メモ

「論点先取」という言葉の誤用と戦うあるデザイナーの取り組み


論点先取」とは、「証明すべきはずの命題が仮定や前提に含まれてしまっている」という状態を指す論理における誤りの一種です。あまり日常会話に出てくるフレーズではないですが、一部の地域では誤用が目立つことが問題視されており、1人のグラフィックデザイナーがさまざまな方法で誤用と戦っています。

Beg The Question // Get it right.
http://begthequestion.info/

論点先取の簡単な例を示すと、例えば「日本の猫はかわいい」と証明したいときに、以下のような文章が論点先取に当てはまります。

1:かわいくない猫は存在しないと仮定する。
2:猫は日本に生息している。
3:したがって、日本の猫はかわいい。

1の仮定に、「猫はかわいい」ということが含まれてしまっているので、「かわいくない猫は存在しないからこそ、日本の猫はかわいい」という、説得力のない証明になってしまうというのが論点先取です。このような論点先取をしやすい人ほど、議論において論理的思考ができていないとも指摘されています。

議論で「負け」が運命付けられている思考方法30パターン - GIGAZINE


論点先取という言葉そのものは日本では多用される言葉ではないものの、英語圏の一部地域では誤用が多いことが問題視されています。論点先取は英語で「Beg the question(BTQ)」となり、本来の「論点先取」という意味ではなく「疑問を投げかける」という意味で誤用されがちであるとのこと。これは「はぐらかす」という意味を持つ「beg」と、「生じさせる」という意味を持つ「beget」が混同された結果であるとされています。

この誤用を正すために、BTQ誤用撲滅ウェブサイトを運営しているのがグラフィックデザイナーのパウロ・オルドベザ氏。もともとは2005年のエイプリルフールの一環としてウェブサイトを立ち上げたそうで、以下がエイプリルフール時のBTQ誤用撲滅ページです。BTQの誤用に関するデモや、BTQ誤用に罰金が科せられるといったウソの内容がまとめられています

//begthequestion.info// END "BEG THE QUESTION" ABUSE NOW!
http://begthequestion.info/old/


エイプリルフール後もオルドベザ氏は、10年以上ウェブサイトの運営を続けて誤用の撲滅を訴えており、BTQ誤用撲滅カードを配布したり、BTQ誤用撲滅Tシャツを制作するなどさまざまな方面からBTQが正しく使用されるよう取り組んでいます。


「悲しいことにBTQの誤用は、ジャーナリスト、広告、主要なマスメディアでも多発しており、時間の経過と共にますます誤用が一般的になっています。自由放任主義の言語学者たちはBTQへの誤解を許容し満足していますが、BTQの意味が希釈され、伝統的な用法と誤った用法を常に区別しなければならなくなった場合、論理と哲学が重要な概念的レッテルを失うことになることになります。これが私の戦う理由です」とオルドベザ氏は語っています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
日本人が間違った覚え方をする「得意ではない」言葉について - GIGAZINE

「米英かぶれ許すまじ」英語からの借用語をフランス人の日常会話から撲滅すべくフランス政府が本気を見せる - GIGAZINE

修飾語の位置を気にしたらダンデライオン・パンナコッタ・オーデコロンなどの言葉の意味にハッとする - GIGAZINE

書き間違えやすいイギリス英語の単語ランキングトップ15 - GIGAZINE

世界から失われそうな言語がわかる地図 - GIGAZINE

in メモ, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.