パンデミック中の外出禁止令を守る割合が低い「性格」とは?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに伴って、多くの国々で外出を控えるように要請されたり厳格な外出禁止令が出されたりしました。しかし、外出禁止令を守ることの難しさは人それぞれだったようで、新たな研究で外出禁止令を守る割合が低い人の「性格」が判明しています。
How personality and policy predict pandemic behavior: Understanding sheltering-in-place in 55 countries at the onset of COVID-19.
https://doi.apa.org/fulltext/2020-76208-001.html
Personality Traits Affect Shelter at Home Compliance
https://www.apa.org/news/press/releases/2020/10/personality-traits-compliance
Psychologists Found The Personality Trait That Makes It Hardest to Endure Lockdown
https://www.sciencealert.com/psychologists-identify-the-personality-types-most-likely-to-break-out-in-lockdown
COVID-19の感染拡大を抑えるために導入された都市封鎖などの対策は、多くの人々の生活や経済に影響を及ぼしましたが、実際に都市封鎖が感染拡大を抑えたとの研究結果が報告されています。
5億3000万人もの人々がロックダウンなどにより新型コロナウイルスから守られたとの研究結果 - GIGAZINE
国によって外出制限がアドバイスや推奨事項にとどまっていた場合もあれば、罰則などを伴う厳格な都市封鎖が実施された場合もあります。しかし、外出制限の厳格さにかかわらず、誰もが指示にしたがって家に閉じこもることが容易だったとは限らず、中には外出禁止令を守ることに強いストレスや反発を抱き、アドバイスや規則を破って外出していた人々もいたはずです。
そこで、アメリカやイギリスの心理学者からなる研究チームは、COVID-19のパンデミック中に外出禁止を守る傾向と性格の関係について研究しました。研究チームは、2020年3月20日~4月5日までの間に全175カ国の人々を対象に行われた「Measuring Worldwide COVID-19 Attitudes and Beliefs(世界的なCOVID-19への態度と信念の測定)」プロジェクトの結果から分析を行いました。
今回の分析では、ブラジル・アメリカ・インド・イギリス・ロシア・フランスといった感染者数が多い国々や、日本・韓国・タイ・ノルウェーなどの比較的感染が抑えられている国々まで、200人以上が回答した55カ国のデータが抽出されました。回答者の合計は10万1005人であり、平均年齢は39歳、女性が57%を占めており、平均して16.4年の教育を修めていたとのこと。
回答者は社会人口統計に関する質問やパンデミック中の行動について回答した他、ビッグファイブと呼ばれる5つの心理学的特性(開放性・誠実性・外向性・協調性・神経症的傾向)について測定するアンケートに答えました。
また、各国における都市封鎖の厳格さについては、「学校の閉鎖」「職場の閉鎖」「公共イベントのキャンセル」「公共交通機関の停止」「公共の情報発信キャンペーン」「国際移動の制限」「国内移動の制限」といった項目を基にスコアを割り当てたとのこと。
研究の筆頭著者であるケンブリッジ大学のFriedrich Götz氏は、「当然のことながら、政府の政策がより厳格な地域では、人々は適切な場所にとどまる可能性が高くなりました」と述べています。
しかし、今回の研究で判明したのは政府の政策によって人々の行動が異なるという点だけでなく、「人々の性格からパンデミック中の外出を控えるアドバイスやルールに従う傾向が予測できる」ことも発見されました。
研究チームによると、ビッグファイブのうち開放性・誠実性・協調性・神経症的傾向のスコアが高い人々は、適切な場所にとどまる可能性が高かったとのこと。一方で、外向性が高い人はさまざまな外出禁止措置が講じられている中でも、家にいる可能性が大幅に低かったそうです。
Götz氏はこの結果について、「外向性が高い人は集団的かつ社会的であり、家に閉じ込められたまま他人に会わないことが特に難しいと感じました。彼らは都市封鎖のルールを破る可能性が最も高く、3月から4月にかけて他のどのタイプの人よりも家にいる場合が少なくなりました」と述べています。
また、神経症的傾向や開放性のスコアが低かった人も、政府が厳格な封鎖措置を実施していない場合は外出する割合が高かったそうです。神経症的傾向が強い人はウイルスへの感染は危険だと早期に判断する割合が高く、開放性が高い人は幅広い情報を収集して正確なリスクを認識し、自身を保護する新たな行動様式に適応するのが早かったと考えられています。なお、政府の封鎖措置が厳格になるにつれて、神経症的傾向や開放性のスコアが行動に与える影響は減少していったとのこと。
Götz氏は「私たちの分析は、政府の厳格さと性格の両方が独立して家にとどまった割合の予測因子となったことを明らかにしています」とコメント。また、共著者であるハーバード大学のJon Jachimowicz氏は、「今回の結果は行動の中心的な推進力としての性格の力を再確認するものです」と述べ、政府はパンデミック対策における性格の影響を理解することが重要だと主張しました。
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