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たった1人の候補者ではなく最大5名までを「順位付け」して投票する新投票方式がスタート、何が狙いなのか?


現地時間2021年6月22日、候補者を最大5名まで「ランク付け」して投票できる新投票方式を導入した市長選予備選がアメリカ・ニューヨーク市でスタートしました。でスタートしました。この新たに採用されたランク付け方式とは一体どのようなものなのか、アメリカの公共ラジオネットワーク・National Public Radioが解説しています。

What Is Ranked-Choice Voting And Why Is New York Using It? : NPR
https://www.npr.org/2021/06/22/1008807504/ranked-choice-voting-new-york-city-mayors-race


新たにニューヨークの市長選予備選に採用された投票方式は、「Ranked-Choice Voting(優先順位付投票制:RCV)」というもの。RCVは、投票者が候補者を最大5名まで選んで「順位付け」を行った票について、以下の1~3の手順を繰り返して当選者を決定します。

1.過半数が「第1選択」とした候補者がいた場合、その候補者を当選とする。
2.過半数の第1選択を獲得した候補者がいなかった場合、第1選択の数が最も少ない候補者を落選とする。
3.落選した候補者を第1選択にしていた票の「第2選択」に票を加算する。

以下では簡略化した例を挙げて、RCVについて解説しています。候補者はポチ・タマ・ムギの3名で、投票者はA~Eの5名という設定。A~Eの投票者が各候補者に対して第1選択・第2選択・第3選択の順位を以下のように割り当て、票を投じたとします。ラウンド1では「第1選択」の得票数だけを見て、過半数を集めていた候補者がいればその時点で終了。どの候補も過半数を得られなかった場合には、最下位の候補者のみを落選させます。この場合ではポチは2票、タマも2票、ムギは1票ということで、過半数を集めた候補者はなし。よって最下位のムギは落選となります。

 ABCDE結果
ポチ123132票
タマ212312票
ムギ331221票


続くラウンド2では、前ラウンドで落選が確定した候補者が除かれ、残った2名について、どちらの上位選択が多かったかが計算されます。このため、「第1選択:ムギ、第2選択:タマ、第3選択:ポチ」と、落選したムギを第1選択としていたCの票は、「第1選択:タマ、第2選択:ポチ」として計上されます。この過程を経た場合、今回の例では過半数を集めたタマが当選となります。

 ABCDE結果
ポチ122122票
タマ211213票


National Public Radioがまとめている、RCVのメリット&デメリットが以下。

◆メリット
・死票が少ない
従来の「最多得票者が当選」というシステムは、必ずしも過半数の支持を得た候補者が当選するとは限らず、「他の候補者よりも投票を得た候補者」が当選するという仕組みでした。このため、例えば得票数が全体の10%という候補者でも、他の候補者への票がバラけていれば当選していました。RCVは投票者の第5選択までが結果に反映されうるため、死票が少なくなると考えられています。

・好き嫌いがハッキリとわかれる候補者が当選しにくくなる
熱烈な支持者がいる反面、圧倒的に嫌いな人も多いという候補者はRCVでは第2選択以降に選ばれにくくなるため、当選の可能性が低くなります。

・費用対効果が高い
従来のシステムでは、当選基準を満たした候補者がいなかった場合は再選挙が必要になるため、再選挙のための選挙キャンペーンや投票自体も必要でした。RCVでは1度の投票で必ず終了するため、再選挙の必要はありません。

・ネガティブキャンペーンの減少
従来のシステムでは、「対立候補への票を減らす」というネガティブキャンペーンが有効な戦略の1つでした。RCVでは、「他の候補者よりも選択順位を上げてもらう」ことが重要になるため、ネガティブキャンペーンの重要度が低くなります。

・投票者が気持ちよく一票を投じられる
選挙を終わらせるために仕方なしに有力候補に票を投じる必要がなくなるため、自分の好きな候補に一票を投じられるようになります。


◆デメリット
・投票手順が複雑で、ミスが発生しやすい
従来の「候補者1名の名前を書けばいい」システムに比べ、RCVは複雑で、投票者がミスを犯しやすいとされています。実際に、これまでの結果から、RCVでは無効票が3~5倍になったと報告されています。

・民主的ではないという意見がある
「1人1票」という考え方を排除しているという理由から、民主的ではないという指摘が存在します。

・第5選択まで選べない人のほうが多い
今回のニューヨーク市長選予備選に関する出口調査によると、第5選択まで選出した投票者は全体の25%でした。第5選択まで選出が行われなかった場合は過半数を集める候補者が出ない可能性もある他、「きちんと第5候補まで選ばないと、真の民意が反映されない」という批判もあります。

・候補者同士の「協調」があり得る
従来の選挙方式では投票用紙に書くことのできる候補者名は1人に限られたため、候補者同士が協調するという戦略は基本的にあり得ませんでした。しかし、RCVでは2人の候補者が結託して、「私を1位にするなら、この人を2位にしてね」という戦略があり得ます。実際に今回のニューヨーク市長選予備選では、民主党のキャサリン・ガルシア候補とアンドリュー・ヤン候補がこの戦略を採用し、ガルシア候補は「あなたはヤンとガルシアの両方に投票できます」と、ヤン候補は「私を支持する人は、ガルシアも支持するようにお願いします」とアピールしました。

・実際にネガティブキャンペーンが減るかどうかは疑問の余地がある
ネガティブキャンペーンの多くは候補者とは無関係な外部グループによって行われており、RCVではこうしたネガティブキャンペーンを阻止することはできません。

RCVは、これまで用いられてきた「たった1名の候補者のみに投票する」という方式よりもベターだという声を受け、ニューヨークでも新たに採用が決まりました。アメリカではメイン州とアラスカ州の2州が州全体の選挙と大統領選にRCVを採用しており、2020年の大統領選挙にのみRCVを採用したという州も存在します。アメリカ以外では、オーストラリア・ニュージーランド・アイルランド・スコットランド・マルタ共和国などがRCVを採用しています。

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in メモ, Posted by log1k_iy

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