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アメリカの大統領を国民が直接選出するのではなく代表者による投票で選出する「選挙人団」とは?


現在進行形で開票作業が続けられているアメリカ合衆国大統領選挙では、有権者が直接大統領を選ぶのではなく、それぞれの州で代表者となる「選挙人」を選び、その選挙人が大統領および副大統領に対して票を入れる「選挙人団」という制度を採用しています。なぜこのような制度を採用しているのかについて、海外ニュース誌のTimeがまとめています。

Voting History: The Real Reason the Electoral College Exists | Time
https://time.com/4558510/electoral-college-history-slavery/

アメリカではすべての州で州知事が一般投票により選出されますが、大統領の選出方法には選挙人団という制度が採用されています。選挙人団を採用している場合、選挙人の票数が選挙の結果を左右するため、一般投票では人気の高かった候補が落選してしまうというケースがあります。実際、2016年の大統領選挙では、ヒラリー・クリントンが一般投票でドナルド・トランプをわずかにリードしていました

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By Gage Skidmore

選挙人団が採用された理由を、「人口の多い州と人口の少ない州の利益のバランスを取るため」と主張する人もいますが、アメリカで最も深い政治的分裂は、大小の州間ではなく南北の間、そして海岸と内陸の間にこそ存在しているとTimeは指摘しています。

そもそも選挙人団は、「広大な大陸を持つアメリカで、一般人が大統領候補の中から直接かつ賢く投票先を選ぶのに十分な情報が不足している」という事情から生まれた制度です。選挙人団が導入された1780年代は、ラジオやテレビの方法もなく、新聞は存在したものの識字率も低く、有権者が大統領候補の政策や主張を知る機会がほとんど存在しませんでした。そのため、地域で信頼のおける名士などに「選挙人」として投票を行ってもらう選挙人団という制度は上手く機能したそうです。


当時の選挙人団では選挙人が2票ずつ持っており、大統領・副大統領の区別なしで投票するように決められていました。そのため、選挙人は各党の大統領候補が副大統領候補よりも1票だけ多くなるように投票を行っていたそうです。しかし、1800年に行われたアメリカ大統領選挙では、民主共和党から選出されたトーマス・ジェファーソンとアーロン・バーに同数の票が集まるという事態が発生しました。

このような問題を解決するために生まれたのが、1803年に提案され、1804年の大統領選挙から適用されたアメリカ合衆国憲法修正第12条です。修正第12条により、各党は大統領候補と副大統領候補を別々に指名することが可能になり、1804年以降の大統領選挙ではすべてこの第12条に基づき大統領選挙が行われています。


選挙人団という制度が生まれた理由が「一般市民の知識不足」であるならば、この問題は1800年までにほぼ解決されました。ではなぜ現在でも選挙人団という制度は廃棄されないままなのでしょうか。

過去にもペンシルベニア州を拠点とするジェームズ・ウィルソンが大統領選挙を一般投票にすべきと提案したことがあるそうですが、バージニア州を拠点とするジェームズ・マディソンが「南部の州はそのような提案を受け入れることができない」と答え、大統領選挙で一般投票方式を採用する案を否定しています。南部の州を代表するマディソンが一般投票を拒否した理由は、南部は50万人以上の奴隷人口を抱えており、この奴隷たちは投票権を持っていなかったためです。代わりにマディソンが提案したのが選挙人団方式で、この際に奴隷1人につき自由民の5分の3の割合で投票権を与えることが認められます。

その結果、多くの奴隷人口を抱える州が大統領選挙で大きな力を持つこととなります。実際、選挙人団方式が採用されてからの36年間で、奴隷の人口が多かったバージニア州を支持基盤とする政党から大統領が選出された期間は、34年間にもおよびます。例えばアメリカ合衆国第3代大統領であるトーマス・ジェファーソンは、バージニア州をはじめとした南部の地域を支持基盤としており、投票した選挙人のほとんどが南部の地域から選出された選挙人だったそうです。

修正第12条が提案された際にもアメリカ北部を拠点とする政治家たちから一般投票方式の採用が提案されたそうですが、南部の政治家たちがこれを否定したため、結局大統領選挙で一般投票が採用されることはありませんでした。つまり、18世紀後半から19世紀初頭にかけての地域間の対立が、現在のアメリカにおいても維持し続けられている選挙人団という奇妙な制度を生み出すことにつながったとTimeは指摘しているわけです。

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in メモ, Posted by logu_ii

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