっているので、こちらもお楽しみに。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
2014年秋季開始の新作アニメ一覧 - GIGAZINE

Fate/stay nightは凛ルートをアニメ化&「Heaven’s Feel」映画化&「Fate/Grand Order」今冬開始など「Fate Project最新情報発表会」レポート - GIGAZINE

「Fate/staynight」新アニメPV第2弾、ついにYouTubeでフルHD版が解禁 - GIGAZINE

「Fate/stay night」がFate/Zeroを作ったufotableによって再度アニメ化されることに - GIGAZINE

in 取材,   アニメ, Posted by logc_nt

You can read the machine translated English article here.