マスクを付けたままの運動は危険なのかどうかが研究で示される
新型コロナウイルスの流行に伴いロックダウンが実施される国では、外出が生活必需品の買い物や運動に限られているところもあります。自宅に閉じこもる生活の中で運動の重要性は増しますが、このとき「外での運動時にマスクをつけるべきかどうか?」という問題があります。多くの保健当局はマスクを付けたままの運動に警鐘を鳴らしていますが、新たな調査結果では「健康な人がマスクを付けて運動しても肺機能や酸素の吸入には影響がない」ということが示されました。
Facemasks and the Cardiorespiratory Response to Physical Activity in Health and Disease | Annals of the American Thoracic Society | Articles in Press
https://www.atsjournals.org/doi/10.1513/AnnalsATS.202008-990CME
It May Not Feel Good, But Exercising With a Mask on Shouldn't Impair Your Oxygen Intake
https://www.sciencealert.com/most-people-should-breathe-just-fine-while-exercising-with-a-mask-on-scientists-say
ランナーの呼気は後ろの人に直撃する可能性があることが2020年4月の調査結果で示されており、マスクをつけるべきとも考えられますが、一方でマスクを付けたままの運動は息苦しさをもたらします。このため厚生労働省が「新しい生活様式における熱中症予防行動のポイント」の中で「マスクを着用する場合には強い負荷の作業や運動は避けること」を推奨しているように、多くの科学者や保健当局がマスクを付けたままの運動に警鐘を鳴らしています。「マスクを付けたまま激しい運動を行うことは本当に体にとって危険なのか?」ということで、カリフォルニア大学サンディエゴ校のスーザン・ホプキンズ氏ら研究チームは、新たに調査を行いました。
研究チームによると、運動中のマスク着用を懸念する主張は、「呼吸器や呼気交換に意図的に影響を与えるためにデザインされたデバイス」を用いた実験に基づくとのこと。このため、「マスクを付けた人」で実際に同様の影響がでるのかは記事作成時点ではっきりしていません。そこで研究チームは布製マスク・サージカルマスク・N95マスク・産業用ガスマスクといったさまざまなマスクの影響について言及した科学論文を再調査し、マスクを付けたままの運動が心臓・血管・肺に与える影響を検証しました。
この結果、マスクを付けたままの運動が血中酸素や二酸化炭素、その他生理学的パラメーターに与える影響は小さく、検出できないこともあると示されました。
もちろん、この分野の研究は発展途上であり、確実なことを言うためにはさらなる研究が必要です。しかし研究チームは、記事作成時点の証拠から考えると、マスクを着用することで呼吸困難といった不快感は増すものの、「健康な人が運動の最中にマスクを着用することは肺機能や酸素の吸入に影響を与えない」と述べています。
「マスクの着用により呼吸に対する抵抗がわずかに増加します。また人は二酸化炭素が多く含まれた温かい呼気を再び吸うことになり、体温が上昇し汗ばむこともあるかもしれません。しかしこれらは知覚的なものであり、健康な人の心肺には影響しません」とホプキンズ氏は述べました。
また、マスクを着用して運動しても問題ないという調査結果は年齢・性別を問わずにいえることですが、深刻な心肺疾患を持つ人はその限りではないとのこと。このため心肺疾患を持つ人は医師と相談し、運動中の不快感を軽減させるか、COVID-19の感染リスクを下げるかの検討を行わなければないとホプキンズ氏は呼びかけています。
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