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「米英かぶれ許すまじ」英語からの借用語をフランス人の日常会話から撲滅すべくフランス政府が本気を見せる


ヨーロッパでも英語が通じない国として知られる誇り高き国フランスですが、新しい技術や文化とともに日夜襲来する新しい英単語の侵攻にはなかなか対抗しきれないようで、「エアバッグ」や「ハッカー」「チャット」などといった英単語は、日本でも外来語として使われているのと同じように、フランス人の日常会話の中で「les air bags」などとフランス語に溶け込んで借用語として使われています。

そこで、近年新たにフランスに侵入した英語からの借用語をフランス語っぽい響きの単語で置き換えようと、フランス政府がフランス語圏の児童や学生に募集した候補の中から新たにフランスの辞書に載せるべくして選ばれた「新単語」が発表されました。なんだか戦時下の日本の敵性語排斥を思わせますが、かなり本気の取り組みのようです。

詳細は以下から。France tries to halt march of English - Europe, World - The Independent

French government picks new words to replace English - Telegraph

児童や学生から「言い換え候補」が募集されたのは21世紀に登場したインターネット世代に広く使われる5つの借用語で、2月に募集が開始され、アカデミー・フランセーズ会員や政治家、ラッパー(フランス語では「rapper」でなく「rappeur」)のMCソラーなどを含む審査委員会によって先日最終候補が選考され、発表されました。これらの最終候補は、新語を造りその普及を促進することを目的とした政府の「術語学・新造語委員会」によって審議される予定で、正式に承認されればJournal Officiel(フランス政府公報)で新語として発表され、辞書に載るようになるほか、公務員はそれらの新語の使用を義務付けられるとのことです。

今回「言い換え候補」が募集されたのは「Tuning」(チューニング:車の改造についての用法)、「Chat」(会話するという意味ではなくインターネットでのチャットとしての用法)、「Newsletter」(ニュースレター:日本で言うリリースやメールマガジン)、「Buzz」(うわさ、騒ぎという意でインターネット上の大流行、社会現象を指す際の用法)、「Talk」(これもChatと同様「話す」という意味の動詞としてではなく、トークショーなどの「トーク」という名詞として)の5つの借用語。

これらの借用語に対し、「Tuning」の言い換え候補にはリヨン在住のジャーナリズム専攻の学生Charles Fontaineさんが提案した「Bolidage」(「火球」という意味で、高出力な車を指すスラングとしても使われる単語「Bolide」から)、「Chat」には「Éblabla」と「Tchatche」、「Newsletter」には「Niouzlettre」「Inforiel」「Journiel」などの有力候補を抑えて「Infolettre」が、「Talk」には「Cacoforum」や「Debatel」といった候補を抑え、新語ではないがふさわしい単語として「Débat」が、「Buzz」にはエクス・マルセイユ大学のElodie Dufour-Merleさんが提案した「Ramdam」(ラマダーンで日没とともに断食が明ける際の騒ぎを表すアラビア語)が選ばれました。英語でさえなければ外国語由来でもOKのようです。

フランス政府はこれまでにもさまざまな英語からの借用語をフランス語っぽい響きの新語に置き換えてきたのですが、今回のように新語候補をコンテストで公募するのは初めての取り組みとのこと。なお、最終候補に選ばれた新語の提案者の学生らには、フランスの文化使節団の一員として海外で活動する機会が与えられるそうです。


フランス外務省のアラン・ジョワイヤンデ対外協力・フランコフォニー担当大臣は「10年前にはみんながみんな『ウォークマン』や『ソフトウェア』について話していましたが、今では『ウォークマン』は『Baladeur』、『ソフトウェア』は『Logiciel』というフランス語が広く使われるようになっています」と語っています。

ほかにも「Globalisation」(グローバリゼーション)に代わる「Voyagiste」や「Bug」(昆虫ではなくコンピュータなどのバグ)に代わる「Bogue」、「Venture capital」(ベンチャー・キャピタル)に代わる「Capital risque」などでは借用語の置き換えに成功したそうですが、「Air bags」(エアバッグ)に代わる「Sacs gonflables」、「Hacker」(ハッカー)に代わる「Fouineur」、「Smiley」(顔文字)に代わる「Frimousse」、「Start-up」(スタートアップ:パソコンなどの起動)に代わる「Jeune pousse」、「Post-it」(ポストイット:付せん紙)に代わる「Papillon」、「Sitcoms」(シットコム)に代わる「comédies de situations pour la télévision」などは定着しなかったようです。

ちなみに日本でも「外来語」言い換え提案という言い換え語のリストが発表されていますが、「ナノテクノロジー」の代わりに「超微細技術」や「オンデマンド」の代わりに「注文対応」など、あまり定着していない気がします。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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