メモ

厳格な都市封鎖が人々にもたらした「ポジティブな影響」とは?


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに伴って、国によっては厳格な都市封鎖(ロックダウン)が行われました。特に厳格な都市封鎖を行った国の一つであるニュージーランドで行われた調査により、3分の2ものニュージーランド人が「都市封鎖が行われたことで良い影響があった」と感じていることが判明しました。

Silver linings of the COVID-19 lockdown in New Zealand
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0249678

Silver linings in lockdown , Media releases, University of Otago, New Zealand
https://www.otago.ac.nz/news/news/releases/otago826250.html

New Zealand Survey Reveals The Positive Aspects of The Country's Strict Lockdown
https://www.sciencealert.com/new-zealand-survey-reveals-what-people-actually-liked-about-their-lockdown

ニュージーランドでは2020年3月19日に原則として全ての外国人を入国禁止とする鎖国措置に踏み切り、同25日には国家非常事態宣言を発令して警戒度が最も高い「レベル4」の都市封鎖を実施しました。ほとんどの事業所が休業して学校も休校となり、住民が自宅で待機することを強制される都市封鎖は1カ月にわたって継続され、6月には国内からCOVID-19患者がいなくなったと発表しています。

ニュージーランド、新型ウイルス感染者ゼロに 国内制限を解除 - BBCニュース
https://www.bbc.com/japanese/52960236


その後も継続的に新型コロナウイルス感染者が発生しているものの、ニュージーランドは世界で最も感染対策に成功した国の一つに挙げられています。ニュージーランド・オタゴ大学の心理学者であるマシュー・ジェンキンス氏の研究チームは、都市封鎖中の2020年4月15日から18日に2010人の被験者を対象にオンラインアンケートを実施し、「パンデミックに伴うレベル4の都市封鎖中にポジティブな側面を経験したかどうか」を尋ねました。

アンケートの回答を分析した結果、2010人中1227人(64%)の人々が「都市封鎖によるポジティブな側面を経験した」と回答しました。これはニュージーランド人のうち実に3分の2が都市封鎖による好影響があったと感じていることを示します。なお、被験者全体の半分近くが「個人的にポジティブな影響があった」、3分の1近くが「社会的にポジティブな影響があった」と答えたとのこと。

ジェンキンス氏はこの結果について、「都市封鎖が人々の生活の大きな転換点となり、立ち止まり、人生を評価し、他の人と向き合い、つながる機会を生み出しました。多くの人々が、この時期に優しさと誰かを助ける行為がより一般的になったと報告しました」とコメント。パンデミックの体験が今後の生活にどういった長期的影響を与えるのかは不明ですが、少なくともアンケートを行った都市封鎖中の時点では、ある程度のポジティブな経験をしていることが明らかとなっています。


今回のアンケートには自由記述欄も設けられており、被験者の多くは「都市封鎖前は明確でなかった昔ながらの共同体意識や思いやり」の感覚を取り戻したと回答していたとのこと。この共同体意識の高まりは、パンデミックや都市封鎖に伴って身の回りの人々や世界における自分の立ち位置を強く意識するようになったことが理由とみられています。トルコで行われた研究では、「共同体への帰属意識」がパンデミック時の幸福感に関わっていることが示されていることから、ニュージーランドにおける共同体意識の高まりはパンデミックの対処に役立った可能性があるそうです。

また、「在宅勤務の柔軟性が向上して通勤時間が短縮されたこと」は頻繁に都市封鎖の好影響として言及されていたとのこと。これにより、人々は家族とより多くの時間を過ごすようになったほか、30%強の被験者は「運動や趣味に当てる時間が増えた」と述べており、人生における主体性が増したと報告する被験者が多いこともわかっています。

封鎖中の人々は一般的に「欲しいものより必要なもの」に優先的にお金を費やし、家族や友人との時間をこれまで以上に大事にする傾向がみられました。ジェンキンス氏は、「社会的距離の対策が実施されたため、テクノロジーは人々が社会的につながり、ビデオ会議などのオンラインサービスを通して仕事をするための主要な方法になりました」「ある被験者は『海外に住む父親と毎日話すようになった』と答え、別の被験者は社会的交流を維持するために国際的なオンライン編み物グループに参加しました」と述べています。


さらに、多くの被験者は都市封鎖について「自分たちが地域社会のために貢献している」という意識を持ち、喜んで外出規制を守っていたとのこと。こうした貢献意識は、自分たちが我慢することでコミュニティ内のより弱い存在を可能な限り安全に保つことを助けました。

研究チームは人々が貢献者の意識を持った理由について、ニュージーランド政府のメッセージが重要な役割を果たしたと考えています。「ニュージーランド政府は症例数、回復者数、検査数に関する最新情報を毎日提供しており、この高い透明性は国際的に認められました」と研究チームは記し、国民がパンデミックの現実と自分にできることを把握するのを助けたと主張。


ある回答者は、「レベル4の封鎖は国がウイルスを制御し続けるのに役だったと思います」と回答しており、都市封鎖の理論的根拠を国民が理解していたと研究チームは示唆しています。別の回答者は「ニュージーランドは小さな国かもしれないが、私たちは素晴らしい仕事をしている」と回答するなど、都市封鎖がニュージーランド人に団結と誇りを感じさせているとのこと。

「私たちの調査結果は、混乱・不安・心理的苦痛を感じる時代にもかかわらず、多くの人々がポジティブな側面を見つけたことを示しています」「都市封鎖の影響にもかかわらず、多くの人々が社会的つながりと自律性に対する心理的ニーズを満たしており、これが都市封鎖の順守に影響を与えた可能性が高いと推測しています」と、研究チームは述べました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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